喪失感と人生折り返し

地上波で再放映される「もののけ姫」を観た。

 
高校生の頃、登校途中に大きな駅で降り、授業をサボって朝一番の上映回で観た。観客は老人ばかりで、上映後に背後の老婦人が、「生きることって難しいわね」という不可解な感想を述べてたのを覚えている。もやもやとスッキリとしない結末の映画だった。
 
20年近く経って観た「もののけ姫」は相変わらずもやもやとした結末だと感じた。そして喪失感が強い。生命を与え奪う神が人に殺されてしまうその脆さが哀しい。乙事主の「我が一族を見ろ。みんな小さくバカになりつつある。このままではわしらはただの肉として人間に狩られるようになっていくだろう」という先見はほぼ全ての鳥獣に当てはまるようになった。不可逆で喪失していく物語に思えた。それでも生きろ、と。

 

 

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夜、R座読書房で戦後の写真集を眺めた。この傷痍兵はどのように人生を閉じたのか。この紙芝居に目を輝かせる少女はどんな大人になり、どんな人生を送ったのか。写真に写る建物も人もほぼ全てがもう存在していない。

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自分を振り返っても、これまで得てきたものをこれからは失っていく人生が始まっていくように思う。父母を、自分の若さと健康と可能性を、子供の幼さと可愛らしさを。これからの未来への期待よりも失っていくモノへの喪失感や郷愁が上回っていくような気がする。半生を折り返して失っていく人生が始まっていく中で、新たに得ていく価値のあるものを見出していくのは難儀な事。

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まあ、こんなものもミッドライフクライシスというアラフォーの中二病と言われればそれまでか。人生にも悩みにもそんな大層な意味は無いと達観すればそれまでのものなのかもしれない。

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