大正レトロ フランソワ喫茶室




四条河原町付近のレトロカフェはいつも観光客でごったがえしていると思っていたので敬遠していた。炎天下の朝、丸井百貨店裏のフランソワ喫茶室に来てみた。風俗店に囲まれた立地からか、朝は客も少なく静か。

塗りの剥げた椅子にこれまた剥落しそうな壁。猟奇殺人の似合いそうなバロックな空気。独りでもカメラを向けていて飽きない。かつてはレコードを聞けない若者が集まり、売れない画家やら文人が集まった喫茶店のようだが、今は往時の華やかさの惰性で続いているようなものか。今のご時世、売れない画家やら政治運動家なんぞが集うサロンなどあるのだろうか。


紅いベルベット生地の貼られた椅子、原色のステンドグラス、焦茶色の木目が現れた組床、聖母の飾窓。給仕さんは丸襟のワンピースを着ており、100年前の客が見た光景と変わらないのではないかとさえ思う。修道院が全体の主題なのだろうか。主題が何であれ、統一感のある空間には強く知的好奇心が刺激される。世界観の中に浸れる。もしくは逃避できる。


ぼんやりと差し込む光に照らされる木机と珈琲。現代の商業施設からすると暗く、入店するのに抵抗を覚えるほどだが、目が慣れると随分と落ち着く。障子越しの自然光が射す和室と似た静かな暗さ。


古い古い家に快適に住んでみたい。この錆びた質感が好きなのだが、清潔感を保ちながらというのがなかなか難しい。そして引き込もって草木に水でもやり、本を読んで過ごしたい。いかんともしがたい嫌世隠居願望。


TEL:075-351-4042
住所:京都市下京区西木屋四条下ル船頭町184
営業時間:10:00〜11:00
定休日:12月31日・元旦のみ休日