すべての理不尽を供養したい羊菩薩鉢

5月下旬 造形4時間

こうしてる日々もウクライナでは一般市民が殺されているわけで、それが当たり前の日常になってしまった。

 

私はルーマニアに住んだことがあり隣国ウクライナウクライナ人に一宿一飯の恩を受けたこともあるから親近感から心を痛めている。リビウの彼女はまだリビウにいるのかもわからないし連絡先も知らない。パレスチナで民間人が殺されても無関心なくせに自国の損得勘定、人種差別、都合の良い正義感だろうと中東の人が憤るのも否定しようがない。パレスチナには行ったことがないし知り合いもいないがウクライナにはいる。想像力が及ばない所に気持ちは動かない。勝手なことだ。

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某隣国北の国でも、ヒマラヤの方でも、アフリカでも。様々な国で理不尽に人は殺されてきたし、今も殺されている。

 

東日本大地震では多くの聴覚障害者の方々が警報や地震などの音を聞き取れず避難が遅れて亡くなったなんて話は知らなかった。

秀吉に焼き払われた粉河寺、根切りに遭った武田信勝や多くの戦国武将、平泉の藤原家、義経石巻、数多の鹿、廃鶏。ここ最近は大勢のいきものが理不尽に殺された跡地を巡ることが多かった。

理不尽に殺されたすべてを供養したい気持ちから羊頭の観音菩薩っぽい何かを作りたい衝動に駆られた。
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畜生は悟らないし成仏もしないとも聞く。しかし家畜の供養塔はあるから供養の対象だし仏性はあるのではないかと勝手に思っている。

 

首は長くして体格は擬人化してある。仏の顔は作れる気がしなかったので羊にした。布を纏っているのか、毛皮なのか曖昧にしたい。仏像の印を意図したがキリスト教の聖人のポーズのようにもなった。宗教も曖昧で構わない。

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支えをつけ、立つようにするつもりだ。水平に置いてあるものの写真を回転させた姿を見ると、壁掛けにするのも有りかもしれないとも思う。静謐な雰囲気になりそうだ。中はくり抜いてあるのでエケベリアなんかを葉が正面を向くように植え込んで育てたいと思う。

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衝動に駆られて作る時は速い。4時間ほど没頭して一気呵成に造形が終わった。中をくり抜かないともっと速く作れるのだろうけれども、少し乾いて固くなってからくり抜くと時間がかかる。まだ細かいところをいくらでもいじれるが、敢えてもうこれ以上は触らないことにする。しっかり乾燥させ、素焼きして白い釉薬を掛けて焼こう。

 

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翌週、乾燥加減を確認。脚が適度に乾いて立てるようになった。
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後ろに寄りかかれる台が必要。ここに光輪を嵌めれるようにしようと思うのだが光輪は木に彩色するか、陶器で作るか悩みどころ。

 

6月初旬 作業時間1時間。

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肩を左右ともに撫で肩に修正。さらに下部に水抜き穴をポンスで開け、土台の表面も岩のように荒らす細工を施した。

腰から下だけに鎬を入れて毛並みのようにした。しかし服を着ているようにしたいわけでもない。曖昧にしたい。
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S字。もう少し顎を引いた感じでも良かったかもしれない。もう遅い。
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腕の下に穴を開けてそこから多肉植物を植えられるようにした。土を入れずに一輪挿しのように小さな野花を入れるのでも良い。

 

7月下旬

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素焼きするのに1ヶ月近く窯待ち。印象が少し変わる。
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無事に素焼きできた、と言いたいところだが右の角がかなり下がってしまった。こうなるともうどうしようもない。その歪みも受け入れて愛するしかない。
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マグネシヤマット釉薬を筆塗り。連結部分には塗らないように注意。
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そして油断して小窯の高さを考慮していなかった。手前左側が子窯の天井が一番高いのでギリギリそこならば入ることが判明。危なかった。

 

8月初旬

無事に窯出し。2cm近くも縮んだだろうか。

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顔まわりの釉薬が薄かったとみえて、あまり白く釉が発色しなかった。筆塗りは雑に急いで塗るとこうなる。どこを2度塗りしたのか忘れたのだろう。また釉薬を塗って2度目の本焼成をするかどうか微妙なところ。
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ゼラニウムの花を摘んで差してみた。ちょうど左前脚で花束を抱え持つように見える。
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やはり多肉植物を植え込みたい。小さなロゼッタ型のエケベリアが合うのではなかろうか。
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背中の穴にフックを引っ掛けると壁なんかにも取り付けられる。なんだか壁掛けの方が良いかもな。
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庭の樹にさりげなくぶら下げたり、室内のどこかの壁に掛けたり。立たせるよりも壁にかけたい鉢だ。

 

全ての理不尽の供養に祈りを込めた羊菩薩鉢。技術力が拙過ぎて思い描くものの40%の仕上がりにしかならなかった。それでも造る。技術力を磨いてまた後年造る。