冬の晴れた箱根へ。中国人、韓国人、フランス人、カナダ人とで缶詰合宿をしに行った。
チームビルディングと称したハイキングは晴れた箱根外輪山を3時間ほど歩いて清々しく気持ちよい。
ハイキングの3時間以外は2泊3日をひたすらホテルの会議室にこもって議論議論。その嘆きの地として選ばれたのが箱根ハイアットリージェンシーホテル。ちなみに強羅を下ったところに大規模な建築工事中の区画があり、なんでもリッツカールトンができるとの噂。
ロビーはヨーロッパやカナダの山岳ロッジリゾートを思わせる雰囲気で吹き抜けの広い空間に全面窓、そして中心には暖炉がある。断熱効率の悪い要素を詰め込んでいてこれは自宅では実現できない贅沢。
夕方になると暖炉に火が入り視覚的にも暖まる。焔は見ているだけでなぜこうも心が和むのかね。しかも17:00〜19:00がカクテルタイムか何かでシャンパンやワイン、ウィスキーなどが無料で楽しめた。まあ、宿泊費に含まれているだけなのだけれども。
クリスマス飾りはプラスチックやガラスの飾りを賑やかに散りばめるのではなく、針葉樹に赤い実を散りばめて自然素材な梟を添えた抑制的な飾り。小さな灯りも控えめでとても好みだ。
ドローイングルームというチェス、ボードゲーム、おもちゃのブロック、絵本や本のある部屋もあった。ただし、この日は宿泊者に子供は見なかった。
藤沢周平好きとしては全集が置かれているのは嬉しいけど、ホテルで読み込む人などどれだけいるのだろうか。もはや飾りに過ぎない。
部屋は一人で泊まるにはひたすら広かった。74平米。私の学生時代の下宿の3倍以上の広さだ。
絨毯のスペースが広大でも、寝転んでゴロゴロできるわけでもないし、空間を使いあぐねてしまう。ベッドの上の3畳とソファの上の1畳半しか使わない。
洗面所も無論広々。
アメニティも香りの良いもので満足度は高い。
朝起きると、朝靄の中の木々がとても清々しかった。この木々の逆光のシルエットは少しばかり幻想的で良い。
朝食ビュッフェは野菜も豊富、一夜干しやお粥、味噌汁など和食も豊富で美味だった。カプチーノを出してくれるのも嬉しい。
ホテル全体は広々として清涼感に溢れていた。接客も丁寧で皆、英語対応も完璧で申し分ない。そう言いたいところだが、どうしようもなく消化不良だったのが風呂だ。
(webから拝借)
なぜこれだけのハイグレードなホテルで風呂が内風呂大浴場一つだけなのか。日本人は箱根まで来て、湯気で曇って眺望の全くない内風呂だけで満足できるのか。お湯もしっかりとした箱根ならではの硫黄泉で申し分ないのに、露天風呂が無いのがひたすら残念だ。歴史の古い有形文化財の木造温泉旅館では内風呂しかないところも多いが、それでも満足できるぐらい内風呂に重厚な趣きがある。モダンな石造りの内風呂しかない高級ホテルというのは何かタコの入っていない「たこ焼き」ぐらいの、「こりゃないだろう」感が残る。
これが日本人と外国人の温泉風呂に対する決定的な期待値と価値観の差なのだろうな。殆どの外国人同僚が大浴場は利用しなかったそうな。
たしかに仕事相手と裸の付き合いなんて、私でも好きでは無いのだから他人の前で裸になる習慣のない外国人にとってはハードルが高いのだろう。上司の裸とか、見たくない。入りもしない露天風呂やらに金をかけるよりも、暖炉のある広々としたリビングの方が満足度は高まるのかもしれない。
しかしだとしたら、なぜ箱根なのかと問いたい。部屋のバスかシャワーで十分なら箱根という温泉名所に来る必要もなかろうに。単にハイキングなら高尾山でも行けば良い。
朝食、夕食込みのデラックスツインルームの宿泊料金は一泊一名利用でなんと4万円。ないわ。ありえない。8万円払って2連泊で露天風呂なしは温泉好きの私の感性としては耐えがたい。同価格で渋温泉金具屋に4泊投宿するほうが3倍は満足できる。風呂重視ならばエクシブ箱根離宮に泊まって、気兼ねなく1万円のディナーを頂く方が満足度は高い。
実際のところ箱根ハイアットリージェンシーは外資系企業の会議合宿や訪日客の接待、欧米人の旅行などでけっこう評判が良いらしい。その事実に埋めがたい価値観の溝を感じた。なんでも分かり合えると思ってはいけないのだな。違うということを尊重しないといけないのだな。そして日本人的感性では拾えない顧客ニーズをこのホテルは拾っているのだな。
露天風呂に入らないとこのまま東京には帰れんぜ。