鮨 みつ川

今回の旅で幾度か感動を覚えたがこれは最たるもの。千取寿司、乙女寿司、著名な寿司屋はどこも閉まっており、なんとか探し当てた店、みつ川。東茶屋街にあるが路地裏にこじんまりとあるだけで探しづらい。清潔、簡素な内装。まだ香りそうな白木の一枚板のカウンター。席数は9つのみ。


ガンド、烏賊、中トロ、穴子、コハダ、甘エビ、カンパチ。写真を撮りたかったが、さすがに多少は空気の読めるようになってきた小生、ここは堪えた。


白眉は炙りたてのノドグロとガリの巻物。ノドグロとは赤ムツのこの地方での呼び名。香ばしさ、旨味、ガリの酸味。


ネタが新鮮でさえあればそれなりに旨い鮨になるときめつけていたが、こうなってくると話は変わる。鮨も手の込んだ料理だと再認識。


大将が旨いと思うその味で出してくれる。予め刷毛で醤油をさらりと塗ってくれる。間違って醤油をシャリにつけて台無しにしないように。穴子はタレではなく岩塩だった。大将が岩塩のほうが合うと思うのだろう。


甘エビを下処理する際、色鮮やかな卵を潔く取り除いていた。しばらくしてから心に引っ掛かり、尋ねた。甘エビの卵は鮨に不向きかと。大将曰く、回転寿司では一緒に出すようだが、自分は卵の味が邪魔するので使わないと。かっこいいな。しかし軍艦にして別に食べさせて欲しかった。大将の中では客を満足させる一連の流れの中に甘エビの卵が入る余地は無いのだろう。