根津嘉一郎から売却され旅館として生まれ変わる際に加賀の成巽閣を模したラピスラズリの壁。
ここの暖炉は一番好きな暖炉かもしれない。
チューダー様式にガンダーラを注入した折衷様式の特注品。最近の売れっ子で旅館に缶詰になって執筆する作家はいるのだろうか。
暖炉上の鉄フードの梵字デザインは何度見ても素敵。暖炉の火床の奥の竜の彫刻も焦げて趣がある。
スタンドグラスも素晴らしい。何一つ隙がない。
鉄道王「根津」の別荘でもあった熱海の起雲閣。その後は高級旅館になり数多くの文人に愛されたそうな。尾崎紅葉はこの佇まいで瓶の葡萄酒を飲むか。
谷崎潤一郎、志賀直哉、山本有三、1948年に起雲閣に宿泊し文芸対談。
三島由紀夫 起雲閣に新婚旅行で宿泊。45歳で割腹自殺。
太宰治。起雲閣にて1948年3/7〜3/31滞在中に「人間失格」を執筆。翌年 39歳で入水自殺。
太宰治はこんな高級旅館に1948年に3週間以上も泊まれるほど裕福だったらしい。元々青森で4番目の富豪の家に生まれ、1946年から連載を始めた「斜陽」がヒットしていたらしい。「人間失格」は自殺する1ヶ月前に書き上げ、死後大ヒットして1949年の高額納税者にランクインしているとのこと。
金持ちは風呂にもこだわるのだな。しかしその頃は露天風呂趣味はさほどなかったのだろう。