久しぶりに訪れた東高円寺駅前の古美術商カフェバー「ブルーキャスケット」。店名の意味は青い棺。
名物というか看板は、青い棺に入った妖しく美しい球体関節人形。清水真里さんという、その筋では有名な作家さんによるものだそうで熱烈なファンも多いという。
人形が何体にも増えていた。以前置いてあった大きな人形は100万円の値が付いていたが、無くなっているということは売れたのか。そういうのを買える人生ってのも羨ましいな。
なんだろうね、この空気感。しばらく何も考えずに見つめてしまう。そうしている間には生気を吸い取られているのかもしれない。
確かに単なる人形と呼ぶには余る何かの気配を纏っている。この花魁の身請けはいかほどするのだろう。私の小遣いでどうにかなるならば身請けしたい。
和洋の人形が血の気の感じられない白い肌をして見下ろしている中で飲む酒の味。明るい気分、社交的な気分ではなく、疲れて独り静かに飲みたい時には良い。私の中では高円寺において「サルトリイバラ」、「R座読書館」の先にある店。
昔いたパンクな坊主頭の店長は昨年末一杯で辞めてしまったのだそうだ。今は調理や仕込みなどもしているママと呼ぶべき女性1人と、食事や飲み物を出す大学生ぐらいの若い女性が1人。基本的には交代シフトで入る若い女性が1人で接客しているようだ。
音楽も明るくなり、なんだか若干ガールズバーのように変わっていた。営業時間も25時までではなく22時まで。入りやすい、健全な店に変わった。それを歓迎する客もいれば惜しむ客もいるだろう。
一体、一体、顔や目の色が異なる。鎖国の時代の外国人技師と遊女との間に生まれた混血の娘の話があったっけ。そうだ、シーボルトと遊女の間に生まれた楠本イネと言ったか。イネは遊女にはならず医者になったが。
黒髪人形に比べて金髪人形はなんとなく薄幸さが増すのは気のせいか。
ありがたいのは隣にできた姉妹店の立ち飲み屋「色即是空」の食事メニューを出前してもらうことができ、お勘定もまとめて払えるというまさに姉妹店ならではの協働体制。
ピザ、パスタ、餃子などを注文出前できる。球体関節人形に囲まれながら座ってバロックで陰鬱とした雰囲気の中でのんびり酒を飲みながら食べたい私にとってはありがたい仕組みだ。
このカラフルな猫もなかなか。