佐川美術館

陶芸の森、MIHO美術館、滋賀近代美術館と佐川美術館。以上4つをまわると、割引がもらえる上に抽選でプレゼントがあたるとか。もらえるプレゼントは最後に訪れた美術館毎に異なるが、佐川美術館は平山郁夫の2011年カレンダー。どうやら絵の部分は剥がして額に入れて飾れるようなものであるらしい。


まわった滋賀の4つの美術館の中では佐川美術館がその収蔵品の内容、展示方法どれをとっても一番好みだ。
佐川急便の40周年を記念して作られたということだが、果たして巨財を成した佐川宅急便の創始者、佐川清が私費で長年収集したコレクションを展示した施設なのか、はたまた美術館開設の名目の元、佐川急便の会社経費を投入して収集した美術館なのか。どちらか、あるいは両方であるか知らぬが、銀行やなんかに死蔵されるよりもこうして収集し一般に公開してくれるのは有り難い。


そしてどうやら佐川清という人は好みの良い人であるらしい。ちなみに好みが良いというのは単に小生と好みが近いというだけの話ではあるけれど。


ここに収集されているのは主に、日本画家「平山郁夫」、彫刻家「佐藤忠良」、陶芸家「楽吉佐衛門」の三者。


東京芸大学長を長らく勤められた平山郁夫氏のシルクロードにまつわる作品群は以前から様々な折りに目にしていたけれども、こうして何十点もの作品を直に目にするのは初めてか。平山郁夫の画風といえば、横山大観に似た輪郭線を暈した幾重にも色を塗り重ねたかのような風景画。書籍やインターネットなどで見る作品は大体これだ。しかしここでは素描の様な水彩画が多く展示されている。置かれた色は輪郭を大きくはみ出し、輪郭を描くペンも勢いの強さが見て取れる。近くで見ると、日本画を描く下絵のように見える簡略された水彩画も離れてみると清としていて魅力的。平山郁夫日本画よりも水彩画のほうが好みかもしれない。抽選のカレンダーがあたってくれんものだろうか。


佐藤忠良という彫刻家は今まで知らなかった。ロダン美術館で個展を開いた唯一の日本人であるらしい。ロダンの作品を観て画家志望から彫刻家志望に進路を変えた佐藤忠良だが、彼の作品の中で非常に印象に残ったのが「群馬の人」という作品。徴兵され、ソ連に抑留された経験を持つ彼だけに日常の市井の人々の中に幸せや感動を見出した。それまで西洋人の顔を造るのが常識だった潮流の中で、美男子とはいえない群馬の男の顔を彫刻にした。彼の作品のいくつかは、彫刻に思えないほど精気を帯びている。残念ながら「群馬の人」も母の彫像もここには収蔵されていないが、上映されるビデオからでもその特異さが見て取れた。


そして楽吉佐衛門。彼がフランスで製作した茶碗が展示されているほかに、彼の作品を実際に使って立礼式でお薄を頂く催しもあった。残念ながら予約制で参加はできなかったけれども。彼の大胆な楽焼の価値はよくわからないけれども、作品の展示の仕方が感心した。直方体に整えられながらも流木のような木肌の一本木の展示台や通路に竹筒に活けてある華、茶碗を効果的に浮かび上がらせる照明など、千家十職のひとつ、第十五代楽家当主のこだわりが随所に見られる。彼ら一流人には凡人には及ばない抜きん出た感覚があるのだと感じる。