- 個室で迎える静かでひんやりとした朝と熱々の温泉が最高に気持ちが良い。
- 大都会にいるとこれが良い、こうあるべきとのまやかしに惑わされがち
- もっと対人的には謙虚に、かつ自分自身には我儘に生活することを心がけたい。我儘とは自分の好みに忠実になるという意味。
- 田舎にも多様な生き方がありそれを良しとしている
- 外に出ると、しかも遠出するほど新しいものが見つかる
- 疲弊回復には休息と旅行が自分にはとても効く
- 放牧してくれた理解のある妻に感謝
6時半に目が覚める。
徒歩数分の「新湯」という温泉銭湯で体を温める。昨日の菅野温泉42℃よりも湯温が高く目が覚める44℃の熱さ。マニアの中で人気の旦過の湯は47℃らしい。狂っている。もはや低温やけどの領域。
ゲストハウスに戻ってきたら雨が降り始めてしまった。自転車で走り回るのは昨日に済ませていて良かった。
2日目最初の観光として「日本電産サンキョーオルゴール記念館すわのね」へ。名前が長い。9時開館だがオルゴール造り体験は10時からとのこと。雨が止むのを待って遅く出て良かった。
自分で曲を選び組み立てたオルゴール付きのフォトフレームを伯母と妻への祝いに贈ろうかと思っている。
700曲という選択肢の中から楽曲を選ぶ。幸いなことに伯母への選曲は既に決まっている。合唱団を長年指導しバチカンのローマ教皇の前でも歌った伯母には私の結婚式でも歌ってくださったシューベルトの「アヴェマリア」。もう迷う要素がなくて楽だ。
妻は何が好きなのか全くわからない。King Gnuの「白日」やYOASOBIの「夜を駆ける」など最近の曲までカバーしている。散々悩んだ挙句、米津玄師の「パプリカ」にした。オリンピックが開催された年を記念して。曲も懐かい郷愁を誘う旋律でオルゴールの音色に合う。
一通り構造の説明をしていただく。
ドラムと櫛歯は唯一無二の組合せなのだが、花のワルツのドラムにおじいさんの古時計の櫛歯を組み合わせて鳴らすなんてこともしてくれたのだが、案外これも良い曲。
ここからは自分でハンマーで叩いたりバネを巻き取ったり指示に従って組み立てていく。
音色を奏でる櫛歯をドラムにどれだけ近づけるのかで音色がかなり変わってくる。平行でないと高音が強くなったり低音が強くなったり違いが出る。曲の速さもガバナーの調整具合によって変わる。最初は指導員に櫛歯に近すぎる、歯が左に寄っている、低音に比べて高音が強いなどと指摘を受けてやり直していた。勝手がわかってきて最終的にはアヴェマリアを高音を軽やかに少しゆっくり目に調整し、パプリカは全体的に強め、速めにしてみた。
プロではない私が作ったものは私の個性が反映されているとも言える。手作りの温かみとして勘弁してもらおう。18歯のオルゴールは手作り体験用に採用しているオルゴールの分類としてはかなり簡素なもので、速さの調整にはかなりの制約があるそうだ。
展示室にはヨーロッパの様々な本格的な自動演奏機が並び、いくつかを実際に演奏してくださった。ディスク式オルゴールのジュークボックスが素晴らしかった。芸術と機械科学の結晶のようなシロモノ。オートマータという響きが良い。ダークマターとは関係ないけれども。ちなみにオルゴールはオルガンから派生させた和製英語なんだそうだ。
受付や売店のお姉さんがどなたもとても美人でなんだかわかりやすい容姿採用だなと思った。後から若いカップルが来て、男の方がお姉さんを見た際に目を見開き、その瞬間を隣の彼女が見咎めた表情をしていた。後で文句を言われるのだろうか。幸運を祈る。
制作体験もでき、文化財級の自動演奏機の演奏を次々と聞かせてくれ、予想以上に充実のオルゴール館だった。
下諏訪から上諏訪へ電車で移動して荷物をロッカーに預けて2日目の散策開始。
まずは手長神社へ参拝してみる。
左手の長い廊下の天井に収められている太い綱は御柱祭に用いるものだろうか。
残念ながら不在とのことで御朱印は頂けなかった。書き置きはあるのだがあまり貼るのは好みではない。
摂社末社が多く並ぶのだが、四方に御柱が立つのは諏訪大社に連なるこの地方の神社ならでは。
暇潰しにあれこれ調べていると手長神社は諏訪大社上社の末社だそう。上社は諏訪氏、下社は金刺氏族によって祀られていたがやがてそれぞれ武士化し14〜15世紀には上社と下社で激しく対立し武力衝突していたらしい。下社の金刺興春が上社の内部分裂に乗じて戦いを仕掛けるも形勢が逆転し金刺興春が返り討たれただけでなく下社を攻め落とされ社殿も焼かれて焼け野原となったそうだ。そんな歴史を聞くと諏訪大社の歴史も権力と富の占有のための一部氏族による政治宗教の独占と利用でしかない。人間の歴史だからと言われるとその通りなのだろうけれども神への祈りだの穢れを祓うだの言われてお金を納めるのもその是非がよくわからなくなる。祈祷料や賽銭箱を回収する貴方達も既得権益に胡座をかいた人間に過ぎないのではないか、と。
諏訪の四社は一つ括りにすべきでないような対立してきた上社、下社の二勢力を合わせたものだし、歴史は案外と血生臭く下世話なものに思えてしまう。それでも神殿と古木は素晴らしい。
山を降り評判の高い「古畑」を訪ねてみたら休日。そこで隣の「おび川」で4500円の鰻重竹を注文する。梅よりも上を頼んだことなどこれまでないかもしれない。朝御飯を抜いたから値段的には変わらないなどと自分に言い訳をする。
このツヤと照り。食べてる間、いや、人生も悪くないと思う。
「竹」にもなると下段にも鰻が入る二層式なのですね。初めて見る世界。シンガポールのモスバーガーに鰻ライスバーガーというものがあったけれどもあれはご飯が鰻を挟んでいた。ご飯が鰻に挟まれている状態はどう表現すべきなのか。
残念ながら2日目は何かと不発なようで酒蔵巡りはどこも試飲や蔵見学を休止中とのこと。蔵に来た意味がなくなってしまった。
店の人も申し訳無さそうに対応してくださるが本当に気の毒なのは酒蔵さんだ。開催されていれば私も1800円の飲み比べ手形のようなものを買って飲み歩いただろうし、どれか気に入ったものの4合瓶を少なくとも買って帰ったと思う。しかし試飲できずどれが好みかもわからなかったので買わずに帰ってしまった。悪いのはコロナ。
横笛の写真を撮り忘れた。真澄も訪れたが真澄は比較的東京でも流通しているお酒なので私の関心はどちらかというと麗人、本金、舞姫。
片倉館へ。三代に渡って日本の近代養蚕業の発展に関わった片倉家。シルクエンペラーと呼ばれたらしい。あの富岡製糸工場も後に二代目が買収している。今年は我が家でも蚕を繭になるまで育てたので少しばかり片倉館に愛着が湧く。しかし蚕に関する展示などはほとんど無かった。
二代目片倉兼太郎が欧州視察後に当地の温泉厚生施設に感銘を受けて温泉、社交、娯楽、文化向上のために建てたのがこの片倉館だという。
欄間や建具の装飾を見ても案外、簡素で贅を尽くしているとは言い難い内装だったのだが自分の邸宅ではなく寄贈した市民温泉文化センターだと思うと十分に豪華なのかもしれない。ウリは今でも入れる千人風呂だが大きな温泉旅館ホテルの大浴場に慣れた現代人には全く驚くような大きさでもないが、100年近く前の昭和3年当時では「千人風呂」と興奮気味に名付けるほど画期的だったのだろう。
栄華を誇った片倉財閥も戦後には衰退して片倉工業として存続しているものの年商400億円の中小企業となってしまっている。養蚕事業からは撤退していて何故か埼玉のコクーンシティなどの不動産業なんかも手がけていたり。コクーン=繭と名付けたところに祖業への愛着の片鱗が見える。富岡製糸場の保全や片倉館の維持など歴史文化遺産をしっかりと残す姿勢に敬意を払いたい。
小腹が減ったのでその道の並びにある「くらすわ」へ。新しい施設で1階にベーカリーや工芸飲食物産。ベーカリーもお洒落な流行りのブランジェリーといったメニューでしかも珈琲250円、ホットドックも350円とリーズナブル。冷蔵庫に冷えた地ビールや地酒を1階か諏訪湖の眺められる屋上テラスに持っていって食べられる。
曇り空だが風があって気持ちが良い。
私の好きなオラホビールもあったがここは先ほど何も買わずに後にしてしまった麗人酒造のビールを選んだ。麗人酒造の醸したビールはアメリカで2年に1度開催される世界で最もエントリー数の多いWorld Beer Cupでブロンドエール部門で銅賞に輝いたそうだ。しかも2018年度は日本からはCOEDOとこの2つしか入賞していないので実はかなりの掘り出し地ビールが上諏訪の五日本酒蔵めぐりの酒蔵「麗人」で醸されているようだ。飲んだだけでその違いがわかるほど私の舌は肥えていないが普通に美味しいアタリのブロンドビールだった。
アテにはメンチカツ、チーズレーズン胡桃サンドを選んだ。
ビールにより合うのはメンチカツかね。
駅までのお供にさらに350円のソフトクリームを買って食べ歩いたのだが、牛乳の味が濃厚で美味しかった。「くらすわ」は家族で上諏訪に来た際にまた寄りたい。
ツルヤスーパーが駅前にあることを上諏訪駅で降りた時点で確認していたので土産物は全てここで買うつもりでいた。温泉饅頭なんかよりも長野県民が普段買いする信州生蕎麦や胡桃ダレ、炊き込みご飯の素やドライフルーツの方が喜ばれる。
愛媛県産不知火
広島瀬戸田産しらぬひ
瀬戸田産みかん
別の商品として出す意味はありますかなどと聞いたら怒られるんだろうな。「食べてみな、全然違うから!」
ほかにもブラッドオレンジや林檎各種などたくさん種類がある。
冒険した品としては西尾抹茶バタースプレッドとあおさ海苔の瓶を買ってみたがマツヤスーパーのことだから多分美味しい。私はマツヤスーパー商品開発部に並々ならぬ敬意を抱いている。
帰宅後の翌朝、子供たちにパンケーキを焼いて西尾抹茶バターを塗ってあげたのだが案の定、大好評。美味しい。私の中ではりんごバターよりも上。おそらくヨーグルトに少しかけたりしても美味しいはず。マツヤスーパー流石だわ。
上諏訪駅に着いたが1時間に1本の特急あずさ50号まで30分も待ち時間がある。しかしプラットホームの中に足湯があるので全く問題なし。
そうこうして20:30に帰宅。書き留めておきたいことは沢山ある。旅に出ると如何に刺激が沢山得られることか。
今の生活や仕事にどんな不快や理不尽や苦痛があるかを理屈で持って訴えたくなるが、旅に出て美味しいものを食べて疲れて寝たらどうでも良くなる。結局はそんな程度の悩みだったりする。自分をそんなに高等な人間だと思わない方が良い。力を抜いた方が良い仕事、人間関係の構築ができそう。
結局、諏訪で酒蔵巡りして試飲、酒蔵見学は出来なかった。温泉に入りまくれるのは良い。手長神社、足長神社、温泉寺の御朱印も頂いていない。鰻はまた食べたい。諏訪にはまた来ることになりそうだ。
2日目旅程備忘