干柿

試しに干柿用の渋柿を10個1,000円で買ってみた。既に紐で対に結んであるので手軽に作れる。これをまず皮を剥き、沸騰した湯に5秒ほどくぐらせて渋を抜くとともに表面を加熱消毒する「醂(さわ)し」作業を施す。そして雨があたらず、風の通る軒下に吊るすこと2週間。仕舞いに手で揉みほぐして完成となる。



日本には富有柿、次郎柿などの甘柿と市田柿などの渋柿に別れる。柿自体は大陸から伝えられたものだが、甘柿は1214年に神奈川の寺で突然変異で生まれたのだという。つまりかつては柿と言えば渋柿だった。



柿と言うのはなんとも不思議な果物だ。甘柿は渋柿と違って渋抜きをせずとも食べられる。しかし渋柿のほうが実際には糖度は四倍ほども高い。乾燥させることにより、渋柿の可溶性のタンニン(カキタンニン)が不溶性に変わって(渋抜きがされて)渋味がなくなり、甘味だけが強く感じられるようになる。干柿は生柿よりビタミンCは少ないが、糖分が約4倍、カロテンは3倍にもなるという。食物繊維を多く含むため便秘の解消に効果的で、有害物質の排出を助ける。甘柿は体を冷やすが、干し柿は内臓を温めるのだという。



2週間だけ干した干柿は中がとろとろで、ゼリーのようなまろやかな食味。皮を剥いた後の表面は薄く堅い膜となって、そこからは高級市田柿になじみの干柿の風味がある。内と外で両方の風味が楽しめて、市販品よりも正直、美味い。干柿がこんなにも手軽で美味いものだとは目から鱗。これからは自分で干柿を作ろう。


干柿は和菓子のルーツとも言われている。砂糖がない時代には、葛などの甘味が一般的であり、とりわけ柿の甘味は図抜けていたそうな。それも全て納得がいく。


ちなみに柿の学名はkakiである。