工房で普通の還元ではなく、還元落とし焼成を実験的に行うらしい。冷却還元とも炭化焼成とも呼ばれ、一定温度まで冷ます間も窯の中を還元状態を維持して釉薬表面や焼締部分に炭素を定着させる焼成方法だそうだ。
土の中では最も鉄分の多い赤土4号を用いて器を作った。
釉薬は
左下の漏斗鉢に一号透明釉。最も基礎的な釉薬で還元落としの効果を見てみたい。
左上の鎬鉢も一号透明釉。こちらは鬼板がどう表出するのかを見てみたい。
真ん中には緑青銅釉。酸化焼成だと緑色に発色する銅釉だが、還元だと青系に発色するらしい。鮮やかな青ではなく、深く滋味のある青がひょっとしたら出てくれるのではないかと期待している。
右下にはしぶ柿釉。焦茶色系統で面白い仕上がりになればと期待。
右上にはトルコ青釉。釉の対流、ムラ、流れが出てくれることを期待。
全てが実験となってしまった。期待の窯出し結果は以下の通り。
緑青銅釉が釉薬見本帳だと青系に発色するとあったのだが、何故か伊羅保のような黄色がムラになって発色。もっと厚掛けすると青が出るのだろうか。
殆ど焼締なのだが鎬の中にだけ緑青銅釉。赤が出たり黄色が出たり。焼締表面の炭化効果は殆ど確認できず。
マグネシヤ釉をスポンジで塗ったもの。もっと弱く発色して欲しかったがこちらは薄くなったのに白がしっかりと出ている。
炭化効果が最も期待された一号透明釉薬の薄掛けだが燻したような炭化効果は現れず。
同じく一号透明釉薬を薄いドブ漬けしたものだが、こちらは炭化効果が出て陽にかざすと金属光沢が見える。ドブ漬けした上で穴から垂れて厚く掛かった部分が白く発色している。この僅かな厚みの差を把握して薄掛けできるようにならないといけないわけか。
渋柿釉は霞んだ灰色に発色。全くもって予測が立てにくい。鉄釉全般がこのような傾向になるのだろうか。もはや酸化でも還元でもない第3の色見本が必要な還元落とし。
そして理解に苦しむのだが、最も還元落とし特有の燻し効果が現れたのがトルコ青釉のドブ漬け。青銅釉なのに鉄分の燻し効果が最も出た。
予想の斜め下の結果になった還元落とし焼成。工房の他の人達も若干不本意な結果だったようで、また再度挑戦するつもりだという。私も再実験したい。