オフィスからの眺め。
上海のさらなる発展ほどにムンバイは変わっていないように思える。少しばかり切ない。がんばれムンバイ。
オフィスからの眺め。
上海のさらなる発展ほどにムンバイは変わっていないように思える。少しばかり切ない。がんばれムンバイ。
5年前の中国市場は「西を開拓せよ」だったらしい。東沿岸部の猛烈な成長に翳りが見え、まだまだ発展途上の内陸部がこれからの主戦場であると。さらに飽和しつつある大都市ではなく、地方中都市、小都市を攻略しろ、と。
それは今でも一部では有効な攻め方なのだろうがeコマースというかオンラインショッピングが一変させてしまっているらしい。
2017年現在の20代、30代は大都会にいようが地方の小都市にいようがスマートフォンを持ち、同じコンテンツにアクセスする。PCの画面など見ない。製品ブランドの会社のホームページなど見ない。オンラインショッピングサイトの口コミを参考に一日中、どこでもいつでも親指一本で買い物をする。机で、トイレで、昼飯の食卓で。
高級品だとか大衆消費財という区分も意味をなさなくなりつつあるらしい。消費者はかなりの速さで「ステータスシンボルなものを買う」から「私が本当に欲しいものを買う」にシフトしつつある。その変化速度は欧州や日本の比ではなく速い。
シャオミンのように中国製という愛国心の追い風を受けたブランドも製品の技術刷新が遅れたら途端に勢いを失った。「誤魔化し」が途端にバレ、農村にまで拡散する。
私の中国人同僚も「今時、街で買い物なんてしない。もう何から何までオンラインショッピング。街でお金を払うのはレストランぐらいかな」と言っていた。属性は地方出身のバイリンガル、独身40代女性。中国製で値段の割に質が高いからという理由でごついベンツに乗っている。
13億人のマスマーケットの数%を掠め取ろうという発想より、どんなにニッチなターゲットでも規模が大きいと思って、先鋭化した商品サービスを作っていくべきなのかもしれない。
偉大な中華文明を築き、サイコで病的な超絶技巧の工芸品を生み出してきた人達でもある。細部に執着して何にでも世界一を目指したい人達でもある。ガサツで薄っぺらい中国人観光客が溢れかえる時代は終わり、変質的なまでに拘りを持った目の肥えた観光客がわんさか溢れかえる時代が来たら、それは面白いかもしれない。日本人が見向きもしなくなった日本の伝統工芸美術品や何かを好む人もいるかもしれない。生半可な手工芸品は簡単に真似されてしまうだろうけど。
文化大革命は多くの伝統や文化を断絶させたと言われる。良いところを見出そうとするならば因習や固定観念を断絶させた側面もある。中国の購買行動は5年で断絶的な変化をしていく。殆どの人は祖父母の貧しい時代など興味がないし、親世代の昔がどうだったかなど気にしない。自分がこれからどう豊かになれるか未来志向だ。過去への配慮の無さが変化の速さに繋がってるのかもしれない。経済発展の為に文化大革命を見越していたのは慧眼とも言える。数千年の文化因習すら整理の対象と捉えるのはそれはそれでスケールがでかい。
こと上海に至ってはパクリを超えて日本と同等、あるいはそれ以上の面白いものが出始めている。安いからではなく、日本にない魅力的な商品があるからという理由で中国商品を買い付けるようになるかもしれない。品質が見合えば金を出す目の肥えた消費者も確実に増えている。
目が肥えた裕福な懐古趣味の消費者層を背景に数千年の歴史の中から昔の伝統的な工芸美術品や装飾品のこれまた現代人の感性に合うものがどんどん復刻されていく、そんな潮流が生まれてきたらとても私としては面白い。
今まで考えたことがなかったが、上海なら海外駐在もありかな、なんてのは本当に今までは一度も思ったことのない変化。
そういえば、少数民族を油彩で描く画家の高さんは元気にしているだろうか。次回、連絡を取ってみよう。
水郷巡りをしたかったけれども、飛行機に乗る為に19時までには確実にホテルに戻らなければならないことを考えると遠出はできない。代わりに田子坊という上海のお洒落な街区を3時間ほど散策した。
小径の上には植物が繁り爽やかな草陰をつくる。アートギャラリーやその延長にあるような店も多い。
色とりどりの兵馬俑人形が観光客の往来を見上げる。そういや、彩り豊かな小便小僧人形がベルギーで売られていたっけ。
紅茶ブランドなのだがパッケージがとても可愛らしく高級感もあり世界観作りが上手。うまくやればTWGのポジションに入ってアジア各国に進出できそう。
デザイン性の高い商品が多い印象。
こういう安いバラマキ雑貨も売っているが、それすら商品選びになんとなくな美意識を感じる。
路地裏に突き当たるとまた異なる世界観。
縦横に張り巡らされた小径を突き進むと、時折、突き当たりとなる。そこから先は住居のようだ。
なんだか中国の一角らしい景色。
洒落たカフェだけでなく屋台の食べ物もちらほらある。現地の人が行列を作っているのはやはりこういう店。カフェは金持ちそうなカップルや外国人が多い。
お腹も減ったのでとある路地角の多国籍料理店に入った。外の喧騒と対照的に静かで落ち着いた空間だった。
天井と2面がガラス張りの気持ちの良いテラス席もある。
パイナップルをくり抜き、炒飯が詰まっている。弾力のある蝦、甘さが加わる干し葡萄、カシューナッツ、そしてカレー粉。なかなか複雑に豊かな味で予想外な収穫。インドネシアのチャンプルーに近い。パイナップルは殆ど入っておらず甘過ぎない。絶品。中華料理以外も美味しい。これは家で再現できないものだろうか。
また暫く散策し、TASTEという雑貨屋兼カフェに入ったのだがここも非常に洗練度が高い。
、
チーズケーキは大層甘さが控えめでスフレのようにふわふわとしている。上部はクリームリュブレのようにキャラメリゼされていて少し甘みが強い。日本人が好みそうな日本にありそうなカフェだと感じた。
静かだし、内装に落ち着きがあるし、また次回に来ても良いかもな。二階から空中通路を渡って反対側の建物の中がとりわけ落ち着く。
上海もどこにどんな店があるかを把握したら快適な街なようだ。あれいいな、これいいなと購入衝動に駆られるものも多くある。水の臭さも改善されたように思うし、日本食にも困らない。物価が高いのは難点だがエクスパットなら関係ない。
田子坊は駅からのアクセスも良く、こじんまりとしているが好みな一角だった。
次回上海に来た際に有用な情報として書き留めておく。
毎朝片道50分かけてホテルからオフィスまでタクシーに乗り、1日に9つ会議が入り、それから会食。根暗で無口で引きこもり気質で皮肉な人間が快活で謙虚でヤル気のある前向き人間を演じなきゃならない。きつい。ありのままの自分を見せたら酷い事になることぐらいは人生で学んだ。儀礼として演じなければならない。
少しぐらい自分にご褒美をあげても良いだろう、と自分を甘やかす口実を見つけるのは得意だ。
盲人按摩に行きたかったが、行き方がよくわからなかったので人民広場駅の近くの「伊都按摩」へ。ここはガイドブックやネットにたくさん紹介されている店で、おそらく日本人御用達。市価よりはだいぶ高いのだろう。
自分でローカル向けの店を開拓せずに、外国人観光客向けの店に安易に飛びつくのもひとつの堕落だろう。昔の自分では考えられなかった。
値段は足裏マッサージ1時間、全身マッサージ1時間の合計2時間で310CNY(5,000円)。物価の高い上海といえどもマッサージは安く、質から比較すると日本の半値、三分の一と言える。
足裏マッサージ用の快適なソファと全身マッサージ用のベッドが置かれた個室に案内される。まずは寝間着のような按摩着に着替える。6種類ぐらいから選んだ生姜とレモンの茶を飲みながら按摩師を待つ。清潔で静かで快適至極。
程よい熱さの足桶に脛まで足を浸しながら肩や背中を揉んでもらう。足を拭いた後はようわからんクリームを刷り込みながら本格的に足裏マッサージへと移行。痛すぎず、弱すぎず。
タイ、フィリピン、中国、バリから欧州の高級スパまで幾度となく試してきたマッサージ好きの自分で言うのだから間違いない。伊都按摩の按摩師は上手だ。少なくとも、今日施術してくれた男性は合格点を軽く超えていった。
按摩師は男性に限る。女性だと指が細く点の刺激が強くなりがちだが、男性だと指の腹の面で押してくれる度合いが強く気持ちがよい。どうせ按摩されている間は大抵、目を瞑っているので綺麗な若いお姉さんに按摩されていると脳内補完置換できるぐらいにはなった。世界は実態がどうかよりも己がどう知覚するかなのだ、と偉い坊さまがどこかで言っていた。確かにその通りだろうが、このスキルを極めると相当な聖人かヤバいやつにしかならないだろうから按摩の時ぐらいにしか活用しないことにしている。
全身マッサージも、そこは強く押されると痛い、という点を痛くなる手前の絶妙さでじんわりと押す。相当気持ちが良い。探るように一二箇所押し、ここぞとばかりに押してもらいたい狭いツボをぐっと押してくると、「そこだよ、そこ。あんたわかってるじゃないか!」と心の内で叫びたくなる。通って指名したい。ホストクラブ通いする女性の気持ちはこんなだろうか。
他の店を開拓するのが面倒になった。もう、毎回ここでよい。しんどい上海出張にも来る楽しみができた。次回は会食を仮病でサボって、一人で伊都按摩にくるかもしれない。
JWマリオットからならばタクシーも拾いやすくて便利。VISAクレジットカード払いもできて安心。
住所 | 上海市黄陂北路227号中区広場1階106単元 |
---|---|
電話番号 | 021-6386-3101, |
営業時間 | 10:00-翌1:00 |
休業日 | 年中無休 |
10年前とはあれこれ変わっている。上海タワー周辺の高層ビルやIFCモールなんかが総延長1.3kmの歩道橋で連結されて快適に歩いて移動できるようになっている。
それにしても高い。昼間はギュウギュウに人が詰まってるのか。そういや、珊瑚というやつは微細な珊瑚虫の巨大な群棲体なのだよな。無数の人間が蠢いて、創り上げた人間による珊瑚骨格のようなものなのかもしれない。
50階建なんて平均以下かもしれない。そしてそんな高層ビルの壁面を全面ネオン化してしまうのだから、60年代に子供向けの空想科学絵本に描かれたような近未来風景。
新宿の高層ビル群と違って色彩豊かなのが特徴か。光害への文句が少ないのか、文句を言われても無頓着なのか。中華人は強い色彩を求める。そして行き着いたのは赤、紅、緋、赫。
高層ビルが場所によっては壁のよう。
折角なので88階まで上がってみる。ここからさらに見上げる建物があるというのだから驚嘆。背比べの柱の傷のように年を経るごとにより高いビルが建っていく。624mの上海タワーを超える次のタワーはいつ建つだろうか。
上海の夜景を眺め、陶芸の着想は。。。何も得られない。
ホテルの受付が54階にあり、チェックインを済ませると割り当てられたのは77階の部屋だった。
17年前に建てられた88階建ての摩天楼。既にこれよりも高いビルが隣に二棟も建ち、超高層ビル群の賑わいの一つに埋もれてしまった。東京で言うと、池袋のサンシャインはかつて東洋で一番高かったのだよ、と当時の興奮を知る人が熱く語っても、今しか知らない人は醒めた目で古ぼけた少しばかり高い建物を一瞥するだけなのだろう。
何が言いたいかというと、十数年前にこの建物を訪れた時には度肝を抜かれ、さらに高いビルを隣に建てる計画があると聞いて呆れたこと。
上海は水が臭い記憶が強いが、今回蛇口をひねったところ、昔よりも水質は改善されているように感じた。
夜景を眺めながら風呂に入れるようだが、湯を張るとやはり少し黄色いのだろうか。
カーテンを全開にして寝たところ、朝起きるとビル群が広がっていた。
朝靄などではなく、中国基準で言うところの快晴。仕方がない。
朝食は54階のロビー階にて。ちょうど似た高さに電波塔の珠が見える。あまりに突出して高いところから見下ろすより周囲の建物より少しばかり高い方が眺めは愉しい。
大陸的スケールだな。中華人は壮大さを目指していく本能的な思考があるのかもしれない。
以前マンションの39階に住んで懲りた。土を少量しか置けず、植物には不向きだった。小さな一戸建ての家の猫の額ばかりの花壇でちんまりと植物を育てるほうが好きな自分には異なる価値観なので、たまにはこういうのを味わうのも愉しい。