山椒に揚羽蝶

 

f:id:mangokyoto:20170604183214j:plain

今年も庭の山椒に揚羽蝶がやってきた。しきりに腹を山椒の葉や枝に擦り付けている。こいつはこの山椒で育った蝶だろうか、そこらから惹かれてやってきたのか。

f:id:mangokyoto:20170604183119j:plain

小さくまん丸な卵が一つ。今日1日でいくつ産み付けるのだろうか。

 

f:id:mangokyoto:20170604183254j:plain

こちらは2齢か3齢幼虫ぐらいだろうか。見事に鳥の糞のように見える。

 

f:id:mangokyoto:20170607142223j:plain

鳥の糞のような私でございます。か弱い幼児を価値のないものに見せるべく、捨て丸だの名づけるのと意図は同じだというのは面白い。

 

 f:id:mangokyoto:20170609073504j:plain

で、鳥の糞のような幼虫を見た翌日になんともう丸々と肥えた終齢幼虫がいた。同じ山椒の木に2匹いるので、同じ幼虫だと思われる。いやはや、それにしても成長の速いこと。おかげで山椒は葉を食べられて丸裸。

f:id:mangokyoto:20170609075559j:plain

立派な棘も揚羽の幼虫相手には意味がないね。

 f:id:mangokyoto:20170609073528j:plain

この後はどこで蛹になるつもりだろうか。

 

Light Side Cafe その名の通り明るい高円寺のカフェ

ルック商店街の七つ森をさらに高円寺から新高円寺へと少し下った所の2階にあるカフェ。

 

カフェ巡り好きの私が訪れるのを2年間後回しにしてしまったのは何故なのか。

 

入ってみたら予想以上に明るく清潔感があって爽やかさがある。気持ちの良いカフェではないか。「ココロもカラダもlightのほうへ」という店のコンセプトを体現している。

f:id:mangokyoto:20170604190138j:plain

たかだか十数段の階段を上がる心理的抵抗感の強さのいかに強いことか。路から店の中の様子を覗き込んで入れる路面店と違い、ふらりと入る客の敷居の高さは馬鹿にならない。

 

f:id:mangokyoto:20170604190213j:plain

古びて年季の入った雑貨に溢れているカフェも楽しいが、モノが少なく明るくて清涼感のある空間は安心感がある。そしてこのソファ席のテーブルは1人客の居心地も悪くない。

 

商店街に立て看板があるが、メニューの写真だけではなく店内の写真も載せた方が良いのではないか。正直にいって店の前を幾度となく通り過ぎ、今まで気になることも、惹かれることも全くなかった。今回はR座読書房が臨時休業しており折角だから新規開拓してみようと思って気まぐれで入ったにすぎない。

 

入るカフェを選ぶにあたって店の雰囲気はとても重要な要素だと思う。たくさんケーキやなんかの写真を載せているが、そんなにたくさん載せるぐらいならば店内写真を載せたほうが良さそうに思う。それか、コンセプトを一目でわかる文字の大きさで書くか。コーヒー、カフェラテの値段があればカフェの価格帯のイメージはつくし、あとはフードやデザートの一押しを載せた上で、「他にもメニューあります」で十分だと思う。

 

f:id:mangokyoto:20170604190240j:plain

十分に快適で気に入ったのだが、なぜ今まで来なかったのだろう。一つは高円寺のカフェ20選だとかオススメトップ10なんかに名を連ねていることが少なく目にする機会が少なかったからだと思う。植物に溢れた私語禁止のR座読書房、クラシックのかかる名曲喫茶ネルケン、童話絵本の世界のようなハティフナット、古民家カフェ七つ森プロヴァンス風なシェパードパース、ヴィーガン料理のメウノータなど個性が際立ったカフェのほうがオススメしやすい。観光ガイドや紹介サイトなんかでは一言で魅力の伝わりにくいカフェかもしれない。

 

f:id:mangokyoto:20170604190325j:plain

水はセルフサービスなのだがオレンジスライスの入った水かレモンミントの入った水をセルフサービスで頂けるようになっている。水を注いで回る手間も省けるし、自分で選ぶ楽しみがあって自分で水を注ぐ面倒臭さは感じない。良いアイデアだと思う。

 

f:id:mangokyoto:20170604190355j:plain

ケーキも600円だが、アイスクリームやカットフルーツが載ってなかなかボリュームのあるデザートプレート。コーヒーを2杯ぐらい飲みたくなる量だ。オレンジピールと紅茶のケーキは甘さが強めでコーヒーを飲みながら時間をかけて食べるのに好適だった。

 

f:id:mangokyoto:20170604190418j:plain

コーヒーもしっかりと抽出され苦味のバランスもとれた飲みやすくて美味しいものだった。

 

f:id:mangokyoto:20170604194211j:plain

ランチも期待できそう。リピートしたくなる、街に一つはあって欲しい種類のカフェだ。よそから来た人が目当てに訪れるようなカフェではなく、地元の知っている人が親しむカフェといえる。

 

http://lightsidecafe.com

定休日 第2、第4月曜日
営業時間 11:30〜22:30 (LO 21:30)
※週末及び祝祭日は11:00よりオープン

映画「ムーンライト」「レヴェナント」「夜に生きる」

「Moon Light」☆なし

LaLaLandがアカデミー各賞を総なめにする勢いだった中で、作品賞受賞ということで観た。感情移入することもなく、あまり深い感情の動きを察することもできず、いつの間に映画は終わった。ゲイではないと同感しづらい孤独や悩みなのか。

 

物騒な街でいじめっ子に追われて隠れる子供を拾い面倒を見るドラッグディーラーのフアンの優しさは自分の生業への贖罪意識なのかなんなのか。整った居間も清潔そうなシーツも優しく気立てのよいガールフレンドもドラッグでの上がりで手に入れた余裕と考えると白々しくなる。どう死んだのか描かれずに終わったが、主人公シャロンが髭からピアスから亡きフアンの風貌を真似ている様から如何に慕っていたかがわかる。

 

フアンは碌でもない最期を迎えたようだが、フアンに比べてもシャロンはあまりにも孤独だ。

 

どうにもならなかったのだろう。そのどうにもならないやるせなさを描いている映画なのだと思う。

ムーンライト

ムーンライト

 

 

「Revenant」レヴェナント‐蘇りし者 ☆なし

熊に襲われ肉を割かれ、足先が正常ではない方向に曲がって折れたかのように描かれている。雪が降り氷が張る酷寒の地で水に濡れたままでいるだけで低体温症で死ぬだろうに。肉が腐り、蛆が湧いていたというのに。

 

熊の遭遇シーン、自然の描き方や殺し合いの撮り方にリアリティーを追及しているだけに、主人公の回復力の非現実さに興醒めしてしまった。瀕死の状態から1週間も経たぬうちに走るまでになるかね。熊に食われた手はしまいには傷跡もなく回復していた。野暮な突込みかもしれないが、そこらへんのリアリティーを見せたい作品ではないのか。

 

結局、長いだけで何を描きたかったのかもよくわからなかった。全ての状況をよそ目に自分の息子の仇を討つだけで終わった。あの時点で息子が残された主人公の全てだということはわかった。しかしそれまでに奪われた数々、とりわけ奥さんの仇は取らんのか。映像の雰囲気重視の陶酔感に溢れた作風は「シンレッドライン」を思い出した。

 

鑑賞後に思ったこと。それにしても白人に侵略される状況にありながら先住民族は部族間で争い続けていたのだな。

  

「Live By Night」夜に生きる☆☆☆

結局、評判のアカデミー賞受賞2作よりも面白く、感じることも多かったのがベンアフレック主演監督のこの娯楽作。禁酒法時代からその後までを生き抜くクライムドラマで「欲望のバージニア」を思い起させる。ベンアフレックが主演した「ザ・コンサルタント」といい、悪役を主人公に仕立てながらもその演技力と存在感でいつのまに観客を無理なく悪役側視点に立たせてしまう良作が続く。

 

清濁を併せ持たせた登場人物の数々が魅力的。ボストン警察署長を父に持つ主人公、街の治安とバランスの為にはギャングとの馴れ合いも必要悪と考えるテンパ警察署長、心のどこかが死んでいてその死んだ部分は結局もとには戻らなかったというボスの愛人。

 

エル・ファニング演じるロレッタが一番印象的。ハリウッドデビューを夢見てオーディションと騙されて売られ、その後、キリスト教に深く帰依して立ち直ったようにみえたものの結局はあのような結末を辿るのも信仰への虚しさを打ち消すことができなかったからか。

 

泥沼の対立抗争のなかで生き抜いていくも、誰もハッピーエンディングを迎えないギャングの世界の不毛さをわかりやすく描いてくれる。いつになっても映画好きは「ゴッドファーザー」の世界観が好きなのかも。 


足元の平凡でささやかな幸せを大事にしなければな、と思う。そしてどんなに綺麗事を言おうとも立ち直れない喪失というのもあるわけで、それらから守るのは自分自身しかいない。

 

高円寺を代表する廃屋

高円寺を代表する、という形容の仕方があるのか知らんが、遺跡廃墟好きには必見の一角。

f:id:mangokyoto:20170603104057j:plain

高円寺の由来ともなっている宿鳳山高円寺の並びにある。高円寺一番を推すのは廃屋の朽ち具合の風情もさることながら、廃屋を支えるように立つ桜の大木。高円寺で写真家を志す者は記録に残すべき光景だと信じる。

 

f:id:mangokyoto:20170603104118j:plain

中を覗くと、ガラスケースに収まった西洋人形が見える。廃屋に人形なんて遊園地のお化け屋敷の作り上げられた設定のようだが、不思議と表情は穏やかで静かだ。

 

f:id:mangokyoto:20170603104203j:plain

この写真は私として今日一番のお気に入りだ。錆びたトタン、倒れつつある杉板壁。そして遠近パース。

 

f:id:mangokyoto:20170603105844j:plain

地方や辺境の廃墟や廃屋はこれからも時間をかけて朽ちていくだろうし、また訪れたら見られそうな安心感がある。しかしこの高円寺の廃屋と素晴らしい桜の大木はいつ取り壊しが始まり伐採されるのかわからない、儚さがある。

 

 

そういえば、廃墟カフェで検索してみたら私が愛した京都二条城の近くにあるsolが検索結果に出てきた。懐かしい。キュレーションサイトに「廃墟カフェ TOP10」みたいなものが無数にあるのだが、内容はどれも似たものばかりでしかも私が2011年に撮ったものを拝借している。まあ、私のカフェではないし、客として撮っただけだし、それで客が増えてカフェが長く続けば本望。でもね、残念ながらとっくに閉まっているのだよ。

http://getnews.jp/archives/1302276

https://triipgo.com/12548

他のアクセスの取れそうなサイトをパクって店名を検索して、使えそうな写真の載っているブログから拝借してばらまいているだけで「廃墟、廃屋愛」を感じないのだよね。やっつけ仕事感が強い。

 

SOLは目当てに行く価値のある素晴らしい廃墟カフェだった。店主は河井寛次郎の器を使ったワークショップを開くほどの文化人だった。陶芸好きに拍車がかかったきっかけはここかもしれない。

 

既に閉店しているSOLを目当てに現地に行くと、周辺にめぼしい観光目的地はない。京都旅行で時間を無駄にしてしまわないことを願う。商業キュレーションサイトも閉店していないかぐらいは調べてあげれば良いのにね。

 

過去のSOLのブログ備忘録。あんなにも素晴らしいカフェも立地が悪いと立ち行かないのか。カフェ経営って本当に難しそうだ。

 

 

 


 

2ヶ月半ぶりの作陶

中国出張やらインド出張やら家族行事やらで2ヶ月半もご無沙汰していた作陶を久しぶりに再会。今となっては数少ない趣味すら碌にできないのは情けない。料理を趣味にするだとか、平日の夜にできる趣味にするだとか幼児の子育てに相性の良い趣味の方が良いのかもしれない。

 

長らくほったらかしにしていた信楽白土を練ったのだがボロボロとヒビが入る。粒子が不均一になって粘りのない状態を「土が疲れている」なんて言うが、それこそ水に浸してに寝かせる」とまた均一化して粘りが出る。日本酒を入れたり、堆肥やなんかをいれて腐らせたりもするらしいのだが、それをやる時間も気力もない。

f:id:mangokyoto:20170528195416j:plain

そんなわけで粘りのなさを逆手にとってヒビ割れを強調した鉢を成形した。

 

 

多肉植物鉢だと、少しぐらいの亀裂から水が漏れるぐらいが排水性に優れて丁度良いぐらいだから、気安く作れる。まあ、面白味に少し欠けるけど轆轤に使えなさそうな土なので仕方ない。

 

f:id:mangokyoto:20170528195444j:plain

こちらも植木鉢二つ。中はくり抜かれている。

 

f:id:mangokyoto:20170528195938j:plain

コンクリート片から多肉植物が生えている感じを出せるのではなかろうかと。これをコンクリートの三和土や、家の駐車場の上に転がしておいても面白いのではないかと。

 

f:id:mangokyoto:20170528195827j:plain

座禅草のようなモチーフに愛犬マンゴー殿を載せてみた。筒の中に多肉植物を植える予定。ここからもう少し、完成させるまでにいじりたいことがある。

 

f:id:mangokyoto:20170528195527j:plain

なんなら、マンゴーが大往生した後には分骨して入れても良い。そうなると、台座もつけたい。犬は釉薬を掛けるとあまり細かく彫り込んでも意味がなくなるので、荒く削った風に留めてみた。



結局のところ、それなんなんですか、と言われるような実用性が不明なもんを作ってる時が一番楽しい。会社サボって朝から晩まで大きい鉢を造りたい。

コールマンのインディゴブルーテントへの憧れ

 

 

f:id:mangokyoto:20170527220737j:plain

神宮外苑軟式野球場でキャンプ用品メーカーによるアウトドアリゾートパークが開かれていたのでテントを物色しに行った。

 

f:id:mangokyoto:20170527220809j:plain

まずはエクスカーションティピー。インディアンのテントのようでワクワクするが、中央にポールが立ち、テントの端はかなり天井が斜めで圧迫感がある。風にも弱そうな印象。

 

f:id:mangokyoto:20170527220834j:plain

こちらはスクリーンタープという四方をメッシュで閉じれて虫除けできる巨大な居間テント。こんなんでBBQしたら贅沢にして快適。

f:id:mangokyoto:20170527220652j:plain

今回、心を奪われたのがコールマンのインディゴラベルというシリーズ。

f:id:mangokyoto:20170527220433j:plain

コールマンのテントはベージュにグリーン、あるいはバーガンディーという臙脂色であまり冴えない。野外で溶け込みやすい色ではあるが遊び心を感じない。しかしこのインディゴラベルは外が青、中が白の清涼感溢れる色使いで形状は変わらないのに、一気にグランピング気分になる。色は大事だよ。テンションが一気に上がる。

 

f:id:mangokyoto:20170527221113j:plain

機能は変わらない同型のテントよりも8000円近くも高い。機能は変わらないのにより高い金額を払うのか。感性的価値に金を払える人間かどうかが問われているわけだな。いや、感性的価値肯定派だ、私は。どちらにしろ、小遣いではこの大きなテントは買えなさそうなだけだ。

 

f:id:mangokyoto:20170527220613j:plain

タープもインディゴのデニム柄。この後、ほぼ同じ構造のテントを体験で張らせてもらったのだが大人1人でも10分もかからないで張れた。しかも天井が高く、壁面地表部から風を取り込み、天井から暑い空気を逃すベンチレーション機能がしっかりとしていて快適そうだ。ますます欲しくなる。

 

ううむ。欲しい。300cm×300cmというサイズが大きすぎるのだよな。300cm×250cmとかもう少し小振りのインディゴテントが発売されるのを待とうか。

 

使えるテントがあるのに好みというだけで別の新しいテントを買う贅沢はできない。息子達が小学生になり、嫁さんも一緒に行く段になってようやく大きなテントが必要となって買えそうな気がする。それまではドッペルギャンガーのツーリングテントにタープで快適性を加えていく方向で頑張るしかないか。

古希を迎えた父に高度成長期重厚長大サラリーマン人生を訊ねる

父の古希の祝いで木更津のホテル三日月という温泉旅館に泊まりに行った。

 
木造三階建ての老舗旅館が好きな私にとって巨大ホテルは好みではないが、幼児連れで安心して愉しめるのはこういう「お祭りランド」やらの遊ぶ施設、ウォータースライダーや流水プールなんかが溢れ、好きなものを好きなだけ食べられるビュッフェのあるホテルであるらしい。

f:id:mangokyoto:20170525002405j:plain

夜、普段よりも夜更かしすることを子供達に特別に許してみんなで乾杯した。何やら美味いナパの赤ワインを開けてくれた。コンティニウム。継続という名のワイン。息子に孫達に何か意味を託しているのだろうか。単に美味いワインだからというだけかもしれないし、昭和の団塊世代は妙なロマンチシズムの小ネタを仕込んでたりもするし、真意はわからない。
 
ああ、飲みやすくてまろやかで濃厚で美味い赤ワインだなあ、などと思って飲んでいたが値段を知ってこういうワインを飲むにはこういう値段を払わねばならないのかと落胆。下戸の嫁さんと酒量の少ない私の2人だとワインは楽しみにくい。開栓した後もちびちび飲めて安い日本酒がやはり身の丈に合うのかも。濃厚でとっておきの日本酒を探したいと思った次第。

f:id:mangokyoto:20170525002433j:plain

父の昔の話はあまり聞いたことがない。少しばかり聞き出してみたが、自分のインタビュー技術がないのと、母がすぐ「あの頃は家ではどうのこうの」と自分の話を差し込んでくるのであまり聞き出せなかった。
 
母の愚痴から、嫁から買った怨みは何十年経ってもいつまでも昨日のことのように蒸し返されるということを知った。「あの時は腹が立って仕方がないから頭にきて5万円のラム皮のジャンパーを買ってやったわ。それにしてもラムってやっぱり柔らかくて良いわね、だって。。」と話は止まらない。肝に銘じておこう。
 
親父の話に戻るが、新卒で配属されたら辞めるまで同じ部門に勤めるという社風と時代。同期入社は214人のなかで定年退職までの42年間、本社に残ったのはたった14人とのこと。
 
親父のサラリーマン人生のハイライトは日経新聞にも載ったという、手掛けた海外への1000億円以上の融資案件らしい。サラリーマン人生の最大の失敗はそれと同じくらいのインパクトと面白さがあるが、本人の名誉のためにここでは書かない。

f:id:mangokyoto:20170525002525j:plain

50歳になった時には新設されたばかりの早期退職制度で退職金1億円が提示され、その頃それなりの人数の同期が辞めたとも言っていた。今では考えられない金額だ。
 
1億円の早期退職金に飛びつかないほうが得だと算盤を弾いたぐらいだから今でもそれなりな財産形成されているのではないかと少し期待した。しかし息子2人で私立大学に進学し一人暮らしの仕送りまでしてもらって脛をかじり尽くしたし、両親をはじめ、父から見て従兄弟にあたる身寄りのなくなった親戚を引き取ったりもしているのでそんなに残っていなさそうだ。独身の姉の面倒も見るつもりでいるらしい。
 
父の父、つまり私の祖父にプレゼントに買ってもらった自転車を勝手に祖父に売られて酒代に充てられたなんて話もあるぐらいの奔放な祖父を見て育った父は貧乏も経験したし、堅実だ。
 
子供に資産は残さない信条らしく、夜行バスで国内旅行にでかけたり、台湾だのナパバレーだの遊び歩いている様子を見ると、夫婦の老後必要資金以外は綺麗に使い切るつもりかもしれない。
 
70歳は電車で席を譲られるほどに年寄りでもないし、中途半端なんだよな。と言っていた。反面、まだ元気に海外旅行に出かけられる体力気力もある。
 
サラリーマンの秘訣は辛抱だ、忍耐だと繰り返していた。説得力があってしんどい。しかし部下が我慢すると思うから上司の横柄も横行するとも思う。高度経済成長時代の重厚長大産業で勤めた団塊世代。サラリーマンは辛抱だ忍耐だと言いながらも結局同期214人のうち200人は本社から去っている。父は本当に辛抱と忍耐の人だったのかもしれない。父の会社には、プライドが高く自己過信して嫌なことがあると「俺は外でも通用する」と勢いで辞めてしまう人がなんとなく多そうな印象。父の場合は子供の頃の貧乏やあれこれと比べたらこんなこと大したことない、といなしそうだ。何でも楽しもうとする楽観主義で、新し物好きでもある。

f:id:mangokyoto:20170525002558j:plain

私の世代に比べたら遥かに自己犠牲的なサラリーマン人生を歩んだ世代でもあるし、引き続き遺産などビタ一文残さないつもりで遊び倒す老後を元気に送ってくれたら良いと思えてきた。