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観光 伏見考

美術館 博物館

伏見の酒蔵廻りをしたのだが、物足りなさと「勿体無い」感が残る。月桂冠と黄桜を訪れたもののわざわざ醸造所を訪れた意義に乏しい。あるのは動きの全く無い模型、作業工程や吟醸純米酒などの区分説明などの展示物、売物の酒を3種飲めるだけの「利き酒」。しかも3つ目は日本酒ですらなく梅ワイン。どれも醸造所に併設されている必然性に乏しい。


伏見にある目ぼしい観光地はさほど多くない。醸造資料館、「月の蔵」や黄桜併設のレストランを始めとする日本酒と食事を楽しめる飲食店、寺田屋御香宮神社、三十石舟ぐらいだろうか。他にもあるのかもしれないが、軽く調べてもそれぐらいしか出てこなかったので軽い気持ちの観光客がそれ以上の情報を掴んで隠れた魅力に出会うのは難しい。醸造所の内容も乏しく3,4時間以上滞在すると退屈してしまうので、観光客は伏見で夕食など取らずに帰ってしまうのではないだろうか。


せっかく醸造所を訪ねるのだから、発酵途中の微炭酸の生酒や火入れ前、火入れ後など、同じ酒の工程毎の味を飲み比べるなど醸造所でしか味わえない体験が欲しい。どんな要素が辛口、甘口、アルコールの強弱を生み出すのかなどもっと踏み込んだ知識も習得できるようにして欲しい。


月桂冠の大倉記念館は入場料が400円でさらに入場者に缶の純米酒がつく。値段設定はお得な感じがして良い。しかしそれとは別に、内容が濃密で単価の高い体験コースの選択肢があっても良いのではないか。団塊世代の客層が多いので内容に応じた値段ならば高くとも良いように思う。


単に酒だけを比べる利き酒ではなく、食べ物との相性判断を含めた利き酒をやってもらいたい。ワインで言うところのマリアージュである。例えば甘いつまみ、辛いつまみ、惣菜などを数品と日本酒を数種類用意して、講師の話を聞きながら自分の好みの組み合わせを見つけていくといった塩梅。一般的には辛い食べ物には辛口が合うなどとは言われるが、それを実体験を通じて学べるし自分の酒の志向もわかる。チーズとワインそれぞれ10種類ぐらいを用意して自分の好みの組み合わせを探求するセミナーを主催者側で催したことが以前あったがあれは楽しかった。普段、家庭で数種の日本酒を同時に開けることなどできないし、お酒を食事中に楽しむのもひとつの大きな楽しみ方なのでこのような企画はやってる本人としても有難かった。


最後に思ったのが地の利を活かせていないということ。韓国では永らく日本酒ブームが続いていた。ソウルには日本酒や焼酎を置く店が増え、銘酒を輸入販売するのも盛んだった。いまでも流行は続いているかもしれない。欧米でも日本酒を飲みながら寿司を食べるのはクールだと思われている。欧州の友人にも日本酒愛好家は多い。美味いワインを求めてハンターバレーやボルドー、ナパを訪ねる人がいるように、醸造所を訪れたい日本酒好きもいることだろう。しかもワインの産地が各国に点在しているのに対して日本酒の生産高の47%は兵庫と京都に集中している。そして兵庫の灘よりも伏見の方が京都観光に組み込みやすいという点から絶対的な地の利がある。もったいない。外国人をもっと当て込んだ観光マーケティングができると思っている。


例えば日本酒のラベルに観光客の名前を印字できるようにするのも楽しいかもしれない。自分の国に持ち帰って、「日本の醸造所にいっていろんな日本酒を飲み比べて一番気に入った味のものを買ってきたんだぜ。みろよここ、俺の名前マイケルが漢字で魔逝毛流謹製ってプリントされてるんだぜ。すごいだろ」などと盛り上がるかもしれない。予め貼ってあるラベルの余白部に業務用のインクジェットプリンターで印字することなど大して難しくは無いのだから。