通常は往復葉書で入所予約をしないといけないが、春秋に行われる無料公開の日だということで初めて御所を訪ねた。
右近の桜が丁度よく咲いていた。
簡素だが絞り込まれた上等なもんが置いてある。こんな引き手の装飾は観たことがない。
一番記憶に残ったのがこの橋桁。過剰ともいえるほどの反りのある橋を軽く感じさせるのが脇の装飾。華美になりすぎないシンプルさも保たれている。
京都御所は護衛と保安の観点からか遮蔽物の無い砂利地の空間が多い。覗けた御殿は直線で構成された空間に襖絵があるぐらいで入れ物としての建物の中には何も調度品が無い。生活臭が一切無い。主を失って久しい遺跡というか、まるで博物館の骨格標本展示を眺めていくかのような感覚。観光客の喋り声や踏みしめる足音やうるさいぐらいなのに、目の前の建物から感じるのは全くの沈黙。
住人や生物の息吹や喧騒があってこその御殿。建物も庭園も素晴らしいだけにその静けさがなんとも寂しい。