ヒアアフター

クリントイーストウッドはもう人生の黄昏時を歩いているのかね。自分の人生を反芻するような描写が多いし、明らかに自分の死を意識し始めている。


グラントリノではクリントイーストウッド自身がどのような死に方をしたいのかを描いたように思うし、今作では死後の世界が実在して欲しい願望を描いたようにも思う。


これまでの作品でも一貫して主に順風満帆とはいえない人生を送る市井の人を描いている。一見、俳優としても監督としても非常に成功しているように思えるが、彼らの描き方に滲み出る視線の優しさは彼らの痛みを知っているからだと思えてならない。


それにしても「ザタウン」を観たばかりだということもあり、どうも2作品が重なる。どちらも一握りの突出した成功者ではなく、取り柄のない人や苦悩を抱えた人達を優しさを含んだ視点で描く。どちらの作品からも喪失感が感じられる。片やベンアフレック、片やマットデイモン。美男美女の華やかな映画でもないし、主人公も思いを寄せる女性とはそう劇的には結ばれない。映画の中でしか観られない非日常ではなく、自分にも起こりうる日常の心情を非日常な設定の中で描いている。そういう映画が好きらしい。


死後の世界はあるのだろうか。電気が消えて御終いなのだろうか。その先があってほしいと強く願がってはいるが、おそらくない、というのが現時点での認識。


簡潔明瞭にわかりやすい起承転結のある映画ではないのだが、しまいにははらはらと泣けてくる映画だった。