上海からタクシーでいける寛ぎの水郷古鎮「朱家角

  • 上海からタクシーで行ける近さ

  • 巡ってまわりたい快適カフェ多数
  • 夜や早朝は静かで人も少ない憩いの場
  • 日帰りよりも泊まりがオススメ
  • 清潔で趣のある古民家ゲストハウスが幾つかある
  • 水郷の水は臭くない。真夏でも上海市街より涼しい
  • 正直なところ、粽も角煮も美味しくはなかった

取り敢えず中国出張の日程は終了した。ストレスが溜まっているときは判断ごとは避けるに限る。自分と対等レベルの人との交渉ごとや折衝も避けるに越したことはない。イライラが言葉尻に出てしまいがち。一旦、仕事のことは忘れよう。

 

夜の1時に床に就いたというのに朝は5時に目が覚めてしまい、10時過ぎまで無気力にベットの上で寝たり起きたりを繰り返した。変な具合に神経が昂ぶっているみたいだ。そしてこれではダメだと気持ちを切り替え、朱家角という上海郊外の水郷古鎮に足を伸ばした。

 

朱家角は16世紀に現在の姿が概ね形成された水運の要衝だそうだ。運河に面して建物が立ち並び、その裏道を歩いて行く西湖街周辺エリアと運河沿いに歩道が作られた北大街周辺があり、その真ん中にはこの古鎮のシンボルでもある放生橋と大きな寺院がある。街そのものはカフェでの休憩も含めて3時間も歩けば周り尽くせてしまう。

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歩き尽くして、もうめぼしい観光名所もなさそうだわ、と気持ちを切り替えて、そこらへんに腰掛けて往来を眺めたり、カフェで長居したり。そういうのが安らぐのだと思う。

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こじんまりとして、街の全体像もすぐ頭の中に入ってしまう規模の水郷が大層、気に入った。

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対面の人をかわしながら進む裏道の雑踏と賑わい。ここの名物でもある豚角煮や鶏肉入り粽を食べながら歩くのも良い。

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放生橋の周辺は再開発が進み、バーやアイスクリーム屋、スターバックスに加えて高級だがセンスの良い雑貨屋がいくつかあった。田子坊に似ているかもしれない。街並みに合わせた灰色と白主体の色合いではあるものの、再開発されたハコモノは風情に乏しい。

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これだけ船頭が漕ぐ船が往来しているならば東洋のベニスと名乗っても許されるように思う。

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観光客には見えない、その場に自然と溶け込んだ子供達。近所の子らだろうか。

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「人民安楽」の梵鐘。青海波紋。


上海から憩いを求めて訪れた人にとって、一番魅力的なのは放生橋周辺の喧騒よりも、水路がY字に分岐した箇所から西湖街にかけての細い水路の街並み、そして小さな雑貨屋と無数のカフェだと思う。


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石橋が多いのだが、このような屋根付きの木製橋もある。歩くシルエットが詩的ですな。

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西湖街らへんまで来ると、そこに住む人たちの日常が感じられるようになる。

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中観音橋のたもとにある喫茶店で昼食にした。麺類やビールもある。寄木細工と天井に吊られた傘がいかにもな中国らしさを盛り上げてくれる。窓越しには橋向こうの御堂が都合よく目の前に見える。その縁に腰をかけ、釣竿を垂らす人の釣果のほどを眺めているのも楽しい。

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喫茶店をもうひとつ。こちらは入り口が石橋のすぐ脇の二階にあり、調度品が素晴らしい。

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窓辺の席は上等なソファの対面席。高級感がありつつも、色がうるさいわけでもなく快適。

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時折、屋内に吊られた籠の鳥が鳴く。

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こういう光景を見ると、自宅の我が家の窓辺を緑化したいと思う。逆光が透過する葉の美しいことよ。

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茉莉花茶を頼んだのだがわからずに戸惑っていると中国の作法に則ってお茶を淹れてくれた。58RMBと少し高めではあるものの、お代わりのお湯は自分で沸かし直せて飲めるし、喧騒から離れて長時間寛げるので値打ちがあると思う。小説を読みながら1時間半ほど寛がせてもらった。


外から眺めても、雰囲気の良さそうなカフェがあちこちにあった。2回目に訪れても飽きずに楽しめそうな気がする。

 

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宿はMyWayという水路に面した古民家ゲストハウス。一泊180RMB也。日本円にして3000円しないのだからお値打ちだと思う。

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朝陽を水面が反射して屋内の天井がきらきらと輝く。いや、気持ちの良い朝だこと。

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 田舎の婆様の蔵にあったような扉のついた階段から2階へと上がる。

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部屋は広くはないが、エアコンも付いており、特に不満もない。トイレとシャワーは共同だがお湯も出た。これで十分。


78階の眺めがあるような高級ホテルに泊まっていると感覚が狂ってくるが、こういう簡素だが気持ちがよい古民家宿に泊まると心の垢が取れるというか、感覚が平常に戻されるというか。

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宿のベランダから水路を眺める。そういや、蚊にも刺されなかった。水は透明ではないものの、小魚がたくさん泳いでいて、ボウフラなど即座に餌になってしまうのだろう。

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毛並みは良いがひたすら愛想が悪い猫を残して散策に出た。

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放生橋のほぼ同じところから日中と夜に定点観測的に撮ってみた。夜になると、魔力が宿るというか、店や人が鮮やかに浮かび上がってくる。

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こちらが街のシンボル、放生橋。まあ、なんてことはない橋でここに憩いはない。

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宿に戻ると女主人が7弦の琴を奏でていた。女性が華やかに演奏する21弦の琴と異なり、7弦の琴はもっぱら男性や思想家、政治家が弾くことが多いものらしく、人に聴かせて楽しませるためというよりは自らの心を整え安らげるために自分の為に弾くものなのだそうだ。


ここの女主人、英語がかなり話せて日本の尺八の素晴らしさや中国の尺八のような竹笛の話もあれこれしてくれた。


おかげさんで幾らかは気分転換ができた。都会の喧騒から逃れるのに良い上海からの遠足だった。




行き方備考

 

ホテルから直接タクシーを拾い、結局1時間半、200RMBほどかかった。高速バスで行けばバス自体は12RMBだというが、バス乗り場まで地下鉄で行き、乗り場を探し、タクシーよりけして速くはないバスに乗れば倍の時間はかかる。3000円ほどで2〜3時間の短縮と考えると滞在日数の少ない旅行者には悪くはない。

 

とはいえ、浦東から西に向かう為に川を越えるのにかなりの時間と運賃が浪費されたようにも思う。中山公園や人民広場らへんまで地下鉄で行き、そこからタクシーに乗ってしまうのが時短で気楽かもしれない。

 

帰りは古鎮から2号線の終着駅までタクシーに乗った。タクシー運賃は35分、90RMB。そこからは地下鉄運賃6RMBほどで市街地に戻れる。もし帰国便が虹橋国際空港からならば、直接タクシーで空港に向かうのも都合が良い。

 

 

では行きも2号線の終着駅まで行った方が良いのか。これはやめた方が良いかもしれない。終着駅は巨大な国際展示場でそこからタクシーに乗って何処かに行く人は少なそうだ。駅前にタクシーは全く見かけなかったし、そこから多少は遠い朱家角に行くのを断られる可能性もある。せめて虹橋国際空港で降りてタクシーを拾うべき。