仁寺洞は再開発が進む最新流行スポットだそうだ。王宮、ギャラリー街、韓国村という古民家を改装したお洒落なカフェやレストランが密集した地区が相互に徒歩圏にあるので週末を潰すのに至極快適だった。
サンジキルという雑貨店が入った商業施設が大抵のガイドブックには載っているここ数年の流行スポットらしい。ガイドブックの写真からは気づかなかったのだが、廊下が5階まで螺旋状になっており、しかも廊下に面した店舗は全て全面ガラスなので歩きながら興味のある店を見つけたら入ることができ、右往左往せずに全ての店を見られるのでとても便利な構造と言える。
1階の片隅にあるアンティーク風なデザイン画を印刷したグッズを売る店へ入った。特に韓国らしさがあるわけではないのだけれども、昆虫、鹿、サボテン、犬を辞書の頁に重ねた印刷物が私の好みのど真中だったので買ってしまった。
ネットの画像をコラージュしている安易なものではなく、わざわざ店主が被写体の写真を撮っているのだという。他に数人、デザイナーがいるとのこと。印刷も近く見ても粗がない品質。
最初は冷やかし客と思ったのか、店主は鈍い反応しかみせなかった。私が見本帳から、これとこれを見せてくれ、と頼むと少し売る気が出てきたようだ。
「3枚買ったら1枚サービスする」とディスカウントショップの情報のようなことを言い出した。
「虫が好きなんだよね」と店主が言う。私も好きだ、と返して陶器で虫の植木鉢を作っていると伝えスマホに保存している写真を見せた。
「おー 売ってるのか?」
「売ってない?売りなよ。売れるぞ」
「何、趣味の作品だし数が作れないって?そうか、しゃあないな」
「インスタ登録したらうちの最新の商品情報を見れるぞ」
「ああ、写真も撮ってくれていいぞ」
「今度、カンナムに移転するんだ。3倍の広さになるんだ」
「俺もサボテンが好きでな。これを見てくれ」
「2年でこんなに育ったんだ。すごいだろう。」
「ユーフォルビアは水が好きっぽくて水抜き穴がなくても問題ないな」
「ここにはそんなにないけど、サボテンをモチーフにしたやつも実はたくさんあるんだ」
話が止まらなくなった。このおっちゃんとかなり気が合いそうな気がする。最初の朴訥な印象は単なる客あしらいの無愛想に過ぎず、いざ私の興味関心に共通点があるとみるや饒舌になった。思った以上に英語が流暢だしユーフォルビアだとかエケベリアだとか多肉植物の種類もわかる。もっと仲良くなって日韓多肉植物陶器交流したい。
サボテンや多肉植物のサンプル写真を送れば、デザインに落としこんで背景を辞書風に加工して制作してくれるそうな。受注制作も多いとのこと。
おっちゃんと話したら、早く帰国して作陶したくなった。こういう、良い刺激を受けられる友人が高円寺に欲しい。
通仁カゲという5階までギャラリーの入っている建物があり、1階の陶器店が素晴らしかった。先端の作家ものの陶器が並ぶ。白磁、青磁、枯れた風合い、歪みや割れの偶然を愛でるもの、やはり日本人の美意識との近さを感じる。写真を撮ることが憚られたがアンティークの皿の高台に薄く挽いた白磁を重ねた陶器が目を惹いた。
巨大な筆を含めありとあらゆる書道具が売られる専門店もあった。
ムキムキ韓流イケメンが巨大な筆を肩に乗せてイキっている巨大広告なんかもあって、さすが韓国。韓流であれこれ解決するのだ、きっと。
周辺にはギャラリーや作家モノの作品を売る雑貨屋が多くて街歩きが楽しかった。
木製の幾何学模様の部品がクルクルと回っているのだが、ぼうっと眺めていられる。
徒歩数分の距離に益善洞と呼ばれる流行スポットがある。韓国村という古民家街で家屋を改修してお洒落なカフェ、レストラン、スイーツ屋、バーに転用している。
こちらのカフェ「トゥルアン」はカフェソウルという斎藤工出演の日韓合作映画のロケ地になったそうで、日本人の観光客も多いのだそうだ。靴を脱いで寛ぐ小上がりもある。
柿の葉茶に干柿の中にクルミを詰めたお菓子。
なかなか素朴で美味しい。
本当に街並みは洗練されたカフェやレストランだらけで感心した。もっと写真を撮っていたかと思ったが全然撮っていなかった。
私は若い女子やカップルだらけのカフェで食べるよりも美味い韓国大衆料理が食べたい。益善洞を出た小さな食堂に入った。
蛸のビビンバを頼んだ。
混ぜて、混ぜて。辛くて美味しい。
芸能人が集まるというシンサ、カロスキルよりもインサドンの方が私の好みかもしれない。
仁寺洞
昌慶宮
昌徳宮
サムジキル デパート
通仁カゲ ギャラリー店 工芸
益善洞 トゥルアン 伝統家屋のオンドルカフェ