日本の近代化の時代に東武鉄道で興し、大富豪となった根津氏が収集した美術工芸品。
大層値打ちのありそうなものが並んでいるな、という印象。
期待をよく裏切って愉しませてくれたのが起伏に富んだ広大な日本庭園。あちらこちらに石塔や石仏、石像が景色の中に溶け込んでいて圧巻。
「根津めー羨ましい趣味と財力をしてやがるー」と不遜なことを心内で喜びながら呟いた。
この日拝んだ一番の美術品はこれ。
この光背に根張っている苔の見事なことよ。
湿度管理された展示室の中の死蔵された過去の美術品よりも、今も進行形で日々雨風に晒され、風化し、苔を纏う姿の方が美しくないだろうか。動態展示なわけだ、これは。
輪郭が繊細で凛とした唇や目の造詣が素晴らしい。素晴らしいものが経年変化に晒されている。