ゴジラ-1.0を観てきた。しかも敬意を表してゴジラ像の立つゴジラスクエアを有する日比谷TOHOシネマズでIMAX版を観てきた。期待は大きかったがその期待を良くも超えてきたように思う。
戦後の瓦礫と化したバラック街、銀座を破壊するゴジラの迫力、逃げたことを後悔しながら再び向き合う主人公の心理描写。映画にはこうあり続けてもらいたいというような映画だった。両隣のおっさんは途中からポップコーンを食べる手も止まり、最後の方になると鼻水啜りながら泣いていた。うん、気持ちはわかる。
映画を見終わった後に、余韻に浸りながらいろんなネット上の批評コメントを読んでいたが重箱の隅をつつくような「ここが物足らなかった」「あの箇所にリアリティが足らなかった」みたいなコメントが案外多かった。
まてまて、ゴジラだぞ。大の大人が大勢で自分を基準にしたガチのコメントをしている超絶クオリティの子供向け怪獣映画であることを大絶賛したい。
最近の肉片が飛び散るような凄惨な戦争シーンに慣れ始めてしまった私たちはリアリティと残虐描写を履き違えてしまっているかもしれない。少しエロティックな男女の恋愛描写もない。複雑な伏線回収やら見たことのないストーリー展開もない。そういうのを物足りなさと感じる人もいるのはわかる。しかしどれもこれも子供に安心して見せられる、子供が楽しめる為の配慮がしっかりなされているということでもある。
ゴジラへの恐怖と、ワクワクと興奮、戦前戦後の空気感や世相への学び、不可能に思えることを克服する爽快感、脇役でもそれぞれの立場や役割で力を合わせるカッコ良さ、いろんなことを子供に見せられる。感受性豊かなうちに子供にこそ見せたい映画のように思う。冬休みに入ったら子供達を連れて観に行きたい。
「ゴジラの放射熱線の後に降った黒い雨覚えてる?実際にも原爆の後には黒い雨が降ってそれを浴びた人は大勢亡くなったんだよ。なぜかというと。。」
「本当にフロンで沈むのかな。調べてみる?」
「米軍はたくさん戦艦とか戦車を持ってたのに助けてくれなかったのはね、冷戦って言葉聞いたことある?あの頃は。。。」
「後ろにプロペラのついた戦闘機は実際にあったんだよ。地震の震に電気の電で震電っていう最新機で映画撮影に使われた実物サイズの模型が福岡で見れるらしいよ」
「ゴジラは何しに上陸しにきたのかな」
いろんなところから子供との話が膨らむ素地がある。
この背中の発光板が放射熱線を放つ前に隆起するメカニカルさとか素敵。
「僕らの七日間戦争」や「ジュラシックパーク」を私が子供の頃に初めて観た時のような興奮を子供達は感じるだろうか。
「情報統制はこの国の御家芸」と繰り返されていたのには笑えた。
ハリウッド版ゴジラが「どうだ、この迫力」とばかりにまるでTレックスのような恐竜ゴジラとお決まりな人間ドラマを散りばめた新ゴジラ映画を世に出してきた。「遅れてごめんね。CGを駆使した大迫力映像技術はめっちゃ勉強になったよ。改めて思うところのゴジラはこれなんだ」と再提示した和魂洋才ゴジラの最高傑作だと思っている。
イギリスやアメリカで実写日本映画興行収入歴代No1に既になっているそうだ。まだまだ伸びるだろう。単純に面白いし、適度にハリウッド臭くない日本らしい目新しさもあるもの。