ホテルの受付が54階にあり、チェックインを済ませると割り当てられたのは77階の部屋だった。
17年前に建てられた88階建ての摩天楼。既にこれよりも高いビルが隣に二棟も建ち、超高層ビル群の賑わいの一つに埋もれてしまった。東京で言うと、池袋のサンシャインはかつて東洋で一番高かったのだよ、と当時の興奮を知る人が熱く語っても、今しか知らない人は醒めた目で古ぼけた少しばかり高い建物を一瞥するだけなのだろう。
何が言いたいかというと、十数年前にこの建物を訪れた時には度肝を抜かれ、さらに高いビルを隣に建てる計画があると聞いて呆れたこと。
上海は水が臭い記憶が強いが、今回蛇口をひねったところ、昔よりも水質は改善されているように感じた。
夜景を眺めながら風呂に入れるようだが、湯を張るとやはり少し黄色いのだろうか。
カーテンを全開にして寝たところ、朝起きるとビル群が広がっていた。
朝靄などではなく、中国基準で言うところの快晴。仕方がない。
朝食は54階のロビー階にて。ちょうど似た高さに電波塔の珠が見える。あまりに突出して高いところから見下ろすより周囲の建物より少しばかり高い方が眺めは愉しい。
大陸的スケールだな。中華人は壮大さを目指していく本能的な思考があるのかもしれない。
以前マンションの39階に住んで懲りた。土を少量しか置けず、植物には不向きだった。小さな一戸建ての家の猫の額ばかりの花壇でちんまりと植物を育てるほうが好きな自分には異なる価値観なので、たまにはこういうのを味わうのも愉しい。