木登り緋泥鰌

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泥鰌って可愛くないか。目が丸くつぶらで、口先にもさもさとヒゲが生えていて、鰻や蛇ほど長くはないがニョロニョロと泳ぐ。


泥鰌ってやつはいつも砂利底を這って泳いでいるものだと思っていた。案外、水草の上に登って休むのが好きなことを知った。

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しかも水質の汚れや飢餓に強く、日本の気候に適応しているので冬も加温せずに飼うことができる。


過小評価されているかもしれない緋泥鰌。単に私がその魅力を知らなかっただけかもしれない。


泥鰌の為の陶製の棲家を造ってやりたい。



うんざりするタピオカ屋乱立の中で目を惹く花カフェ「gmgm」

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中華料理屋「成都」の軒先に台湾タピオカ専門店「五十嵐」が出来ていた。その10m先には「麗茶亭」。

 

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うんざりだ。20年ほど前に台湾で初めて飲んだ時に、友人とおっかなびっくり飲んだ。まあ、飲めなくはないが甘すぎるし敢えて好んで飲むものでもないと思って以来、自分で買ったことはない。

タピオカの実態はキャッサバ団子で原価がとても安く、とても儲かるとのことで昨年からブームになっているらしい。

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「ジャンボ総本舗」という粉物屋も台湾黒糖タピオカ専門店に変わっていた。

反社の資金源になっているなんて話まで聞こえてくる。うんざりだ。1年後には淘汰されているだろう。

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まださらにできるのか。これから開店するという時流の読めてなさ、徒歩20mの範囲に既に2店舗あるなかでさらに出店するという商圏分析のできてなさに暗い気持ちになる。

タピオカミルクティーが好きで専門店を開くのが夢だったという誰かが開いた店は殆どないだろう。儲かっているらしいから投資してみたという店ばかり。閉店しても全く惜しまないし、そこらの飲み屋で「昔、タピオカ専門店を出したんですけどすぐにブームも去って借金が残ってしまって」なんて困っている人と会ったとしても微塵も同情しないだろうな。

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大手チェーンのプロントまで参入。専門店の値段より安く飲めますよ、というタピオカ専門店の客の削り取り作戦。ブームが去ったらメニューから消せば良いだけだから彼らは痛くもなんともない。

 

高円寺駅周辺だけで6店舗ものタピオカ専門店が見つかった。高円寺の客は流行りものに飛びつくだろうと小馬鹿にされているような不快さを感じる。言い過ぎか。ここまでくると白痴化。安易な模倣ビジネスの蔓延に日本経済は大丈夫だろうかと心配になってしまう。タピオカブームは飽和して下り坂に入った様子。どうやら私はタピオカミルクティーが嫌いらしい。

 

 

高円寺駅南西の焼鳥屋街を過ぎたあたりに新しいカフェ「gmgm」ができていた。グムグムと読むのだそうだ。6月7日に開店したばかり。

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店内の壁は全面的にピンクで天井から沢山のドライフラワーが吊るされている。販売もしているとのこと。

 

ドライフラワーアーティストの奥さんと、料理とお酒を作れる旦那さんが融合させてみてはどうかと思いついて生み出したそうな。

 

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クリムトの絵が飾られていたり、猫脚の椅子があったりと19世紀らしさも漂う。店内は10席ほどとこじんまりとしているが、世界観に満たされている。

 

若い女性がひたすら店内や食べ物の写真を撮っている。雰囲気に合わせた写真を撮るために、レースを多用した懐古趣味的な服でお洒落してくる女性もいる。そりゃ、気分が盛り上がるだろうな。

 

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植物に溢れているのは好みだ。難点はピンクの内装に花だらけとなると、若い女性が大勢押しかけ、おっさんは空間の異物になってしまう。店の片隅の席に目立たないように座ったつもりだが、こちらにカメラを向けていると、おっさんが写ってしまい申し訳無く思う。

 

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絨毯も可愛らしい。

 

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ホームページから拝借した写真はピンク色で食用花が豊富に入ったインパクトのあるカレー。ピンクはビーツによるものらしい。実際に頼んでみると肉眼だと茶色いレッドカレーに見える。暖色の強い照明のせいなのか、普段出しているカレーはそんなにピンクではないのか。自然光の入る窓側の席で食べた方が良いのかもしれない。

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カフェでカレーを主力にしていると、作り置きできるし、原価率も低いし商売を優先にした安易なメニューに見えてしまう。本当に店のコンセプトに合った拘りの品なのかと疑問に思う場合が多いし、わざわざ外食してまで食べたい味ではないことも多い。

その点、この店のカレーは安易さに流されたカレーではなく、このカレーを食べてみたさに店に来るような工夫がされている。味もタイカレーベースで辛く、ココナッツミルクの味もして美味しかった。花弁は特に味があるわけではないが、苦味もクセもなくサラダのように食べられる。

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(ホームページから拝借)

そのほかにも食用花が散りばめられたクレープやチキンサンドなど見た目に美しい料理がたくさん。iPhoneで店内を撮るとピンクが霞んでしまう。暖色の照明だと華やかな花々の色が綺麗に見えない。照明を白色に明るくしてしまっても良いのではないか。

 

カフェラテは陶器のカップにラテアートで飾られて出てくるかと思ったが、持ち帰り用の紙コップだった。これは少し残念。花模様のラテアートが見たかったな。

 

店長夫婦の拘りと世界観が盛り込まれたこんな店は是非、もっと増えて欲しいし頑張ってほしい。

 

ノーモア、タピオカ。

ノーモア、整体院。

ノーモア、美容室。

ノーモア、フランチャイズ

 

で、だ。高円寺に多肉植物・サボテンカフェが出来ても良くないか。何故ないのだろうか。

 

蛇足。

群馬県高崎市の「介護付き高齢者スナック Go To Heaven」なんて75歳以上の男性に生き甲斐を提供して賑わっているらしい。安定して常連が通ってくれるのだろうな。パクるにしろ、タピオカ以外にもっとあるでしょうよ。

今までにない「魚」+「多肉植物」の景色を求めて

金魚には可哀想なことをした。水槽が立ち上がる間も無く投入され、フィルターの生物濾過も不十分な中で2週間ほどしておそらくアンモニア中毒で死んでしまった。水を汚しやすい大食漢の金魚は小さな水槽ではなかなか難しいようだ。

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そこでビオトープのような無加温、CO2無添加の水槽として再生させることにした。

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まずは2匹の緋メダカに玄関先の睡蓮鉢から引っ越してきてもらった。

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そして水槽の主役は緋泥鰌。ドジョウが主役なのだからまあ、質素というか地味というか、カワイイもんだ。水槽の底の餌の食べ残しを食べてくれる。

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そして食べ残しも苔も食べてくれるヤマトヌマエビ3匹。

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常に何かを口に運んでいて、かつ縦横無尽に泳ぎ回る。水草の上に乗っかるのも可愛らしい。案外、観賞魚以上に観ていて飽きない名脇役

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そして水槽のガラス壁面の掃除をしてくれるレッドラムズホーン2匹。コケ対策の生物兵器とされている貝で冬の低温でも生きられる。


そんなわけでメダカのような環境負荷の小さな魚と残飯掃除やコケ掃除のできる魚や貝で構成してみた。なんだか子供達も金魚よりも小さな蝦や泥鰌を眺めている方が楽しそうなのだよな。


まずはブクブク、つまり投げ込みフィルターが見栄えが悪いので陶器のカバーを作ってその中に隠したい。

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さらには上記写真で背景に多肉植物が見えているように水槽の背後に借景として仙人掌や多肉植物を林立させられるような植木鉢を作りたい。真横から見たら仙人掌の森を泳いでいるような視覚効果を狙いたい。

近景、遠景の二段式の幅40cm、厚み10cmの長方形の鉢を作ってみよう。


樹形の個性的な「仙人掌」や「多肉植物」と「魚」は普通ならば両立しない組み合わせだ。その予想外な組み合わせを楽しめるようにしてみたい。

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もっともっと作り込む余地を感じる。「水槽陶芸」は一つの可能性のあるジャンル。


最近はなんでもいいから、「これをしたい」を掻き集めている。さもないと仕事のスイッチが切れてしまうから。見方によってはこれぞ理想的な趣味の役割だ。



親の血も騒ぐ3D プリンターで作るミニ四駆教室

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東急ハンズで小学生1年生から参加できる3Dプリンターで作るミニ四駆体験教室に参加してみた。3時間で4500円、参加費は安くはないが、1回の参加者は3名までなので店側も儲けは出ないだろう。一人でも好きな子供を増やすための啓蒙活動か。

 

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事前にパーツデータ化された部品をソフト上で選択していくお手軽設計なのだが、パソコンを触るのが初めての息子には未知の領域。画面上で拡大したり回転させたりするだけでも楽しい様子。

 

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モデリングソフトで作成したボディ部分を選択して3Dプリンターに読み込ませる。1レイヤーは0.4mm、密度20mm3。この3Dプリンターでは最小1レイヤー0.15mmまで細かくできるらしいがそうなると数時間はかかってしまう。今回は体験ということで最大スピード設定にした。

 

 

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それでも1時間ぐらい出力に時間がかかるので、その間にミニ四駆を組み立てる。ニッパーやペンチ、ドライバーが用意されていて手軽。

 

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3Dプリンターは白のABS樹脂が使われる。1ロールで5000円ぐらいするとのことなので、さほど精度の高くない3Dプリンターでも作品を作るのはそれなりにお金がかかる。

 

プリンターヘッドの動きを見ているのは楽しい。まさに縦横無尽な動き方。

 

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疎な部分が支えとして敢えて作られる。これは支えのようなもので、完成後にバリバリと剥がすことになる。支えを出力しなければ作成速度は上がるが歪んだり倒れたりするリスクも上がるのでそのバランスが設計センスなのだろう。

 

 

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3D プリンターから外したところ。

 

3D プリンターの出現によって工業製品の生産サイクルがとても早くなりなおかつデザイン性が向上したらしい。かつては工業デザイナーのデザイン画を元に型制作師が木型を作ったのだが、細かい修正のためのやりとりが時間も金もかかったし、デザイナーが納得いくまで細部にこだわることは難しかった。しかし3Dプリンターによってデザイナーが細部までこだわりつつも微調整を繰り返すことが容易になったそうだ。

 

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完成。オリジナルのボディを既製品シャーシに取り付けられた。この後、家に帰ってペンで子供達が着色した。

 

高円寺には一昨年までミニ四駆バーがあったのだが閉店してしまった。こうなったら自宅でコースを手作りしないといけないのか。そういえば小学生の頃、2レーンのコースを段ボールで作ったっけ。昔のミニ四駆愛が少しばかり復活するかもしれない。

 

 

3Dプリンターで作陶するのも普通になっていくかもしれない。1軸の轆轤では作れない複雑な形の陶器を作れるようになるのだろう。素晴らしいような、つまらないような。

 

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(zbrushjapanサイトから拝借)

超絶技巧のフィギュアを見かけるようになったが、これもなんとzbrushというデジタルスカルプチュアソフトで作り込み、3D プリンターで出力したものだという。ソフト上では拡大して細部を作り込んだり、テクスチャーを実装して素材感を変えたり、部品を同寸法で複製してつけたりできる。粘土の乾き具合に悩まされる必要もなければ、凹ませたり脹らませたりも自在。重力や強度を比較的気にせずに細かい造形ができる。

ソフトも高精度3Dプリンターも高価だけど、デジタルデータなので複製もできてしまう。率直なところ、なんだか、チートではないかと思ってしまった。技術革新についていけない旧世代のリアクションだ。

 

 

 

豆鹿頭骨鉢の仕上げと乾燥、団子虫鉢仕上げ

 

雨の日の作陶。

 

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石膏型抜きに失敗しかけたものをなんとか復旧。そして右側のものは手で目の周りを壊してみたり。ううむ、余計なことをしたか。

 

左右ともに同寸法のものだが半乾燥したものと未乾燥のもので露骨に寸法が異なる。収縮率は10%を超えていると思われる。

 

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この豆鹿頭骨、まだ、金ラスター釉以外に満足のいく釉掛け作品を生み出せていない。

トルコ青結晶釉を掛けて焼くか。

一号失透釉に鬼板で縁取りをして還元焼成に回すか。

先生曰く困った時のマグネシアマットでいくか。

 

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団子虫鉢も無事に乾燥が進んでいる様子。

 

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口の下と腹に開口部があり、そこに多肉植物を植えつけられるようになっている。

 

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実際の団子虫よりも脚を太く誇張表現している。何かを求めるように脚を空に伸ばした状態。丸まっていた団子虫が体を開く刹那に見せる動きを表現したかった。

 もっと何十時間もかけて細部まで精密に作り込んでみたいけれども、鉢としての強度がなくなるし、釉掛けするとディテールが埋まってしまう。植木鉢は日照や外気温に応じて室内に取り込んだり、出したりする。ささいな衝撃で破損するようでは実用性にかけるし細心の注意が必要だと気疲れする。2〜3時間で作れるここらへんが時間対効果の良い区切りだろうか。

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白い仙人掌を腹から生やしたい。

 

それにしても団子虫はやはり、甲殻類だ。

 

これまでのものとは雰囲気を変えてマンガン窯変釉で外殻をメタリックに仕上げ、脚にワンポイントで明るい色をつけたい。

 

 

 

珈琲、甘味、新緑の純喫茶フェスティバル-こころみカフェ

来られたのは3ヶ月ぶりか。高円寺のお気に入り隠れ西洋古民家カフェ「こころみ」。


そういえば、ここでは月終わりに蕎麦の会を催しているのだった。前回は常陸秋蕎麦や福井の蕎麦の食べ比べだったらしい。

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今週末は「純喫茶フェスティバル」なるものが催されており、各地の純喫茶が集まって珈琲を淹れてくれ、飲み比べができるらしい。


で、来てみた。

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日本各地の純喫茶店が集まって「こころみ」を貸し切っての純喫茶祭。

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阿佐ヶ谷から「ブネイコーヒー」、西千葉から「純喫茶シノダ」、東久留米から「EAST AND WHITE」、梅島から「maruca coffee」、高円寺から「momomo」などなど。

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5枚綴り1000円のチケットを買い、飲み比べられる。

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参加して経年変化したポットがカッコいい。ネルドリップ。複数店舗の拘り珈琲を飲み比べられるのが嬉しい。

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珈琲以外にも恵比寿の「つなし」という和菓子屋さんや高円寺「momomo」のケーキ類も頂けるとのこと。

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美味しそう。目移りしてしまう。なんてフォトジェニック。

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焼印の和柄が好み。打ち出の小槌、藤、稲穂、桜、梅。つぶ餡、胡麻餡のもなか。お土産に買って帰った。

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お二階の和室ではケーキやタマゴサンドが売られていた。ラムレーズンバターサンドケーキなんて罪深いケーキ、初めてみた。抗うことができなかった。そして罪深い味だった。

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ラムレーズンを息子に食べさせるわけにもいかず、息子にも買う羽目に。息子は完熟バナナのアーモンドケーキを選んだ。味見させてくれず。

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キウイ酢ソーダ、赤紫蘇シロップソーダも気になる。

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新緑の時期、「こころみ」の特等席。逆光で輝く大きな葡萄の葉と日々、大きくなっていく実。

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美しい緑を楽しみながら、丁寧に淹れられた拘り珈琲を飲み、美味しい和菓子や洋菓子を頂く。なんて素晴らしい企画。またやってほしい。

複数の喫茶店を集めるのは大変だろうから、喫茶を二階で利用できるようにしてほしい。「こころみ」のデザートも美味しい。

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さて、多肉植物、仙人掌好きに朗報。庭には仙人掌が大きな蕾をつけている。

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ドラゴンフルーツに近い種類か。火を吐くドラゴンのような真紅の蕾。

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咲いたら桃色が出てくるのか。


もっと頻繁にくるべきだな、「こころみ」。

純喫茶フェスティバルは6/9まで。


「ポツンと一軒家」の弓削さんを見て、鬱になるのが怖い。

たまたま、「ポツンと一軒家」という番組の弓削さんという方が取り上げられている回を見た。

 

カメラマンだった弓削さんは26歳で独立して撮影スタジオを立ち上げた。以降、事業は順調に伸び、撮影は雇ったカメラマンに任せるようになり経営に専念。しかし現場の一線から退いて暇になり鬱を発症してしまったという。現在46歳、7年前に結婚した奥さんは千葉に住んで家業に従事、弓削さんとは週末婚の生活形態だそうだ。お子さんはいらっしゃらない。2017年に愛媛の山中に500万円で広大な土地を買い、そこで全て一人で開墾しガレージ、本宅、社宅を建てようとしている。愛媛に移って家づくりに没頭し始めてからは鬱が治ったそうだ。

 

「朝、会社に来てやることがない。」鬱になった経緯を語ってらした。もちろん、経理処理だの採用だのなんだの事業主としてやるべき雑務はみつければ沢山あってそれなりに時間は速く過ぎていくのだろうがそれでも「暇」と感じる感覚が私にはとても共感できる。私は弓削さんと違って、独立して何人も雇うまで事業を拡大した成功者でもないし、山中の土地を買って一から独学で家を全て一人で作るような行動力もない。しかしそれを遥かに矮小化した規模で、自分も同じように「鬱」になりうる危険があると感じている。

 

組織の立て直しや大きな山場をすぎて権限移譲もある程度した後はあまり細かく口出しもしたくない。雑務は積みあがって忙しいはずなのに、意識の上では「暇」になる。そして虚無感と既視感と倦怠感に襲われる。なんとなく「憂鬱」の暗雲が直接見えないがもう曲がり角の先まで迫ってきているのではないかと不安になることがある。

 

弓削さんは描かれかたから誤解している一部の人が言うようにアーリーリタイアの「成功者の道楽」として山を開いて一人で家作りをしているのではないように思う。あれだけの能力と行動力を持った人の鬱を癒すには山中で家を全て一人で手作りするぐらいの熱量を吸収できる対象と希望が必要だったのだと思う。一人、黙々と失敗を繰り返しながら家作りに取り組むのは「鬱」から逃れる為の必死さだと私には思えた。間違っても、誰かの助けを借りて効率的に早く家を完成させることは目的ではない。

 

私にも私の身の丈に合った「山中の土地を買って全て家を手作りする」ような虚無感や倦怠感を振り払える何かが必要なのだと感じる。

 

 当番組のネットの反応を読んでいたら、弓削さんの成功をやっかむような発言も多かった。上級国民だの勝ち組だの。本人にはそんな驕りはないし、生きる喜びを何かに見出して鬱から抜け出すのは相当に苦しかったのではないか。客観的に見たら、何を不満に思う要素があるんだ、そんなに恵まれた状況にいるのに、と思われるかもしれない。しかし当の本人は他の人にない何を持っていたとしても、苦しいものは苦しい。。心身を崩すほどに。

 

ここ数週間、私は頚椎から肩、腕の神経がやられて疼痛というのが続いていて困っている。仕事への集中が妨げられたり、夜中に起きたり、もだえそうになるほど痛む時がある。頸肩腕症候群と診断された。物理的なダメージの場合もあれば、精神的な理由が混ざっている場合もあるらしい。


Wikiによると「近年では、数年以上の療養を余儀なくされる重症罹患者の存在もあり、中枢神経系を介して症状が全身に広がり、 慢性疲労や疼痛、筋力低下が引き起こさせるのではないかと考えられるため、脳からの神経伝達の異常によって生じる筋疾患とそれに付随する全身症状を診断する神経内科の方が専門性が強いと思われる。 つまり、過度の脳疲労の蓄積によって生じる病気とも考えられる。」などと書かれていて不安が募る。


私の症例は単なる物理的損傷だと良いのだがな。私は自分自身を比較的単純につくられていて悪環境にも強い人間だと思っている。そうであって欲しい。ここ最近の鬱鬱とした悩みとは関係がないと良い。私としてはこの疼痛から解放されたくてたまらない。昨今の悩みごとが疼痛の心理的間接要因だとしたら職場の同僚にも相談したら良いのかとも思ったが何が不満なのか、苦しい振りした自慢話かと誤解されそうで悩みを聞いてもらうことは躊躇われてしまう。自分の昨今の置かれている状況に立つと、レベルは全く違うけれども私には弓削さんがあれこれを自慢しているとは思えない。

 

 

 自分のなかでの結論は唯識論と健康第一。


今、得ているもの、消費しているものの半分で今以上の充実感や幸福感を得られるように自らの感受性や価値観を育てていくのが目指すべき理想なのではないか。唯識論的志向だ。

あと、健康第一。平凡だけれどもとても大切なことを自分はよくわかっていなかった。