有田の稀有な穴場宿「ケラミック有田」

  • オランダ人の女主人ハネカさんが気さく。
  • あてがってくれた部屋が高級旅館の貴賓室級で破格の1泊5000円でありえない。
  • 谷崎潤一郎で日本文化の卒論を書いたそうで色んな議論や意見交換ができる。
  • 有田や日本の文化慣習に対する彼女の考察を聞けて面白い。
  • 水回りはトイレも風呂も清潔。
  • リビングが広くセルフでお茶や珈琲も飲める。
  • 自転車を無料で貸してくれるので広範囲を移動できる。

 

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こんな素敵な和室に最後に泊まったのはいつのことだろう。元々は有田の貿易会社の社長だかが自宅として建てたもののその家族は転居してしまい別の会社の社長に売却譲渡。しかしその社長が倒産してしまい競売にかけられていたものを落札したのだという。トラック7台分も廃棄してこつこつ修繕して現状まで改善したという。
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とはいえ格子や建具などはそこらで簡単に調達できるシロモノではない。もともと社長が贅を尽くして作ったモノがとても良質だったようだ。
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この広縁の雰囲気が素晴らしい。デザイン雑誌に出てくるお手本のような光景。
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客室で話す相手もいなかったから座らなかったが、夫婦やカップルで来ていたらここでビールでもプシュッと空けて歓談したいものだ。
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寝室部分は8畳に2畳の床の間。
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時代箪笥も立派だ。
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そしてその横には茶室の小上がりが連なっている。
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網代天井に銘木の柱と贅沢な作りをしている。
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元からあったのかはわからないが長押の釘隠しが有田焼きの絵付けだったりと細部も雅やか。
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持って帰られたらシャレにならんぞ、と心配になる漆の重箱や茶器。

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玄関ホールはこんな感じで階段下のローテーブルでチェックイン。
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磁器のドアノブを掴んでガラス戸を開けると
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大きなリビング。テレビを観るもよし、セルフでお湯を沸かして珈琲やお茶を飲むもよし、トースターやレンジの利用も自由だと言う。
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自宅にこんなバーカウンターを作るようなグレードの豪邸なわけだ。

 

私の他にもイギリスの美術館で日本の磁器のキュレーターをしている若い女性が泊まっていて、夜、ハネカさんを交えて3人でこのカウンターに座って2時間近く話した。

 

コロナ禍で昨年よりも売上が8割近く落ちたという。スタッフも解雇せざるを得なかったという。コロナ禍以前は7割が外国人客でその大半が中国、韓国、台湾などのアジア近隣国からだったそうだ。他にも英語を教えていたりと宿泊業以外の収入源もあるおかげで何とか耐えられているとのこと。
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武雄の樹齢3000年の大楠御神木

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武雄神社の奥にある御神木。
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大楠への小道も紅葉の新緑のトンネルとなっていてその時点から外界から隔たれていく感がある。
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竹林を抜けた先に現れた荘厳な姿。
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神々しさは直に見ないと伝わらない。これは足を運んでみる価値があると感じた。
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石段のサイズを見ないと写真では実物よりも小さく錯覚してしまう。

単に大きさだけを言うならば国内6位の巨木だそうだ。樹齢だけでいえば他にもさらに古い巨樹はある。しかし枝振りのバランスの良さ、葉の瑞々しく茂る生命力、そしてそもそもが私の好きな楠であるという点で私の基準で巨木番付を作るならばダントツの横綱。立つ環境として住宅街の中だったり背景に電線があるような場所ではなく、森の中だというのもある。まだ見たことはないが張り合えるとしたら屋久島の縄文杉ぐらいなものではないかと思っている。

 

神々しい。良いものが拝めた。

幻想的な廃墟の湯

御船山楽園ホテルではTeamLabのデジタルアートを取り入れている。

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入口のロビーに無数のランプが吊るされ、鏡面に映し出されて実際よりも多く感じる。
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6つほどのデジタルアート展示がある。

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遠目に見ると焔に見えるもの。


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デジタルサイネージパネルに高精度の動画が映されている。立体的な植物と季節の花の物体がゆっくり回転しているのだが、「生」の文字に見えるようになっているというもの。

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至近距離で見てもドットの粗さを感じない高解像度。


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白眉は廃墟エリアの展示。
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持て余しつつあった別館大浴槽を開き直ってというか思い切って廃墟風なデジタルアート空間に変えてしまっている。
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単に廃墟アートだというならば老朽化した箇所を晒すだけで開き直りが露骨でヤケクソ感が強くなるかもしれない。しかしデジタルアートを取り入れると作為的に廃墟を演出している体裁になる。
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素晴らしくないだろうか、この幻想的光景。クリスタルとか魔石を探すところか。バハムートとでも一戦交えたら良いのか。

座り込んで日本酒を飲みたい。温泉に浸かりたい。歩いて回るだけでなく、これを見ながら何かができる空間にして欲しい。
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湯船の水面への反射、窓の外の新緑とのコントラスト。廃墟好きには垂涎の空間演出。

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TeamLabのデジタルアートはプロジェクションマッピングとセンサーを使ったものやランプを無数に吊るすものが印象的だが案外すぐに飽きる。特に投影したものは平面的。しかしここのもののように3次元の存在感がある立体物の柱の表面にデジタルな映像を映し出すと空間の広がり全体を劇的に変えることができて没入感が強い。
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1時間をかけてゆっくりと映される季節の花々が変わっていく。柱が防水仕様でこれらを眺めながら温泉に浸かれたら廃墟好き、温泉好きとしては天国なのだがな。
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向日葵が咲き始めた。
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地面から柱が突き上がったような演出。

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曼珠沙華が埋め尽くす。

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洗い場の名残が確認できる。

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廃液のような水面の汚れも味わい深い。

 

今後は廃墟サウナに期待。老廃物を洗い流し細胞の活性化を図るサウナのコンセプトを御船山楽園ホテルなら昇華してくれそうな気がする。

佐賀5日目。神社巡りに廃墟風呂、「らかんの湯」でサウナ開眼。

  • 香蘭社の本店はちょっとした美術館。
  • 陶山神社は晴れの日に来るべき。伊万里焼でできた鳥居は見所。
  • 武雄は武雄温泉、武雄図書館、武雄神社、御船山楽園ホテルも全て歩いて回れる範囲にあって便利。
  • 武雄神社の樹齢3000年の大楠御神木は必見。雨の日でも、雨の日こそ来るべき。神々しさに圧倒される。
  • TeamLabのインスタレーションには飽きてきていたけれどもこの廃墟インスタレーションには心酔した。
  • サウナシュラン3年連続日本一の「らかんの湯」でサウナの魅力に納得。サウナに目覚める。
  • 東京でTeamLabに既に飽きた人にも廃墟の湯のインスタレーションは新しい感覚でオススメ。
  • 地元民で埋まるような居酒屋は美味しい。お店の人も気さく。

 

香蘭社が朝8時から営業しているので覗く。我が家にも大きな8寸ぐらいのボウルがある。瑠璃色があまり好きではないのと、香蘭社は和より洋のデザインよりなので私は香蘭社よりも深川製磁贔屓だ。こちらも宮内庁御用達なのは知っているけれども。

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私が好きな大正レトロランプにインスパイアされた和柄食器。香蘭社らしくないとも言えるがこれは好み。

 

陶山神社

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作陶するものとしては素通りは許されない陶山神社に土砂降りの中で参拝した。
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奉納された有田焼きの灯籠が並ぶ。
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白眉はこの有田焼でできた鳥居。
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様々な有田焼きの品が奉納されている。
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少しばかりロボット染みた有田焼狛犬。全国の狛犬愛好家は一度は拝みたい像。
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尊い
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青空だった昨日訪れるべきだった。後悔。
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御朱印を頂き、さらには御朱印帳袋、陶器安全の祈祷札を頂いてきた。

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武雄神社

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有田から武雄に移動して早速の訪問先は武雄神社。
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賽銭箱にこのような扇があしらわれているのは珍しい。
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〆縄が多く巻かれた神社だった。
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狛犬にも〆縄を巻くのは珍しくはないだろうか。
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狛犬愛好家には陶山神社に続いて個性的で外せない神社。

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武雄神社、陶山神社では見開きの御朱印を複数種類用意していて季節限定の御朱印も多い。字も達筆でたくさん頂きたくなる衝動に駆られる。
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ここでの御朱印は目を閉じて願い事をしながら金のインクの鮎の判子を釣り針めがけて押す占い。針に鮎が重なると願い事は叶い、距離が離れるほど叶うまで時間がかかるのだそうだ。私の願いはそう簡単には叶わないようだ。頑張ろう。

 

武雄神社の大楠

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樹齢3000年という日本十指に入る巨木だが樹形の美しさと葉の瑞々しさを総合すると日本一の御神木だと思っている。土砂降りの雨の中で見上げた効果もあるかもしれない。

 

武雄図書館

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武雄図書館はTSUTAYAを経営するCCCに市が経営委託し、建物内にスターバックスが同居するという新しいコンセプトが全国的に話題になった。子供図書館が併設されておりそちらの2階のカフェで朝ごはんを食べた。
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パンケーキ三種の食べ比べ。穀物系とかいろいろ粉がちがうようだったが蜂蜜やバターを塗るとなんだか違いはよくわからなかった。
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武雄図書館は手の届かない高さの書架に偽書を詰めていてあたかも圧倒的な蔵書があるような雰囲気作りをしているが、公共図書館が雰囲気作りだけに飾りの偽書に150万円をかけたことが問題になった。

さらにはTSUTAYAの古い売れる見込みのない書籍の購入(2013年開館にも関わらず「公認会計士第2次試験 2001」や遠方の「ラーメンマップ埼玉2」など)が発覚して私企業による在庫処分に利用された疑惑が上がったり、

図書館司書が営利販売店員を兼任することで営利業務が優先される懸念が挙げられていたり

建築デザイン重視で書籍に陽が当たるため本が焼けて青くなっていたり、

独自の書籍分類が例えば旧約聖書の「出エジプト記」や村上春樹の「ノルウェーの森」が旅行ジャンルに配架されるなど図書館共通の十進分類法を無視する摩訶不思議だったり

いろいろと問題視される話題も多かった
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それでも本を借りたり読んだり、カフェ利用したりできる人が多く集まり利用される公共施設を指向したその挑戦は好感が持てる。
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むしろそれを醜悪な形で誇張拡大した見栄え重視の「こども本の森 神戸」や中野区の飾り棚だらけの図書館がどうかと思う。
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武雄市の先進的姿勢に全国的な知名度を獲得できたと考えると副次効果は大きいのかもしれない。取り敢えず地元民も旅行者も早い時間帯から朝食が食べられて時間を潰せる拠点なのは確かだ。佐賀や武雄の観光本を立見してさらにイメージを膨らませられる場所でもある。
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御船山楽園ホテルらかんの湯

サウナシュラン連続3年日本一の栄誉に浴したサウナーの聖地があるというのでそこで本格サウナデビューしてみることにした。今までもサウナに10分ほど入ることは何度もあったがサウナから水風呂に入り休憩するサイクルを数回まわすように本格的にサウナを満喫することはなかった。

 

こうしてサウナ目当てで私のような客が来るのだから、32歳で12億円の債務保障書にサインをし、営業すればするほど赤字の経営破綻すれすれのホテルを失敗したら自己破産する覚悟で立て直した社長の努力は報われたのではないか。新機軸の設備投資をしてサウナとTeamLabのニ柱で若い世代に対する集客力を高めている御船山楽園ホテルの経営は執念の結晶。起死回生の攻めの投資をして、功を奏した好例。

 

「らかんの湯」のここがすごい

  • セルフでロウリュできるサウナ。
  • サウナ室内にも上部、水平部に窓を設けて外の樹々を眺められる雰囲気づくり。
  • 総重量3tの巨大薪ストーブは武雄の薪をくべ、御船山の石を熱して冷やした温泉水をかける地産地消サウナ。

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(公式webから拝借)

  • 初心者向けにシャワーでぬるい水を浴びてからすぐ脇の水風呂に入れる工夫された動線
  • 水風呂は階段がついて複数人が肩まで入れる深さ。
  • 外気浴するための長椅子の背もたれと足置きの角度がちょうど良く、浮遊感のある寛ぎ。

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(公式webから拝借)

  • 休憩するエリアにウォーターサーバーや温かい番茶が備え付けられていて水分補給がこまめにできる。
  • 全面ガラス張りの室内休憩所があり森林浴さながらに休める。さながらバリかどこかの高級リゾートスパ。

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(公式webから拝借)

  • フルーツスライスの入ったデトックスウォーター、ドライ蜜柑、水羊羹、塩プリンなども無料で摘める。
  • 空間全体を香ばしい良い匂いが漂っている。

 

  1. 身体をしっかりと洗い、
  2. タオルを尻の下に敷いて無理せず中断へ
  3. ストーブに水を掛けてロウリュするさいには失礼しますと他の人に声がけするのがマナーらしいが熟練サウナーがちょうど良いタイミングでロウリュしてくれるのに任せれば良い
  4. タオルを頭に乗せると髪が熱くなりすぎず無理せず長く留まれる
  5. 10分ほどして無理せずサウナを出る
  6. いきなり水風呂に入らず、無理のない生暖かい水を軽くシャワーで浴びてから
  7. 息を吐きながら水風呂に浸かる
  8. シャキッと目が覚め、アドレナリンの分泌を感じる
  9. 水風呂は1〜2分で十分。
  10. 手拭いで水気を拭き取り
  11. お茶や水を適量補給して
  12. 長椅子で脱力してリラックスすること8〜10分
  13. これを1セットとして3セット回す

 

なんだか頭がスッキリとして、身体は軽く、多幸感に包まれてくる。これが「ととのう」感覚だろうか。仕事がしんどくて精神的にも肉体的にも疲れた際にもサウナは救ってくれそうだ。サウナーになろうと思った。とても快適な設備でサウナデビューできたのも幸いしたかもしれない。

 

廃墟風呂feat.TeamLab

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廃墟と化した大浴場の幻想的な地面から突き出した柱。防水にしてこの空間で入浴できるようにして欲しい。

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柱には四季の花々が投影される。

 

サウナで心身共に軽くなり、1kmの道程を武雄温泉駅方面へ引き返して宿の近くの居酒屋を探した。宿の主人に勧められた「あん梅」は予約で満席。その角を曲がってすぐの「心酔」に入店したが、ここも私が入って20分もしたら満席となった。

 

国内最高峰の佐賀県立九州陶磁文化館

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4月にリニューアルオープンしたばかりだという佐賀県立九州陶磁文化館。
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有田や陶磁器の歴史の説明がわかりやすい。
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デジタルに自分好みの有田焼をデザインして大きく表示するコーナーなんてのもある。輪違い紋に虎と蝶の八角皿を作ってみた。
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同じ輪違い紋を複数並べて鮭を加えた丸皿。面白いな。

自分のデザインを生地に転写して焼き上げて実物の有田焼きを作れるところまで行けば是非作ってみたい。
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コンプラ鉢を模倣している陶芸仲間がいた。私もこれを見て作ってみようかな、と思っている。無論、ZOYA(醤油)ではなくZAKY(酒)と書くつもりだ。
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名護屋城に秀吉の金の茶室が再現されたらしいがそれを彷彿とさせるディスプレイ。
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ヨーロッパの宮殿で流行した東洋趣味の陶器の間の再現。装飾展示用の壺や皿を線対称に対にして飾るのが肝であったらしい。
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やがてはマイセンやフランスの窯でも盛んに模倣品が造られるようになるのだが模倣品は毛髪で書く文化の無い国なので運筆を無視して余白を塗り潰しているだけなので呉須の濃淡が汚い。
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左がオリジナルの有田焼。右がマイセンで100年近く後に模作されたもの。
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そういった説明書きもあってわかりやすい。
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通常の他美術館であれば記号的な情報が多くなりがちで物語性のある説明に乏しいことが多い。ここでは明から清に王朝が変わり、清王朝が旧勢力の立て直しを目論む景徳鎮を含めた南部の勢力を抑えるために中国磁器の輸出を禁じたことが最初は中国磁器の代替品として有田焼に注目が集まるきっかけとなったことなどが説明されている。

今も昔も戦争や政変などの理由で供給元が変わることが国際貿易ではあったようで示唆に溢れる。
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植木鉢に転用しやすい形だ。参考になる。
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高台が高いリムに装飾を施した植木鉢を作ってみようかと思う。
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なんともサイケデリックな紋様。
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バージニアバートンの「せいめいのれきし」という絵本を思い出す。
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本膳の例示。
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還元の強い青磁に菖蒲。
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内庭もあって目を休められるようになっているのだが、内庭にも楽しませる磁器があちこちに配置されている。存在感があるのがマイセンから贈られたヒクイドリ
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水飲み水栓も全て有田焼。
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ロビーには巨大な機械時計があるのだが、特定の時間になるとカラクリが動き出す。
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有田くんの目つきが悪い。

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染付磁器の歯車が回る様は見ていて楽しい。

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眼福
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眼福
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眼福
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ここ数年の日展や工芸展の入選作品も何十と並べられていた。気に入ったものをいくつか記録しておきたい。
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アザミのトゲトゲしい雰囲気をよく表した花器。
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見る角度によって印象の大きく異なる椿の描かれた花器。この紅椿だけが見えるシルエットも魅力的だが

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よじれて紅白に見える様も面白い。世良彰彦さんの雫という作品。
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氷裂青磁の大皿。
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展示物ではない箇所までが装飾的で素晴らしい。ドアの取手というか押す部分が全ての箇所が異なる有田焼の陶板になっているのだが、絵付けも素晴らしい。
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これほどの美術館を無料にしてしまった良いのかな。ここまでのものは入場料を取っても良いように思うのだが。その代わりに違うことに補助金を出してほしい。地元の子供達や学生、窯業関連の人たちに気軽に触れてほしいだろうし、財政はどこの自治体も厳しいだろう。地元民は無料、観光客は有料にするのが良いように思う。

 

深川製磁への愛が届かない。懐が。

そういえば、陶器に嵌る前に深川製磁に少しばかり嵌っていたことを思い出した。

 

海外駐在をするにあたって来客をもてなすには和柄の皿があったほうが良いよな、とネットで調べて華があって好みに感じられたのが深川製磁だった。そんなわけで我が家には愛用している深川製磁がそれなりにある。殆どは寿赤絵シリーズで少しばかりブルーチャイナの徳利と酒盃もある。

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郊外のチャイナオンザパークという深川製磁テーマパークのようなところを訪れ、午後には上有田にある深川製磁本店を梯子して訪れた。奥には工場もある。
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本店建物には風格がある。京都の開化堂の建物を思い出した。
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富士山のステンドグラスも素敵。
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販売棟の奥にある敢えて塗り直していない木造の工場入り口の建物群。現役で使い続けられるほど細やかに構造躯体や内部が修繕されているのだろう。
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深川製磁のロゴが掲げられている。
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宮内庁御用達 深川製磁株式会社とある。有田は販売される器だけでなく売られている建物も芸術品でまわっていて楽しい。

 

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深川製磁は凄いなと再認識させられた染錦つる朝顔シリーズ。朝顔日本画的表現、染付けのたらし込み技法のような濃淡グラデーション。控えめに縁に金の乗る豪華さ。そこら辺が私が惹かれる要素だと思う。100年以上前からある定番絵柄だ。
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紅茶カップとソーサーのセットで定価77,000円だそうだ。いやあ、良いと思うけれども懐事情が全く持って合わない。年収がどれぐらいになれば買える気になれるのだろうか。

 

深川製磁では伝統技能士を7人抱えているという。9人いたが2人が高齢化により引退してしまったとのこと。このクラスの高級シリーズになるとこのシリーズは誰と担当が決まっているそうだ。技能士の手描きの品は価格がひと回り高価になる。

 

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鯛の開きなんていう皿型もあるのだね。
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図案が和なのが好み。何を盛り付けたら良いのか全く思いつかない。
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菊七宝。わかりやすく高級、上品のイメージ通りの品だけれども深川製磁基準では求めやすい価格なのだろう。私が持つようなものではないけれども見るのは好きだ。
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深川製磁の技術の高さよ。完璧すぎてつまらなく感じるほど。
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壺が1万円前後だった。小さなゴブレットよりも安い。手捻り成形だとこんなサイズの壺はそれなりな値段になるけれども、鋳込みによる均一な形で絵付けもシンプルだと深川製磁においては値付けはむしろ低くなるようだ。見た目に対するコスパは高いとも言える。
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深川敏子メモリアルシリーズ。深川敏子は大正、明治期を生きた女性で深川製磁創業社長の長男に嫁いだ。女学生時代に大恋愛の末に妊娠して結婚。閉鎖的な価値観に染まる佐賀にあって地元の名門にそのような形で嫁いできたハイカラで自由奔放な女性。新しい芸術性や家風を吹き込む上で当時の深川製磁創業社長は歓迎して愛したのだそうだ。しかし4人の子供を授かるも肺炎で30歳の若さで夭逝。

常識に囚われず自分のスタイルを貫いた深川敏子に勇気づけられる人も多いのではないか。そんな物語を持ったメモリアルカップ
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光琳風の絵皿。金の代わりに鈍い錆び銀彩ならば買ってしまったかも。と思ったがお値段7,700円。アウトレット品は2割安くなっているが傷やピンホールがあるわけではなく、深川製磁基準に対して呉須の発色が濃過ぎたり薄過ぎたりするものなのだそうだ。どう発色すべきかの基準がわからないと良品にしか見えない。
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竹と菖蒲の簡易化度合いが好み。
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盃もあった。中サイズで11,000円。どれも手が届かない。
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取手の太いマグカップ。重たそうだが取手が中空になっていて軽い。しかも空気穴が空いていない摩訶不思議。膨張爆発をどうやって防いでいるのだろう。

熱い飲み物を入れて細い取手で飲むのがしんどい高齢者の声に応えているそうで確かに握りやすく安心感がある。人によっては味噌汁を入れたりするのだとか。なるほど。デザインはそこまで好みでは無いけれども実用性が深く考えられた一品。深川製磁愛好者が高齢になって辿り着く品かもしれない。

 

私の好みと愛情は陶器に移ってしまったけれども深川製磁はやはり良いと思う。あ、これも良いなと思って器の底にある値札を見るたびに「お前が買えるものではない」とビンタされた思いがする。

 

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ちなみにこれが私が長らく愛用している深川製磁のボンボニエールなのだが、上下全面が瑠璃ではなく青と蒼の中間のようなとても綺麗な呉須による深川ブルーになっており銀かプラチナで十字に桜の蕾、花、葉が描かれている。
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これと同じシリーズの酒盃や皿があれば購入したいと思って深川製磁本店とチャイナオンザパークで探してみたのだが類似品は見当たらなかった。
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そもそも全面が深川ブルーで覆い尽くされた意匠が殆どない。大きく線描された桜の絵付けはあれど、こんなに小さく紋様化して描かれた桜も既存製品ラインでは見かけない。裏を見ると確かに深川の富士に流水ロゴが入っているのだよな。

深川製磁本店の年輩女性が過去のカタログをめくり、工場長にも聞いてもらったがわからないとのこと。

 

後日、写真を撮って送らせて頂いたら返事が来た。昭和49年、1974年のカタログに載っていることが確認できる「平安花鳥」というシリーズのもので現在は絶版、在庫も無しとのこと。48年も前のものだとは思わなかった。全く古びない品質の高さに驚かされる。大事にしよう。

手塚商店にて田中ふみえさん作品に出会う

作品を展示する空間自体を最大限に魅力的にして作品の魅力も引き出す。主人が作家の経歴や作品の狙いを語ってくれるのも大きい。販売店としての役割の大きさも見せてくれる手塚商店。もちろん、作品に強さがあってのことだけれども。

 

大正時代に建てられたという立派な木造建築のギャラリー。パリ万博で有田が名を馳せ陶磁器の輸出貿易が花開いた頃に輸出商として儲かっていた先先代が建てたそうな。

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立派な大店の手塚商会。痺れる店の外観。
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お向かいの明治時代に建った民家。
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こちらはさらに古く江戸時代。

うちが3軒の中で一番新しいんですよ、と謙遜するご主人はどこか誇らしげ。京都か、ここは。
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もう70歳近いご主人が生まれ育ったご実家だそうだが建物そのものが美術品のような佇まい。掃き清められ隙がない。そのまま観光ガイドの写真になりそうな憧れる日本家屋。
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そんな座敷に近いタタキの一画に田中ふみえさんの作品が所狭しと並べられていた。ギャラリー主である手塚さんが目利きした磁器作家「田中ふみえ」への入れ込みようが判る。

空間に酔って作品も一層魅力的に見えてしまう気がする。
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酒盃や蓋付き碗
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古くからある図案に新しい色遣いをしたり、古くからある図案を新しい組み合わせ方をするのが彼女の作品の魅力だそうだ。左の椿も個性的な色の組み合わせ。
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青い染付けの菊の雄蕊には黄色が差してある。補色だからか、そもそも青い菊も雄蕊は黄色だからか、染付けの青一辺倒よりも引き立つ。そしてリムにプラチナが塗られ豪華さも加わる。

 

元々は東京で商社勤めをされていて、有田がご実家だったこともあって専業作家としてやっていける目処が立ちそうな頃に独立して有田に転居されたそうな。生粋の若い頃から専業作家として修行してやってこられた方ではない。元々は本業を別に持つ転身組みとして私にとっての目指す姿を見出している。

私も生産量は多くはできないかもしれないが陶蟲夏草鉢作家として思う存分、自分の作品を作れるようになりたい。
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呉須の染付けにプラチナを載せるのが彼女のスタイル。縁のプラチナの垂れ紋様が好み。絵柄は全て手描き。
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小皿の絵付けも図案のレパートリーの多さに驚く。描いていた楽しくて仕方がないのだろうな。

田中ふみえさんにはファンも多く、つい先日に数年待ちしていたお客さんにようやく注文商品を納められたと言ってその作品を見せて下さった。特注の図案ではなく過去の既存の図案で指定数量の皿を作ってもらう形の特注だそうだ。やはり特別注文は特定顧客に対する既存図案の再生産が期待値のずれがなくて安心なのだ。

とはいえ、器を持つ左手に腱鞘炎を患ってしまいしばらく制作できなかった時期があったのだとか。
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唐津や白華窯を歩いている際には、「たぶん有田では何も買わない気がするんですよね。綺麗すぎる絵付け磁器よりもムラや揺らぎの多い陶器の方が好みなんですよ」などと地元の話し相手に私は抜かしていた。総論としての好みはそうなのかもしれないが、これだけの手描きの一筆入魂の作品の数々を目の当たりにすると磁器だからと否定する気も起きない。ブレやムラのある精緻に整い過ぎない点に絵付け磁器でも魅力を感じるのだろう。転写はつまらん。
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右の錆びたようなプラチナ釉の釉垂れ紋様と雀と花木のモチーフのマグカップにも惹かれたが全体として雰囲気が甘く可憐すぎる気がした。悩んだ末に左のスッキリとしたシルエットの酒盃を買ってしまった。外側には瑞雲と雨の線紋、内側には雷紋が組み合わされている。雷があるならば雲と雨もあるだろうという当たり前に聞こえるがこれまで合わされることのなかった図案同士の同居。値段は秘密。良いことがあった日にニヤニヤしながら好みの日本酒を飲むための好みの酒盃。そんなものをいくつか持っても良い年頃ではないかと自己正当化した。
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ご主人からは会計をしている間、オススメのちゃんぽん屋だとか、地酒の銘柄なんかも教えて頂いた。

とても立派な江戸時代から引き継ぐ仏壇があって、裏には何代目が修繕をしたという記録が墨書きされているのだそうだ。間隔からすると自分の代で修繕しなければならないのだけれどもスキップできないものか、と仰っていた。