長野の備前焼とでもいうべきアツムイ窯。
白馬から南へ大町、そして池田。その山の裾野にある評判の蕎麦屋に行ってきた。
囲炉裏の切られた風情ある板間。
窓から平野を見下ろせて気持ちが良い。
山菜天麩羅蕎麦を頂いた。熱々の海老、さつまいも、そして名前のわからない美味しい山菜の数々。
蕎麦も言わずもがな。長野の蕎麦は本当にレベルが高い。
手打ち蕎麦「かたせ」で遠くの山々を眺めながら美味しい蕎麦を堪能した後、そこのご主人に紹介されて750m先のアツムイ窯という陶芸窯とギャラリーまで足を伸ばした。
遠くから移築したという豪壮な大黒柱や梁を備えた家屋がギャラリーとなっている。
その先の作業場にも案内していただいた。
笠間の濱田庄司の工房と同じく、大きな窓に向かって蹴轆轤が並ぶスタイル。蹴轆轤を一度はやってみたい。整理整頓された陶芸家本職の仕事場に興奮する。
親子で4年ほど前に築いたという登窯。ここでは施釉した器を年に3〜4回焼くそうだ。
そして幸運なことに年に1回しか焼かないという穴窯がまさに焚かれているところを見学できた。1300℃まで温度を上げるそうだ。私が電気窯で焼く際には1230℃な設定なのでそれに比べかなり高音で焼くようだ。
もう20年以上も前にお父様の森岡光男さんが築いたそうだ。森岡光男さんは鎌倉の明月窯で修行を始め、その後も備前を含め日本各地の窯元で修行され、焼締の魅力に取り憑かれて以降は自分の窯を開きつつ幾度か拠点を変え、最終的にこの池田の地に落ち着いたそうだ。
ギャラリーのある母屋に移動する。
このギャラリーの建物も雰囲気も素晴らしい。焼締の作風が映える風格ある日本家屋。
中央には大きな囲炉裏があり、灰が美しく盛られている。茶道に用いる花入や茶器を買い求める客も多いのかもしれない。
お茶と息子の陶芸家森岡宗彦さんが自ら梅を収穫し漬けたカリカリ梅を頂いた。まだ青い梅の種が黄色くなった短い旬に収穫しその日のうちに砂糖漬けにすることがカリカリの食感を残す秘訣なのだそうだ。
お父様の森岡光男さんの猪口は7,000〜8,000円。息子の森岡宗彦さんのものは3,500〜4,000円。どれも素晴らしいが森岡光男さんのものはより丹波立杭焼きのような燻の入った薄手の焼締が多いように思う。
息子の宗彦さんは子供の頃から粘土をこね、親しんできたそうだ。子供のこねたものをそのまま穴窯で焼いていたのだそうだ。なんという英才教育。
陶芸するものの端くれとして作れるものは自分で作る。わざわざ買わない。しかしこういう穴窯の自然釉の器は早々に白旗を上げて購入。
この立派な花入も購入させていただいた。こちらは激渋な焼締。
この景色の素晴らしさよ。
とてもホスピタリティ溢れていて作品も素晴らしく、親子の仲の良さも父への尊敬も伺えて応援したくなる素晴らしい窯元「アツムイ窯」。