豆鹿頭骨鉢 制作記録

豆鹿頭骨鉢制作記録まとめ。

鋳込み型は石膏製。

泥漿は信楽白土1kgを溶いた分量が最低限必要。



初めての鋳込み

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 原型を作る。突起があると型が抜けなくなるので三次元的に複雑な凹凸は作れない。

原型にカリ石鹸を表面から染み込んで水を弾くようになるまで何度も筆で塗り、水で流し

また塗り込む。3回繰り返した。黒土で原型を作っているとカリ石鹸の効果が視認しやすい。

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 型は左右の二分割が最も楽だが、形状は制限される。少し複雑になるが四分割の石膏型にした。

パーツごとに粘土に原型を埋め込み、石膏型を作る部位ごとに露出させる。粘土の壁は可能な限り滑らかにする。

原型と粘土の境目に隙間があるとバリとなるので可能な限り面に対して垂直に粘土壁を作る。

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ダンボールに撥水性のガムテープを貼って壁にしても良い。ビニールテープなどできつめに周囲を縛った後、さらに板を差し込んで締めると良い。隙間があると石膏が流出してしまうので注意。

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 石膏の型が合わさる片側には位置合わせの窪みを作る。

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 そこに石膏を流し込むと凸型、凹型で組み合わさる石膏型の組みができる。

石膏は洗面器の9割ほどの水位まで水を張り、吉野石膏が水面のすぐ下までヒタヒタになるぐらいに石膏の粉を投下していく。余計な上水を切った後、手際よく棒などで100回ほど撹拌する。

撹拌後、型に石膏液を流し込む。

石膏は発熱し完全に冷めるまで待つ。

複数回に分けて石膏型を作る際には必ずビニール袋に入れてムロで保管し、原型が乾燥しないようにする。

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石膏型はよく乾燥させてから使う。

泥漿は白土を細かく砕き水に浸しておいたものを手で潰し、メッシュ60の「ふるい」を通す。柄杓で掬ってこぼす際にボトボトと途切れず滑らかに流れ落ちる粘性まで水ガラスを加えて調整する。

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 冬ならば泥漿を流し込んで15分ほどで石膏からこぼして抜き出す。さらに40分ほど乾燥させて型を外す。泥漿を鋳込んでから流し出す時間が短いほど粘土厚は薄くなり乾きやすくなる。あとは強度との兼ね合い。

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 型から抜き出したら眼科や角、鼻先などをくり抜き、細部を整える。

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鼻先は二つに割れている方が良い。

縁も薄くする方が全体が薄く作られている軽い印象となる。

骨同士の接合部は剣先で線を彫り込んで表現する。

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素焼きしたらあとは好みの釉薬をかける。

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骨らしさを強く出している白版。チタンマットだと艶がある。白マットか白鳳釉にして鬼板の縁取をもう少し滲ませたい。

 

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金ラスター釉。室内の暖色灯の下では鉄のような色合い、太陽光の下ではブロンズ色に鈍く光る。

 

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植物屋で見つけた予想外の素材が見事に嵌ってくれた。角が枝分かれしていない、レイヨウのような直線角の鹿となった。

 

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細部も気に入った。しかも乾燥しているのでとても軽い。

 

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葉モノはどうか。

 

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枝分かれの度合いは一番強い。

 

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風変わりな実モノも差してみた。いろいろとドライプランツを飾る器として使えるかもしれない。

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せっかく、石膏型で同寸法で作れるので三つほど壁に掛けて並べてあげるのが楽しい。二つだと動きに乏しいし、四つだと多すぎる。三つ並べるのがバランスが良い。

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鮮やかなトルコ青や緑、ピンクなどのカラーバリエーションも作ってみたい。呉須や弁柄で模様を描いた作品も作りたい。

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願わくばこのシリーズの作品を売って作陶材料費や焼成費を賄えるようになりたいのだがな。

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脱皮蝉鉢 制作記録

制作過程まとめ。備忘録と改善点。

  • 赤土2号使用。焼成後重量1.5kg。
  • 光沢のある名ばかりの白マットではなく、光沢のない本当にマットな白釉薬を使いたい。
  • 翅脈の縁を翅に滑らかに均すべきだった。
  • 羽化した上体の翅脈にもトルコ青結晶をかけてもよかった。
  • 3つの単眼を紅くしてはどうか。

 

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もっと腰が高く、「く」の字に曲がっているほうが蝉の幼虫らしさが出るかもしれない。しかし上体を乗せるとなると頑強さと重量が必要となる。

 

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背中と翅の造形に満足できない。翅脈の作り方は削るのではなく、盛るべきなのだろうな。

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脱皮した上体をデフォルメして胴をツルツルに滑らかにしたのは自分では良かったと思う。ここも作りこんでしまうと、煩くなったと思う。

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ぬるりと脱皮して出てきた様子にしたい。

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 合体。下部が潰れることなく、上体がうまく嵌まり込んでくれた。

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写真の歪みもあるとはいえ、上体の方が大きく見えてしまう。寸法をシビアに合わせないと、脱皮したように見えなくなってしまう。

 

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 白化粧土を塗った。下地を白くすることで上から掛ける白マット釉の白さを際立たせる意図。この通りに焼きあがるならば、黒土が透けたこの状態も悪くないのだがな。

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 素焼き完了。同じ土で作っているものの、上体は白化粧によって白くなっている。この素焼きの色合いでも悪くはないが、素焼きはやはり脆いので釉掛けして焼きたい。

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上体は白マット釉、抜け殻は渋柿釉。

 

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さらに顔の上部にはトルコ青結晶釉を筆で厚く塗る。

 

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こちらが無事に1230度で酸化焼成した完成品。結合部にヒビが入ることもなく、釉薬もしっかりと乗ってくれた。

 

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顔の部分にも結晶がうまく析出してうまく有機的な雰囲気になってくれた。

 

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横から見た上下。

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これを作陶展で飾るために、樹木の花を乾燥させたものを差し込んだ。冬虫夏草のように見えてくれているだろうか。

 

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背中から。やはり背中には節の段々をつけずにシンプルに簡素化して正解だったように思う。くどくなりすぎたと思う。

 

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頭から二つに割れた蝉の抜け殻。

 

総じて完全な一点モノの植木鉢だが、それなりに満足度は高い。

 

ドライの植物を投げ入れて室内に飾るのも悪くはないが、自宅に持ち帰ったら土を入れてきちんと仙人掌を植え込みたい。マミラリア科の 姫春星あたりを背中から群生させてみたい。

 

 

陶芸窯出し。豆鹿頭骨鉢、犬鉢、蝉の脱け殻鉢、団子虫鉢

一ヶ月ほど顔を出さないうちに窯出しが終わっていた。

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左から飴釉、チタンマット釉、金ラスター釉を掛けて焼いた豆鹿頭骨鉢。

飴釉は完全なる失敗。薄くかかりすぎていて透明になっていないし、そもそもムラがありすぎる。金ラスターでも塗って再生を試みるしかない。陶器をレンジで温めゼラチンをお湯で溶いたものを塗布してから釉薬を重ね掛けする。下地が飴釉なので鉄系釉薬が良いかと思われる。


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チタンマット釉は鬼板の縁取がもっと滲んで欲しかったが、まあ及第点。次回は白マット、あるいは白化粧だけでカサカサと乾いた感じに仕上げてみたい。鬼板で縁取りをすること自体は悪くない。もっと厚く塗って鉄を出せたら良いのだが、それには還元焼成すべきだろうか。

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金ラスターが予想していた以上に良い出来栄え。結晶を析出させるために厚掛けしていることもあり、細かい凹凸や割目のディテールが失われてしまうが、このメタリックな色合いは満足。

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直射日光に当てるとこのようにブロンズ色に見える。しかもテカテカの安っぽい金属メッキではなくムラが重厚に見えてくれている。工房の作陶展に出す際には土が入っていると重くて厄介なので、乾燥された植物や枝を差して壁から吊るそうかと思う。


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犬様。敢えて顔を醜く牙を剥き出した表情で作ってみたもの。よって温厚なマンゴー殿ではない。

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目と牙にだけ釉薬を掛けている。白化粧を塗った尻尾は刷毛目にして毛並みを表現すればよかった。次回への改善点。

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さて、何を尻尾の中に植え込もうか。


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赤べこ風な干支の猪も焼き上がった。糸で首を吊ったのだが、あまり首が揺れない。残念。顔や鼻先が重すぎた。テカリが強いと、安っぽくなる。まあ、これは子供達に壊されても良いと思って作ったモノなので構わないけれども。


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そして重量級の作品。これだけで1kg近くの重さがある。焼成費が痛い。

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目の周りに上手くトルコ青結晶が析出してくれた。無機的な釉薬ながらも有機的な表現ができたと思う。

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焼き上がりもヒビも見つからず、まず、成功と言って良いかもしれない。

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ここにマミラリア をわんさかと植え込みたい。

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横から。黒く重量感のある幼虫の土台と脱皮途中の成虫を白で対比させてみた。黒い油蝉も脱皮の瞬間は純白にエメラルド色の翅脈をしているので色彩的には現物を尊重していることになる。


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そして団子虫がもう一つ加わった。

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こいつには青鎖竜やその類がやはり合うのだろうか。


今年は豆鹿頭骨鉢の石膏型作りに時間を取られたので焼き上がった作品数が少ない。上面が瓦礫状の円盤鉢、瓦礫鉢、息子の処女作である手捻り鉢、他に何があったっけ。

4月の緑道の花々

4月に入ると一気に春めいてくる。三寒四温、Tシャツでも気持ちよくなったかと思ったらダウンジャケットが必要な日に戻ったり。それでも確実に植物達は花咲き、実り、季節は進んでいく。

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少し唐子咲のようにも見える獅子咲の椿。

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こちらは薔薇のような淡い桃色の八重咲き椿。この系統の椿は最盛期の美しさが際立つが故に、咲き終わりに枝に付いたまま茶色く枯れていく様がとりわけ印象強く、少しばかり苦手だ。


ポトリと花の塊ごと株元に落ちていく藪椿のほうが咲き終わりにも興がある。


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我が家の椿「玉の浦」。鮮やかな紅に白縁とふんわりと広がる花弁が華やかでありつつも凛として好み。縁の白も巾が広すぎず、バランスが良い個体。緑の苔の絨毯の上に、玉の浦の花が点々と落ちている様が理想の情景。


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ボケも名前の印象に反してなんとも甘いピンク色。


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虫の赤外線認識の複眼だといかにも吸い込まれそうに誘導されそうな花。名前は知らない。


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紀元前のペルシャ遺跡の埋葬墳墓からも見つかるという、実はこう見えて原種であるムスカリ。園芸品種のような装飾性だ。


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撫子だろうか。


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一面に咲くハナニラ。白よりも青が好みだ。三角を組み合わせた六芒の花は幾何学的。


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白と青のハナニラに山吹の競演。


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著莪。シャガ。単体で近くで見ると妖しい魅力の日蔭の花。


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対してこちらは陽の花、松葉菊。この松葉菊、雄蕊が星型をしていることに息子が気づいて教えてくれた。ポップ。


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フォーカリアのような花弁の縁がギザギザなチューリップ。存在感があって群生よりも単輪で観るのが良い。


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日々草。花の中央が五稜に凹んでいるのがツボ。


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焔のような木蓮木蓮というやつは花弁の落ち方が少しばかり無惨に思えてしまう。


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ローズマリーに花が咲いていた。ここの株は数年に一度しか花をつけていないように思う。近くで見ると少し豆科の花に似た複雑立体的な上下のある構造をしている。濃い緑の葉に紫が映える。


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水路にも枝垂れ桜が満開だった。

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日本のどこに咲いていようとも桜は桜で美しいのだけれども、背景や構成として桜を美しく引き立たせる演出に関しては京都の桜は格段に素晴らしかった。東京の桜は群生を見所としてしまっていて、「この借景で見るこの桜木」、といったスポットが少ないように思う。

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おまけに桜耳のご近所の黒猫。



ムーミンバレー パーク

フィンランドの作家、トーベ・ヤンソンが産み出した「ムーミン」をテーマにした施設へ。同じく飯能の数km先にある「トーベヤンソンあけぼのこどものもり公園」とは全く別の3月16日にオープンしたばかりの商業施設だ。


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ムーミン屋敷の中に入ることのできるツアーは1人1000円など、入場料に加えて追加料金が必要なアトラクションが4、5つある。なかなか強気な価格設定だ。

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宮沢湖の端を往復するようにジップラインで湖を越えることができる。往復1500円の別料金。ムーミンとは関係ないが、午前中のうちに整理券が売り切れてしまう1番の認可施設の模様。

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無料で見られるショーは暴力性からは無縁のほのぼのとして起伏がなだらかな話筋だった。セグウェイの使い方が斬新。

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ムーミン一家はサザエさんばりに目鼻は皆一緒なのだな。

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ハティフナット。そういえば、高円寺にも同名の童話メルヘンカフェがある。ニョロニョロという日本の通称よりもハティフナットという固有名詞が好きだ。テレパシーで会話をし、帯電して旅をする不思議な生き物。


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案外充実していたのがアスレチック。

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樹上の吊り橋を渡ってツリーハウスへ。さらに滑り台で降りる。

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4階建ての木の城はボルダリングで登ったり、急勾配なチューブ滑り台で降りたり、難易度が高めな箇所も多々あり子供達の嬌声に溢れていた。

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造形も可愛らしく、色彩豊かで夢がある。

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細部までこだわったデザインの北欧おとぎの国。

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ペダルで漕ぐ回転木馬はペダルの位置が低い割に径が小さく、脚が届く大きな子には漕ぎにくく、漕ぎやすい小さな子には脚が届かない困ったシロモノだった。結果、係のお姉さんが延々と引き馬のように引いて回していた。

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2フロア吹き抜けのホールに迫力のあるジオラマ

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とても作り込まれていて、あ、これはあのエピソードの情景か、あそこにミイがいる、としばらく眺めていられる。

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ほんの一部ではあるけれども、作者トーベ・ヤンソンの生い立ちを紹介しているコーナーもあり、内容が深かった。芸術家両親の元に生まれ、幼稚園ほどの年齢から描き始めていたトーベ。画家として評価もされつつあったが第二次世界大戦へと向かう世の中の潮流に彼女も無縁とはいかなかった。反ナチス、反ソ連反戦を謳う雑誌ガルムで風刺絵を実名で描き続けてきたキャリアなど、ムーミンの登場人物や初期の作品に影が濃い理由も知ることができる。


ムーミンの世界観は単にほのぼの、かわいらしいというものではないはずだが、ムーミンバレーパークにはその「翳り」の魅力は感じられない。

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ミイは34人兄弟姉妹の20番目の子だそうだ。

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4月中旬には樹上のネットのアスレチック「ファンモック」もオープンする。彫刻の森の堀内紀子さんのネットの森が思い浮かんだけれども、これはフランスのグロワ島発祥でフランスから職人を招いて設計施工したものらしい。


それこそ、「おまえんち、おーばけやーしきー」「こらーカンター」とばかりにジブリ映画の台詞を覚えるぐらいにムーミン作品を愛している人にこそ楽しめる施設なのだと思う。ムーミン作品に馴染みがない人にはアスレチックパークとしては写真映えはするが規模は物足りないし、テーマパークとしてはアトラクションは少なめ。


ファンモックもオープンし、カヌー遊びと組み合わせたり、SL乗車体験やホタル鑑賞、キャンプなどと組み合わせて魅力が増す施設かもしれない。ムーミンバレーパークだけを目的として小旅行を完結させるには少し弱いか。



清雲寺の桜、秩父SLからの国民休暇村

 

今まで足を伸ばさずにいた方角へ家族旅行。南伊豆の国民休暇村村が幼児連れには最高だったのでアウトドアリビングという新設客室のある奥武蔵の国民休暇村に行こうという話になった。

 

なかなか効率よくいろんな要素を散りばめられた旅程となった。

  • 清雲寺の銘木枝垂れ桜。他にも羊山公園の芝桜や一面の曼珠沙華など花の名所が近くにはちらほら。
  • 秩父鉄道のSL乗車体験。鉄道博物館や交通公園に展示されたSLしか見ていないので子供達は大興奮。
  • 止まった状態で蒸気機関車との記念撮影が白眉。背景も考えると帰路の三峰口始発に乗るのがオススメ。
  • 速度は遅く、客車内はさほど目新しくないので三峰口から秩父までの30分で十分。
  • 武蔵国民休暇村へ。国費や年金事業福祉団の融資で整備されているので利用せにゃ損。ハンモック付きの部屋がある。
  • 値段の割に質の高いビュッフェ。子供はデザート三昧に興奮。
  • 朝の散策や夜の望遠鏡での星空観察などあれこれ楽しめる。
  • 翌日はムーミンバレー パークへ。
  • 飯能から高円寺は下道で1時間半。近くて楽。

ダムの見学、長瀞秩父神社宮沢湖のカヌーなどもう1、2回は十分に楽しめそうだと感じた。

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清雲寺の枝垂れ桜はなるほど、名所になるだけのことはある。最古の桜は樹齢600年とのこと。年輩のカメラ愛好爺達が集まっていた。

御朱印の書き手が熟練揃いでその筋の人には嬉しいのでは。

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熊谷から三峰口までの下りは混んでいたようだが、三峰口から秩父までの上りは空いていて、駅舎や風景も風情があって良かった。

 

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背後の若者が「エモいね」「あー、エモ、エモ」と言っていた。エモーショナル、情感豊か、風情がある、という意味らしい。SLはエモの塊だ。

 

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後ろの顔もなかなか。

 

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英字のPASSENGER CAR表記がまるでオリエントエクスプレスやなんかに連結されたそうで素敵。ゆっくり外観を楽しむならば始発駅だが、熊谷よりも三峰口のほうが背景が山や緑で良い。

 

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現役のスチームパンク。燻し銀ですな。

 

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子供にじゃれつかれて、よろめいて傾いて撮った写真に思わぬ躍動感が出た。SLは改めて見るとフォトジェニック。エモでバエ。なんのこっちゃだが。

 

子供達と嫁さんにSLに乗ってもらい、私は車を並走させて秩父駅へと向かった。SLは速度が遅いのでほぼ同時に秩父に到着した。道中、踏切で待ったり、幾度も交差する道路の上から下からSLを眺めつつ並走するのもなかなか楽しかった。

 

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三峰口駅前の古い店舗。

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そして秩父から半時間で奥武蔵国民休暇村へ。リブランディングされ、なかなか名前からは侮れない国民が平日に英気を養う保養施設として生まれ変わっている。

 

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残念ながらハンモック付きの部屋には当たらなかったが、内庭がついていて開放感がある。外で過ごすにはまだ少し肌寒かった。

 

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全面窓で、ロールスクリーンカーテンで遮光することだってできる。さすが昨年リニューアルしたてとあって国民休暇村といえど侮れない。

 

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食事も小鉢が充実、鮎の塩焼きや揚げたてで供給され続ける天麩羅など大人も満足の味。南伊豆の国民休暇村は新鮮な蛍烏賊の握り寿司が絶品だったっけ。

 

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子供達にはエンドレスに食べられるケーキやフルーツ、タルト類に大喜び。チョコレートフォンデュこそなかったが、3回も4回も心配になるほどお代わりしていた。

 

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夜には天体望遠鏡で星が見られたり、ガイドがレーザーで星を指し示しながら星座や星名を教えてくださった。

 

朝には周辺の散策に参加。鹿の骨でチャームを作ったり、夏には目の前の渓流で蛍を鑑賞できたりと「ふれあいプログラム」も充実していて幼稚園児や小学生には国民休暇村はなかなか良い。

 

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ホームページより拝借。温泉でこそないものの、4月の露天風呂はひんやりとして気持ちが良い。ああ、このひんやりとした外気に風呂は最高だな、と思わせたのは前回も4月もエクシブ箱根離宮の露天風呂だったっけ。

 

 

朋友ルーマニアより来たる、亦た楽しからずや。修善寺と堂ヶ島温泉へ

フランスから帰国早々、ルーマニアから友人夫婦がバケーションで来日した。

 

いつも金がなく、なけなしの金でビールを飲んで、ビーチでサッカーボールを蹴って、たむろしていた私のルーマニア時代のかけがえのない友人だ。当時のルーマニアEU加盟前で共産主義の残滓があちこちに残り、まだ平均月収6000円ほどの貧しい国だった。本当に世話になった。今の私がフランス人、アメリカ人、中国人、インド人や韓国人と仕事をまわせるメンタリティや臨機応変さはルーマニアで培われたと思っている。どう恩を返していいものやらと何度も思ったが、彼らが日本に来てくれることなど想像し難かった。

 

そもそも当時優秀な大学生だった彼らの多くは西側で働き、経済力をつけ、キャリアを積み、ついには日本にバケーションに来るようになったのはここ3年ほどの間の話だ。もう4組になる。そんな彼らは私の中では勤め先の役員の来日よりも優先順位の高い来賓だ。別にもてなさなくても仕事にも生活にも影響はしないかもしれないが、自分の人間としての仁義を失うぐらいに思っている。

 

二人の子供は実家に預けて2週間、子いらずの休暇だそうだ。長旅で体調を崩すかもしれないし、食が合うかもわからないし、思い切って夫婦水入らずというのもありかもしれない。

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  1. 自宅でたこ焼きパーティーワカモレ、真空低温調理したステーキ各種、クラフトビール各種、日本酒。
  2. 翌日、踊り子号で修善寺へ。竹林を散歩し、足湯に浸かる。
  3. バスで1時間強移動して堂ヶ島へ。
  4. 波が露天風呂を洗う野趣あふれる露天風呂のある温泉宿に1泊。
  5. 三島で彼らは京都へ、私は東京へ別れる。

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とても喜ばれたもの

  • ずらりと並ぶ舟盛り、鯛のお造り。伊勢海老の刺身。一度は食べてみたかったスタイルらしい。
  • 夫婦で入れる貸切露天風呂。夫婦で、がポイント。
  • 波が襲ってくる野趣溢れる露天風呂。(友人男衆のみ)男同士は裸の付き合いに抵抗はさほどない様子。
  • 好きな色浴衣を選べるサービス。女性陣は部屋に戻ってフルメイクしなおすテンションの上がりようだった。
  • 自分で焼くスタイルのたこ焼きパーティー。おまえのは下手だの、私のが一番だの大はしゃぎだった。
  • 雪見だいふく。1€でこの品質は驚異とのこと。コンビニで買えることを教えると何度も買っていた。
  • 修善寺の骨董屋で買った天保小判。友人が熱狂収集家だった。
  • 日本のビール。好みの問題だろうが、ピルスナーウルケルに代表させるビール王国チェコに長く住む彼らにとっても日本のビールはなかなかのものらしい。「ヱビスは泡がシルキーで良いね」

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おそらく喜んでくれていたもの

  • 自宅に招き、日本人がどんな家に住んでいるか見られたこと。
  • 竹林。
  • 修善寺の足湯。「熱いな!これ、60度くらいあるだろう?」そんなわけはない。
  • 修善寺の神社の夫婦杉。「もう子供は二人で十分。」「でもここ来たからさずかっちゃうかもよ」ご自由に。
  • 我が家の子供達と遊んでくれたこと。
  • アーモンドポッキー。「うまいね、これ」
  • 鯛焼き。「魚の形をしたレッドビーン入りのパンケーキが美味かった」ってのはおそらく鯛焼きだと思われる。しかし欧州人は餡子が苦手な人が過半数な印象。

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期待はずれ、敬遠されたもの

  • 海藻の酢の物。「うぇっ」
  • 豆腐。「味がしない」
  • 抹茶キットカット。「試食がないのは食べると買ってもらえないからね」
  • 生肉のお寿司。タルタルが嫌いな欧州人は少なからずいる。
  • 蕎麦。醤油を掛けたいとのこと。味が薄いらしい。
  • 他人が履いた宿の雪駄を履くこと。水虫が移るかもしれんしな。欧米人は人前で靴を脱ぐこと、他人の履物を履くことへの抵抗は日本人よりも強い。
  • 新幹線の駅弁。店で温かいものを落ち着いて食べたいらしい。

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不思議がられたこと、面白がられたこと

  • 日本人のマスク。感染しないように、感染させないように、花粉、という説明になぜか感心していた。
  • 上部に手洗いのついた我が家のトイレ。「エコだな、良い発想だ」とのこと。
  • ゴミ箱の少なさ。
  • 時折見かける、あまりに変なグーグル誤訳の英語表記。「Our employees speak frustrating english. Sorry」って「はよ朝食食べにこんかい」とか「こっちは忙しいからそこで待っとけ」とか英語で言われるのだろうか。

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正直なところ、温泉旅館はホームページの写真とは裏腹に設備は古く、あちらこちら傷んでいて私としては胸を張ってもてなせる旅館ではなかった。古いタイプの温泉旅館だと説明したら納得し概ね喜んでいてくれていたようだが、若干残念に思う。

 

子供抜きで第二のハネムーン気分を味わえただろうか。あの頃の恩をほんの少しでも返せただろうか。一番世話になった友人がまだ来日してくれていないのだよな。