高円寺 「小杉湯」もクリスマス仕様

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高円寺の庚申通り商店街から脇道に入ったところにある、「小杉湯」。人通りからは見えない隠れた名店。商店街に面していたら商店街の街並というか景観に深みが一層与えられるのだが、そうでないからこそ生き残ってきたのかもしれない。

 

高円寺の顔とも言える木造破風を持つ豪壮な正統派遊郭建築銭湯。脱衣所もこれまたシンプルにして見事な折り上げ格子天井。白壁に焦茶の艶光する梁や柱のコントラストのある色の組み合わせは室内がシンプルであればあるほど美しく見える。

 

湯船の上のペンキ絵は2016年10月20日に描かれたばかり。西伊豆から見た富士山という王道中の王道の画題。

 

サウナも露天風呂もない。しかし立派な建物、手入れの行き届いた浴槽や洗い場、ミルク風呂や日替わり薬湯、こざっぱりとした脱衣室、湯上り処、珈琲牛乳や瓶飲料各種。気さくな番台のお婆さん。銭湯にあって欲しい最低限をしっかりと提供してくれる。

 

 

12月23日の16時は祝日ということもあって大混雑。商店街の半ばという立地の良さもあってか、各湯船には4、5人が犇めく客入りで、子供はうちの子供だけだった。杉並区の銭湯では子供をあまり見かけなくてそれが少し寂しい。子供のいない大人からしたら子供は鬱陶しいだけの存在かもしれないが、爺さんも子供も、刺青を背負った兄さんも、みんなが裸一丁で風呂に入っている空間が生活感があって良いと思うのだが。

 

湯上りの休憩所には壁に絵が飾られてギャラリーとなっており、漫画が大量にある。10シリーズぐらいはあるのではないか。漫画喫茶に行かずともこの銭湯に通いながら多くの漫画を読破してしまえる。大学生だったら通ってしまっただろうな。飲み会を断って一風呂浴びた後に漫画に没頭するような学生になっていたかと思う。

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ちはやふる」を再度読破してみようか。小杉湯が描かれているという「フロガール」という漫画も気になる。

 

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クリスマスなもんで、カラフルな鐘が吊るされていた。除夜の鐘もあとわずか。

作陶納め。大量の素焼き窯出し。テーマは「予想外の流れに委ねる」

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年末最後となる陶芸。大量に作り貯めていた作品の素焼きが終わった。あなたの作品は怖くて触り難いのでご自身で窯出ししてもらえますか、と言われている。申し訳ない。まだ、窯の中は熱く素焼きも火傷しないがかなり温かい。

 

取り敢えずは素焼きで爆裂や崩壊することもなかったので一安心。本焼きに次いで素焼きの窯出しは不安と期待の入り混じる瞬間だ。

 

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下の層も全て無事。いや、素焼きでダメになるなんて論外であり、当然の話なのだけれども。

 

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計量したら全部で5kgもあった。素焼きはグラムあたり0.8円なので4000円。懐が痛い。板状の大きなやつと、筺を重ねたやつがそれぞれ単体で1kgある。軽量化すれば即、強度劣化に繋がるので仕方がない。本焼成でも6000円は想定しないといけない。1万円か。きついな。柱状多肉を5本、エケベリアを7種は植え込めるので、鉢を5つ、7つ造るよりは安上がりなはずだとズレた自己正当化をしてみる。こんな趣味趣向品に採算効率性を考えても仕方がないのに。

 

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筒を複合させたディスプレーも底板が踊ることなく焼き上がった。

 

 

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筺重ね鉢もこの通り。素焼きで躯体が強度を確保できたので釉薬を掛けても崩れることはないだろう。半時間ぐらいは丁寧にヤスリ掛けして整えたい。釉薬が思い通りの表現にならないで終わるとしても、完成まで辿り着く為の山場は越えた。どのみち、白マットを掛けるだけだから焦らずヤスリ掛けをしたい。

 

明日に本焼きするので、釉掛けしたものは窯に入れられると言われて、皆大焦りで釉薬を掛けるのに大賑わい。

 

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「月白」「白萩」「白マット」「チタンマット」を2本づつに掛け、マンガンを蕾の元にぐるりと塗った。マンガンが下に1cmぐらいは流れてくれれば面白いのだが。各釉薬マンガンの塗り幅による違いを検証できて興味深い。もう少し白釉薬を厚掛けすべきだっただろうか。問題は、どれにどの釉薬を掛けたのか記録を取り忘れたこと。「月白」が青味があり、「白萩」が薄く地肌が透けている。釉薬濃度が低かったかもしれない。「白マット」は「チタンマット」より光沢があるのでわかるだろう。

 

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他の人が使った白マットにそのままドブ漬けしてみたが、ダマがある。よくかき混ぜてないな、これは。普通ならば縁にマンガンを塗って垂らすところだろうが、窪みから下に塗ってみた。なんだか失敗して気がしてきた。窯と焔の対流による自然の造形美作用に期待するしかない。

 

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釉掛けは焦ってするものではないな。終わってみたら、間違った釉薬を掛けていることに気づいた。ストレス解消にやっているのだし、締め切りはないのだし、ダラダラとああしようか、こうしようかと夢想しながら作業してこその趣味の作陶なはずだ。雑な作業をした1日に自省。

 

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折角、裏表を削らずに構わないほどに薄く挽けた鉢にも気づいたら間違ってチタンマットを掛けていた。仕方ない。下半分に溶け流れやすい辰砂を掛け、その上にマンガンを流すか。

 

底の丸い鉢には面相筆でマンガンを間隔を広げながら線を無数に引き、流れ方を楽しもう。

 

もう一つの薄造りの碗も半端にチタンマットを掛けてしまった。斜めに線を削り剥がして高台には「柿渋」を掛けて引締めよう。

 

一連の作陶のテーマは「予想外の流れに委ねる」かね。

 

皆で掃除をした後にラブリコチエのシュークリームや大福の差し入れを先生方から頂き、お茶をした。画家と美術モデルの新生徒2人も加わり、賑やかさの増した教室。先生が22歳にして清朝青磁に感銘を受けて陶芸の道に入ったことや、今の作風は30年に渡ること、食器も作りながら工芸品を作っていること、朝起きてから寝るまで作陶に没頭していることなどお話を聞けたのも貴重な時間。月給1万5千円の見習い時代から、日展に20回以上入選し外務省お買い上げの作品を作るまでの長い陶芸人生。この仕事をしていると「趣味を仕事にできて良いですね」と言われるのは嫌だよね、との愚痴がプロフェッショナルの矜持。来週末の個展では40点ほどを展示されるとのこと。是非行かねば。

 

私達、素人の生徒の造る作品は先入観に捉われないので危なっかしくもあるが、新鮮で面白いとのこと。

 

作陶は、仕事も家庭も子育ても全て恙無いからこそ続けられる。作陶してられるということは満遍なく全方位的に物事がなんとか治まっているサインでもある。来年も作陶できると良いな。仕事も頑張らねば。

新高円寺の天然酵母のパン屋「マダムシュープリーズ」

桃井ハラッパ公園で催された杉並フェスタで、こちらのカンパーニュを食べて以来、一度は来たいと思っていた。もっちりとしつつも酸味の効いた噛み締めて味わう密度の高いパンが美味しかった。

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看板の0ペンって何だろうと一瞬思った。息子が幼稚園で覚えてきたPPAPに毒されているのだろう。大勢の幼児がアポーペーンと連呼する中にいる幼稚園の先生は本当にお疲れ様だ。幼児がみんな「そんなのかんけーねー」って口ごたえしたであろう昔も気の毒だ。

 

 

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長年欧州料理屋のオーナーシェフをされていた方が店を譲り、新高円寺の自宅を改装して2010年に開いたお店だそうで、温室に座席3卓6席のイートインスペースを持つこじんまりとした店だ。

 

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ランチは950円で上記五種のパンの後に13種ほどのオープンサンドの中から3種を選ぶ。飲物とデザート付き。店頭でも売られているクランベリーとチーズのパン、ショコラオランジュ、胡桃と無花果、オリーブとオリーブオイルのパンなど、多彩。

 

食べてる間中もお客さんが買いに来ていて、食事をしている他のお客さんも食後に買おうと思っていたようだが、売り切れないうちに慌てて持ち帰りのパンを買う始末。カンパーニュはすでに売り切れ。店頭に置かれているものは全て予約取置きのものなようだ。

 

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二人分のランチセットを頼んだので系6種頼んだ。チリコンカンが乗ったやつは食事パンとして最適。田舎風パテを乗せたものも美味。客のワガママとしては、ここに追加で熱々のミネストローネやクリームスープを頼めたら幸せなんだがな。

 

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ゴルゴンゾーラピカンテにラムレーズンを乗せたものは私としては頼まずにはいられない一品。いっそのこともっと熟成が進んでジュクジュクと汁っぽくなったゴルゴンゾーラの方がパンに絡んでなお好みかもしれない、

 

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デザートにはシュトーレン。甘くて香ばしくて子供にはうってつけ。ほろ苦さがあるシュトーレンが好き。今年のシュトーレンはもう売り切れだとのこと。

 

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春秋の土曜のランチ、本でも持ち込んでのんびりしに訪れたい隠れ家的ブーランジェリーカフェ。

ラザニア専門店を語るに相応しい高円寺「ラザニ屋」

 

ピンク色の鴨肉、単なるチーズではなくゴルゴンゾーラチーズのソース、ジャガイモではなく薩摩芋。ラザニア好きにはたまらない一捻りもふた捻り加えられた絶品ラザニアのお店。あれを食べたいと思うと、類似の一品をどこで食べられるのか正直、わからない。よくわからない店の入り辛さが解消されたら有難い。
 
今まで気になっていたが、入るのを躊躇っていた高円寺南のエトワール通りの店。何だろう、入りにくかった。兎に角、入り辛かった。
 
店外にガラスケースが置いてあり、そこにテイクアウト用のラザニアが置かれている。これがテイクアウト専門の総菜屋の印象を与え過ぎている。店内で落ち着いてラザニアを食べられるレストランには見えないのだ。

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かといって、ラザニアはテイクアウトする惣菜としては値段が高いし、初めての客にはハードルが高い。
 
外からの店の印象と店内やコンセプトの食い違いがそうさせるのか。道路沿いが一面ガラス張りだが、バルコニーと植栽が妨げているし、ガラスケース台があって中が覗きにくい。どうやら少し早い時間帯もあってか中に客はいないようだ。ドアはガラス張りでは無い。ドアに手をかけて少し開くと、客のいない店内に男性店員が二人いて視線が合った。やたら気まずかった。敷居をまたぐと引き返せなくなるが、このままドアを閉めるのも既に失礼になる。
 
店内に入るとカウンター席が10席ほど。白いタイルが貼られ、全体としては白と赤が貴重の明るくオシャレなイタリアンビストロといった雰囲気。
 
他に客はいないし、まだ開店したばかりで私が食べ終わるまで他に客も入らなそうな雰囲気だったが、厨房の内側の見えてしまう、カウンターの端の端に通された。一人客だからか、男客だからか。あ、この対応はフランスとかイタリアらしいな、と思った。そんなところまで本格的というか。
 
 

ゴルゴンゾーラチーズと鴨ときのことさつまいものラザニア 1180円を頼んだ。

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量は少なめと思ったが、生パスタのラザニア生地に鴨肉やさつまいも、そしてこれでもかと掛かったゴルゴンゾーラソースは濃厚で熱々で質量の塊のようだった。チーズ好きにはたまらない美味。f:id:mangokyoto:20161125220549j:plain

 

足りない人はバゲットを頼むと、それをフォンデュのようにソースに絡めながら食べられて美味しいだろう。

 

何だろう。言語化出来ないのがもどかしい。ラザニアはこんなにも美味しいのに、何故かどうしようもなく店に入りづらい。半ば諦めた気持ちで店内に足を踏み入れ、しかたなく頼んでみたらラザニアがとても美味しかったという話。

 

もったいない。

もったいない。

もったいない。

 

この入りづらさは私だけか。余計なお世話かもな。

 

木曜日定休日

[月~水・金]12:00~15:00(L.O.14:30)/18:00~22:00(L.O.21:00)
[土]12:00~22:00(L.O.21:00)
[日・祝]12:00~19:00(L.O.18:00)

 ※テイクアウトは終日営業
 ※無くなり次第閉店

 

今、気になっているカフェ「桜カフェ フラミンゴ」

 

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高円寺ではなく、杉並区ですらないのだが、中野駅前から哲学堂の方へマンゴーとジョギングして見つけたとても気になるカフェ。ドアには「桜カフェ フラミンゴ」と書かれている。

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これまた、検索してもろくに情報が出てこない。

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ピンク使いにも関わらず、フェミニンになり過ぎず、ベネチアンだとかそういう中世欧州趣味を残した綺麗レトロというか。カウンターに並ぶ酒なんかも見るとやはり、ここはカフェバーなのだよな。

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マリーアントワネット然とした少女趣味に走られると煙たくなるのだが、男を許容する絶妙な範囲でのインテリアコーディネート。

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あれこれ見ると楽しいくらいものが溢れているが、ゴミゴミしないのは物が吟味されているからだと思う。

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カラバッジョ。やはりイタリアン、ベネチアンを意識してらっしゃるのか。

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営業時間も不明。これは何度か突撃訪問して解明していくしかない。ううむ。情報求む。

蕾鉢を素焼きへ、球体鉢を釉掛け

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蕾のような小壷を8つばかり水挽きし削っておいたものに、排水用の中空の茎をつけた。茎はポンスに二枚を分離して薄くしたティッシュを巻きつけ、その上から板状の粘土を巻きつけて成形した。小壷は微妙に全て形状に変化をつけ、茎の太さや長さにも変化をつけている。

 

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板状の台座に突起をつけ、そこに茎を挿して林立させようと思っている。

 

さて、これを白一色や黒一色にしてリトープスの色と形状を純粋に楽しむべきか。それとも釉薬をあれこれと掛けて多彩な表情を楽しむべきか。

 

釉薬を掛けわけるとしたらどうしようか。小壷の縁を下にして焼成しないといけないのは大きな制約だ。あまり色がうるさくなるのも避けたい。「白マット」、「チタンマット」「乳白」「白萩」などの白系釉薬を掛け、蕾の細い膨らみにマンガンを塗って釉薬ごとにマンガンの流れ方を比べてみるサンプルを兼ねてみようか。

 

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筒林立鉢、角口鉢、土屑鉢、薄造り鉢3種、筺重ね鉢を大小2種を素焼きするために窯に入れた。先生があなたの作品は壊してしまいそうなので自分で窯入れして欲しいとのこと。それはそうだ。

 

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さらに素焼き済みで長いこと放置していた球体鉢に「茶そば釉」を筆で塗っていく。「茶そば釉」は結晶を出すには厚掛けしないといけないが、流れやすい釉薬でもある。

 

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穴の周囲にはマンガンを重ねて塗った。「茶そば釉」に乗って複雑に流れながら発色してくれると面白いのだがどうなることやら。

 

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土肌は白土に赤土を重ねているのだが、あえて土肌が垣間見える箇所を作った。そしてちょこちょことマンガンを軽く塗る。さあ、吉と出るか凶と出るか。

 

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釉薬焼成サンプルを見比べると、やはり還元焼成の質感が一番イメージに合う。還元焼成の窯入れは数ヶ月先になりそうだが、ここはより気にいる表情を求めて還元焼成にしよう。

 

 

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二重鉢には「チタンマット」を杓子掛けした。一見、土が入っていないように見えるかもしれない。内側の底にロゼッタ状のエケベリアを植えたい。

 

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掛けムラをそのまま残してみたが、作為的過ぎるだろうか。「チタンマット」は初めて使う釉薬なので赤土2号に対してどう反応するのかわからない。

 

窯からどんな表情で出てくるのかはいつだってワクワクする。あえてテストピースを作らない素人作陶の愉しみ。まあ、現実は甘くなくて5割の確率でイマイチなものが焼きあがって落胆するのだが。

既製品住宅に物語のある特別な内装を。我ら夫婦の為の雌雄山羊図日本画板絵

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京都の仏画師・日本画家の友人が描いてくれた待望の板絵が届いた。

 
高さ230cm、幅360cmという居間の全面押入れ収納に嵌めるシナ板引戸4枚に描かれた大きな絵だ。

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絵の題材は未年の夫婦なので雌雄の山羊。それぞれの生まれ月を象徴した朝顔と桔梗を足元に配している。左手には遠景に霞む岩山、右手には後方に連なる緑の丘を配して奥行きを出している。私が鹿や山羊といった偶蹄類がそもそも好きだということもある。

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板戸の白木地の余白をたくさん残して圧迫感を出さず、爽やかで軽い感がある。空間の大きさに配慮して大きく山羊を描いてくれている。間近で見ると大迫力で睫毛など緻密に描きこまれているのだが、居間全体を見ると適度な存在感。雄山羊の視線はちょうど窓の外を見上げる構図となっている。友人は全てを計算していたのか。

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家を建てると、システムキッチンのオプションを少しつけるだけで、10万円、20万円と増額していく。2箇所のトイレの性能を少しあげるだけでも10万円が飛んでいく。家の値段は簡単に1500~2000万円ほどかかってしまうその値段からしたら20万円なんて微々たるものだ。カタログから選んだ部品を組み合わせただけのプラモデルのような家は味気ないと思った。せっかく何年もローンを組んで建てる家なのだ。家族の物語のある絵があったら家に対する愛着が一気に増すと思った。
 
そこで我が家ではビルドインの食洗機や自動開閉の便座の蓋、浴室乾燥機などの自分達には不要とわかっている機能を悉く削り、代わりに新居が自分達ならではの家となるように内装に回すことにした。

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京都で国宝建築や文化財世界遺産の修復にも携わっている日本画家に、岩絵の具を使って伝統的日本画技法で家の一部に好きなモチーフで絵を描いてもらうことができるなんて思わない人も多いのではないだろうか。しかもシステムキッチンのオプションをつければすぐ増額してしまうような値段で。画家の側からしても伝統的花鳥風月画や仏画の制作や奉納から時には離れて様々なモチーフを描くことは楽しく、かつ副収入は助けになるらしい。そこに大きな需要と供給のずれのもったいなさを感じる。

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日本画や修復の世界で30代や40代が自分の名前だけで食べていくのは難しい。歴史と信用のある工房に属すと給料はさほど高くない。経済的なプレッシャーから筆を折る人も多い。京都にはそういう伝統技能を持ちながら、道を諦める人が多い。絵を描く能力のない自分からしたらなんとももったいない。是非とも手の届く範囲で都会にいながら少しばかり内装に特別な何かを求める人と、伝統技能に生きる様々な表現と少しの副業収入を得たい人と繋げたい。

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 私の好みの緑青や群青を使っていただいた。岩絵の具の利点は陽射しが当たっても変色しないこと。

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琳派などの垂らし込み技法が好きなので、シナの白木地なのに葉を垂らし込みで描いてもらうといった無理も聞いて頂いた。写真は白木サンプルに試し描きしたもの。

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構図やバランスを検討した際の下絵。

 

いやあ、しあわせ。

 

いつかまた、どこかの壁に私の好きな多肉植物とか、家族の好きな何かを描いてもらいたいな。トイレの天井に板絵を嵌め込むとか。妄想が膨らむ。