高円寺南2丁目には近代になって移転してきた曹洞宗の6寺と日蓮宗の寺が密集している寺町がある。「長龍寺」「宗泰院」「松應寺」「西照寺」「福寿院」「長善寺」「鳳林寺」。
こちらが鳳林寺。
1558年(元禄元年)に現在の新宿区飯田橋に草創され、大正3年に高円寺南に移転した曹洞宗のお寺だそうだ。
本堂は江戸中期のもので移転されてきたのは大正なれど古色が漂う。左右に花頭窓の開けられた壁があるなんて瀟洒じゃないか。
この緑青色が好み。いつか我が家の表札も木で彫って緑青色を入れたものを作りたいと思っている。
会いたかった。16年生きて愛され往生したベルという寺犬がいたらしい。
いくつもの寺が東西南北に隣り合うように高円寺南2丁目の一区画に押し込められてしまっている。しかも近代化の最中で仏教の社会的政治的位置が低下している頃の話。周囲も明治40年代から大正初期に移転してきた寺ばかり。理由は東京都心部の区画整理だそうだ。それまでの檀家からも地理的に引き離されてしまったことだろう。お寺さんとしては不本意な扱いだったのではないか。
端正。清々しいほどに。
私の山形の祖父母の家のある集落には一つだけ曹洞宗のお寺があって集落全体がその寺の檀家だった。住職はどの檀家の家族構成も把握していて、おお、あの子がこんなに大きくなってなどと集落の人達をみな目をかけてくださっている雰囲気だった。住職もある種の敬意を集めていた。
そんなコミュニティの中に寺が一部分として存在するのが理想的に思えたので、寺が集められて一画にまとめて押し込められてしまっているのは不本意な寺と地域のあり方なのではないかと思っていた。しかし一方では私の祖父母の集落で私は曹洞宗ではなく浄土宗に帰依したいなどという自由はありえなかった。信仰は本来自由に各人が選ぶべきものであるとの立場からすると私はどの宗派にしようかと選べるのも一つの形かもしれない。
それでいったら高円寺南の寺町は臨済宗、黄檗宗、曹洞宗、浄土真宗、日蓮宗などと各宗派を取り揃えるべきだったのかもしれない。曹洞宗の寺が多いのは駅名の由来にもなっている高円寺宿鳳山が曹洞宗のお寺だからだろうか。すぐ東側にカトリック教会もあるので西にはイスラム寺院、ゾロアスター寺院も置いてほしい。