現代美術がわからない。ポンピドゥーセンター。

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近現代美術10万点以上を収集し展示しているというポンピドゥーセンターの国立近代美術館に行ってみた。近代美術、造形、デザインに関しては欧州一の規模の美術館と聞いて一度は行きたいと思っていた。

 

一目でわかるジャクソン・ポロック。確か彼の作品は220億円ぐらいするものまであったのだっけ。

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抽象表現主義。ペンキ缶から床に置いたキャンバスに垂らすように描くドリッピングアート。わからんな。

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「初めてこのような表現を世に送り出したから」という歴史的な価値や当時の新規性を取り除いて純粋な表現そのものとして見たとき、皆が美しいと心を動かされるのだろうか。

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足を止めて魅入る作品は少なく、広大な館内をスタスタと歩いて回る。14€の入館料すらもったいないと感じるとは思わなかった。

 

美術高校の卒業制作にありそうな作品が多いな、と思ってしまった。着想や表現の新規性や社会的メッセージにおいて素晴らしいものばかりなのかもしれないが、同時に似たものを作りやすい表現ばかりとも思える。美術の嗜みのある人からすると、模倣品との間には雲泥の差を見て取れるのかもしれないが私にはわからない。

 

私は「そこらの凡人には簡単にはこの造形は生み出せないぞ」という技術の積み重ねの上に成り立つ作り込んだ美が好きなのだと思う。

 

結論。現代美術のうち、とりわけ抽象系はわからない。良さがわかるようになる日は来るのだろうか。

 

 

クリーム発祥の地、シャンティイの名店「Le Verbois」

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パリから電車で35分の北の郊外にある街、シャンティイへ。何やら、この街は生クリーム発祥の地だそうで、そこの1、2を争うという名店「ルベルボワ」に行ってみた。

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一軒家レストランとくくるには豪勢すぎるシャトーレストラン。

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一人だと入れない敷居の高さ。

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店内は採光が良く開放的だった。外見は数百年前と変わらずとも、中はモダンでスタイリッシュなギャップで魅せてくる。

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アミューズトコブシに盛られた蝦のスナックと濃厚なキノコの何か。何せ説明がフランス語でわからない。

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ミシュランの星を獲得するには創造性が重要なのだと聞くが、なるほど。ダイコンで巻き、カラスミのスライスが乗っている想像し難い組み合わせ。でも全体として調和がとれているし、しっかりとフレンチなのだよな。

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こちらは魚のフィレの上に軽く火が通された魚卵、さらにパセリをはじめとする香草。ソースはバターベースでセロリの風味が効いている。何かと美味い。

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牛肉も文句のつけられない歯応えと肉の旨味。

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初見で何かわからなかった緑の玉はパンに塗るためのバターだった。表面の緑はバジルと言っていたのか。

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デザートにはショコラムースにスパイスが掛かっていたり、レモンだけでなく柚が合わせられていたり、食べていて楽しい。柚も日本のシトラスだの注釈をつけずに「ユズ」で定着しているのだな。次に定着していくのは「サンショウ」だろうか。

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これがシャンティイ発祥の名物クリームだそうで、黒い粒々はバニラのようだ。このスプーン二匙分だけで別途5€。ミシュラン星付きだと仕方がないのか。味はとても上品でバニラの香りも高く申し分ない。

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レストランの裏庭には鶏舎があった。

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なんとも広大な敷地に野飼いされており、そこら中を自由に駆け回っている。雄鶏が多いように思うのだが食肉用なのだろうか。毎日客に出す量の肉を供給できるとは思えないのだが、特別なメニューとして使われるのだろうか。最後の瞬間まではストレスフリーの平飼い。


パリの郊外まで足を運ぶと、このレベルの高さの食事がお酒を飲んでも50€で済んでしまうのだよな。パリ嫌いで地方に住みたがるフランス人が多いのは分かる気がする。

パリ、モンマルトルの街散策。壁の落書き絵が楽しい。

13時間のフライトの後に時差ボケにうまく対応してコンディションを整えるには体を動かすことに尽きる。早速、常宿のモンマルトルを散策。

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壁のグラフィティは毎年のように描き直されているように思う。

 

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ゴッホさんかね。

 

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近くで見ると乱雑極まりないけれど、遠目で見るととても綺麗。

 

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鳩の絵からするとピカソ氏。その下に目を見開いたケネディー。

 

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フラミンゴを数えながら坂道を下り

 

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パリ市街の外周部とはいえ、ワイン畠のあるモンマルトル。僅かながらにも収穫され、ワインが今も作られる。

 

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某キャプテンがいた。そういえば、日本の壁の落書きにはキャラクターものが描かれていることが少ないように思う。ドラゴンボールやナルト、ワンピースのキャラなんかがもっと描かれていても良さそうなものだが。

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グラフィティを描く層がフランスと日本では全く異なるように思う。日本は見るに耐えない不良グループのチームロゴのようなやつをスプレーで描き殴るだけで鑑賞性が無い。欧州だともう少し絵心がある人が描いていて歩く人が見て楽しめる。

 

日本は絵を描く人が総じて行儀が良すぎるのかもしれない。もっと和文様やら日本らしいコンテンツの落書きがあっても良いのだが。ガード下の壁など、あちこち開放してあげてほしい。

 

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またまたピカソ氏。

 

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この店は新しくできたのか、装いを新たにしただけか。いかにも「華の都パリ」なイメージ通りで天気の悪いこの時期のパリだが華やいで良い塩梅。花は桜のように思える。桜は日本の専売特許のような日本を代表するモチーフだけれども、こんな飾り方はあまり見かけない。感性の違いなのだろうね。

 

 

 

 

五美大卒展 2019年

毎年、新国立美術館で催される五美術大学の卒業制作展へ。


観に行くならば幼稚園の息子を連れて行かねばならない事情があり、行くか逡巡した。しかし行くならば今日しかない。そこで、念には念を入れて作品には触らないことを約束してもらい、鑑賞時は手をずっと繋いでいくことにした。


いざ廻ってみると、触るような素振りは全くなく、むしろ「これ見て!」「ほらほら、電車の駅だ」「これ、綺麗だね」と私の手を引いて回る次第。息子なりに感じ入るものがあった様子。

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目に留まった作品をいくつか。

蓮の葉が取り囲む黒い地面に肉食獣の頭蓋骨をした裸の人が横たわる。左手は折れて先が無くなっている。

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含意は何なのだろう。こういう作品は是非制作者のお話を聞きたいものだよな。

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淡いエメラルドグリーンの池を泳ぐ鯉、二匹。石燈籠が唯一の人工物が描かれているが、これは兼六園のものだろうか。

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至近距離で観るとそのディテールに魅入られる。

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装飾的で素敵だと思った白木板に藤の木と雌雄の孔雀を描いたもの。

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青や緑の鱗状の羽根がモザイク状に描かれていて表情豊かなのだけれども、目には別素材の眼球が貼られていて、異素材の光沢が絵全体を活き活きと感じさせてくれる。

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綺麗だな、と思って目に留まった。立体造形は写真の輪郭をなぞってデッサン力の無さを誤魔化すようなことができないから、なおさら巧拙が目立つ。陶で自由自在に造形できるようになりたいものだ。

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あのふわふわな羽毛の中に嘴を埋めて、気持ちが良さそう。あの鳩の中に入れたらどんなに気持ちが良いことだろう。そういう夢想を形にした作品なのだろうか。巨大お籠りデイベッドか。

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犬版が欲しい。

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テラコッタ。こんな大きさで作っても見苦しくない造形力を身に付けたい。

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私が左の作品に魅入る間に、息子は繰り返し繰り返し目玉焼きがあることを教えてくれた。

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我が家のマンゴー殿もこの絵のように、テレビに犬が写っていても無関心な時もあれば、食い入るように魅入ることもある。その違いは何なのだろう。

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子供づれだと作品に近づいて制作者の名前を確認することができなかった。今日観た作品の作者の将来の制作品をまたどこかで観たい。


卒展は入場無料だし、作風が様々な作品が一堂に会していて楽しいし刺激的。


高円寺のハズレの無い居酒屋「左利き」 冬の陣

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亀の手というものを初めて食べた。ゲテモノの類かと思っていた。見た目からすると、ゲテモノに違いはないのだが、新鮮な「亀の手」は食べ物に困ってなくても敢えて食べたいと思わせる美味だった。

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自分の料理の腕を上達させたい。その先に作りたいものが「左利き」にはある。

その一つが「南瓜の含め煮」。面を丁寧に取り、柔らかくなりすぎず、固くもなく、そして上品な出汁と柚子の香りが染み込んだ絶品。隠し包丁が無数に入った「冬瓜の含め煮」もたまらない品。


次に時間の取れる週末は、目一杯丁寧に工夫を凝らした出汁をとって、根菜類各種の含め煮を作ってみたい。

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冷静蒸し鶏も旨いのだよな。丼に乗せて食べたくなる。

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出汁が美味しい店なので、明太子バター饂飩もそりゃ美味い。

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蓮根の鶏挟み揚げ。

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生蛸の刺身。

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蛍烏賊の酢味噌和え。

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叩き梅と玉子の雑炊。480円。これだけで軽食一回分になる分量なのだが、それが480円。お得でついつい食べすぎてしまう。

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ハムカツゴルゴンゾーラ。こいつはこの店で少しばかり異質というか、浮いていると思う。

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まだ4、5回は通わないと一通りメニューを制覇できなさそうだ。

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常時50種類以上の日本酒から好みの銘柄を探すのも飽きない楽しみ。


西京漬け定食が安くて美味しい「魚 き食堂」

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あまり人気の出て欲しくない昨年出来たばかりの高円寺の西京漬け専門店の定食屋。


御実家が金兵衛という西京焼き弁当屋さんだそうで、実家と同じ西京漬けを北海道小樽から仕入れているそうな。

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銀鱈、銀鮭、サーモンハラス、ひらす、さわら、銀ムツ、鰈など種類が豊富。魚二種類に鶏の辛味噌焼きの三種盛り定食に日本酒を合わせて頂くのが好み。日本酒が多くても三種類しかないのに、そのうちの定番の一つが春鹿の超辛口というのも都合が良い。


味噌が甘く、魚も脂がのっていて、白米が進むこと、進むこと。こんなに脂がのっていても、肉よりも健康的なはず、という免罪符を得られるから西京焼きはずるい。後ろめたさを減じられる。


西京漬けはデパートの地下で売られているものを見ると驚くほど値が高い。スーパーですら高い。それが850円で頂けるのだから有難い。しかも業務用の魚焼きグリルでこれぞという加減で焼きたてを出してくれる。

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出前も、テイクアウトもしている。カウンター席が6席程度しかないのであまり繁盛しすぎて欲しくない憩いの店。


11:30〜21:00。

日曜定休

桜に菜の花、ゴルゴンゾーラに蜂蜜、クリームチーズに山椒。

とある機会にチーズと日本酒のマリアージュを楽しむことができた。

 

チーズはBrillat Savarin Fraisというクリームを加えて作るフレッシュタイプのチーズで、濃厚でまろやかなフランスの白チーズ。酸味もしっかり感じられるのが特徴だという。

 

それに合わせたのは山形政宗純米吟醸吟醸香のする食前酒としても合わせやすい比較的爽やかなクセのない味だった。

 

両者を合わせて美味しかったというのも発見だが、それ以上の発見はクリームチーズに粉山椒を掛けて食べると美味しかったこと。

これは濃厚ながら酸味のあるフレッシュチーズだから合ったのか、それともクリームチーズ全般に合うのか。

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ゴルゴンゾーラなどの青黴チーズに蜂蜜を掛けて食べるのが美味しいのは馴染みだが、クリームチーズに山椒は新しい。

 

日欧EPAが2019年2月から発効された。これにより欧州から輸入するチーズやワインの関税が即時あるいは段階的に撤廃されていく。その一方で日本酒や調味料の輸出関税が即時撤廃される。

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エポワスとダルマ正宗熟成三年という臭いチーズに臭い熟成酒という組み合わせも濃厚で美味しかった。単品でダルマ正宗を飲むのは苦手なので、エポワスのクセがダルマ正宗を飲みやすく楽しめるようにしてくれたとも言える。

 

 

欧州における日本酒の楽しみ方を探求してみたいと思っている。まだまだ私の知らない、日本酒と欧州の食事との合わせ方があるはずだ。早速、英語と日本語でパリのレストランを検索してみた。日本酒を置いている店は居酒屋や和食のレストランばかりで、現地のビストロの食事に日本酒を合わせてくれる店は見つからなかった。

 

手頃な価格の店では平然と香りの悪いアルコール添加の安酒を置いていたり、取り敢えず「大吟醸」であるだけだったり。私は吟醸香の強すぎる大吟醸はそもそも食中酒としては合わないと思っている。旨口、辛口の純米吟醸酒あたりが好きだ。そんな日本酒をフランスの食事に合わせてくれるビストロを見つけたい。

 

純米吟醸酒と赤ワインビネガー&エシャロットの生牡蠣とか、鶉とか、タルタルとか、シャブリマスタードをつけたソーセージとか、ソシソンとか、ムール貝の白ワイン蒸しとか。え!この組み合わせがこんなに美味しかったのか、というような驚きの組み合わせを発見したい。