冬の多肉まみれの在宅勤務

 

f:id:mangokyoto:20181209210835j:plain

バルコニーから室内に多肉植物の多くを取り込んだせいで、仕事机の周りが多肉植物の鉢だらけになってしまっている。

 f:id:mangokyoto:20181210091142j:plain

仕事はPCとスマホさえあればできるので、卓上に広いスペースは要らない。だから植木鉢だらけでも構わない。むしろ、ふとした瞬間に視線をPCから外して多肉植物を眺められるのは気持ちが良いし、目を休ませる。

f:id:mangokyoto:20181210091209j:plain

鹿の一画。そろそろもう一体、加えたくなってきた。片脚上げ、寝そべり、鳴き姿と作ってきたので次は水飲み、威嚇、座位か。

f:id:mangokyoto:20181210092020j:plain

陶虫夏草の一画。触手状の多肉がぞわぞわと分岐しながら地を這ったり、光を探り求めて伸びていく様はたまらない。成長が比較的早いのも嬉しいところ。

f:id:mangokyoto:20181210132750j:plain

 海の中の何かのように見えなくもない。海藻、ポリプ、多肉植物

f:id:mangokyoto:20181210132705j:plain

緑蛇というより緑鞭と呼ぶ方がしっくりくる。

f:id:mangokyoto:20181210115748j:plain

机の右手、森林性サボテンのリプサリスの一画。細い茎から炸裂した花火のように展開する細葉、枝垂れ花火のように垂れ下がる細葉。

f:id:mangokyoto:20181210131720j:plain

マミラリア に桃色の蕾が付いているのを発見。いつ咲くつもりなのだろう。冬にこんなに冷え込んでから咲くのか。

f:id:mangokyoto:20181210131957j:plain

セダム「新玉つづり」が延々と伸びて床の上を這い始めている。

鹿頭骨鉢釉掛け、還元焼成数点窯出し

学び

  • 渋柿釉の薄掛けに鉄絵の上から藁灰白萩を掛けた還元焼成の組み合わせは好み。
  • 素焼き前の乾燥しきった状態からはもうさほど縮まないことを再確認。
  • 真円の器はまだ柔らかいうちに歪み取りをすると良い。
  • 呉須の厚掛けは加減が難しい。

 

f:id:mangokyoto:20181209130355j:plain

鹿頭骨鉢の初号が素焼きされて出てきた。これから素焼きされる右の二号と並べてみると、さほど縮んではいないことがわかる。素焼き前に乾燥させる段階で殆ど縮み切ってしまうことを再確認した。

 

f:id:mangokyoto:20181209154710j:plain

過程の写真は撮り忘れたが、骨の癒合部や輪郭に鬼板で線を描き、チタンマット釉にドブ漬けした後にさらに癒合部や輪郭にマンガンで線を書き入れた。チタンマット釉はかなり薄く掛かっているので、これがどのような仕上がりに現れるかはわからない。強度向上のために鉢の内側もチタンマットが施釉されている。

 

f:id:mangokyoto:20181209154651j:plain

二酸化マンガンはほんの少しばかりだけ滲んで流れてくれたら良いのだけど、チタンマットが薄いので効果のほどはわからない。

 

f:id:mangokyoto:20181209154722j:plain

植物の植わる角の穴と、水を注ぐための頸椎の穴。真円に整えることもできるのだが、どちらがいいのだろうか。今回はふにゃふにゃとしたままでいく。

 

f:id:mangokyoto:20181209154937j:plain

底面も施釉されているので、3点の道具土の上に乗せて焼成してもらおうかと思う。さあ、鋳込み初号がどのように酸化焼成で焼き上がるか、あとは待つのみ。

 

 

f:id:mangokyoto:20181209155613j:plain

昨年末から放置されていた素焼きの植木鉢にもついに施釉。鬼板で篆書体で四字書き、さらに上からチタンマットをドブ漬けした。

 

f:id:mangokyoto:20181209160628j:plain

こちらもチタンマットのドブ漬けに縁を二酸化マンガン。確か、チタンマットというやつは赤土には綺麗に発色しなかったような気もする。薄掛けだと単なる淡い茶色かもしれない。もう、焼き上がりを待つしかない。

 


還元焼成した数点が焼き上がった。総じて言えば勝負に負けた感じ。期待を超える作品にはならなかった。

f:id:mangokyoto:20181209163823j:plain

渋柿釉なのだが薄く掛けたので赤味を帯びている。敢えて盛大に指跡を残し、そこに鉄絵で文字を書き、上から藁灰白萩釉を掛けていた。

f:id:mangokyoto:20181209163153j:plain

文字は判別不能になったが、好みのアクセントになったと思う。これがないとあまりに平凡な蕎麦猪口酒杯で終わったと思う。渋柿釉の薄掛けに藁灰白萩の還元焼成の組み合わせを覚えておこう。

この作品の難は口径が歪んだこと。いっそのこともっと歪ませるか、まだ柔らかい段階で歪み取りと言って丸い椀の裏に縁を当てるなどして矯正してやるべきだった。また、一筋釉薬が垂れて色調を乱しているのが残念。

f:id:mangokyoto:20181209163457j:plain

自分専用酒杯。90mlほど入れられる。下部が藁灰白萩釉、上は柿渋釉薬だが一部、藁灰白萩釉の上に柿渋釉を重ねた。重なった部分は黄瀬戸釉が透明なままに色調がくすんだ色に発色した。私が日本酒を食中酒として飲むペースに90ml程度はちょうど良いことがわかった。

 

f:id:mangokyoto:20181209164002j:plain

今回の一番の大物はちょっと残念な焼き上がり。一号透明釉は陶肌がテカテカとしすぎる。鬼板があまり鉄らしい滲みがでなかった。剣山を置いて花を活ければあまりに地味すぎるこの花器も使いようがあるだろうか。

 

東高円寺に本格タイ料理店降臨。「サイアムロット」

f:id:mangokyoto:20181128123024j:plain

妻から東高円寺駅前にタイ料理屋ができたと聞いたが、しばらく見つけられずにいた。まあ、検索していなかったからだが。

 

ニコニコロード沿いかと思っていたら、ニコニコロードの一本裏路地に面していた。これはなかなかわかりづらい。ちなみに息子はニコニコドーロという。意味は一緒なことに気づいた。なるほど。

 

f:id:mangokyoto:20181128125031j:plain

ランチメニューはA〜Eランチまであり、ガパオライスやグリーンカレーパッタイも惹かれたが初回はトムヤムクンフォーを頼んだ。950円でサラダ、炒飯、デザートまで付いてくる。

 

f:id:mangokyoto:20181128125037j:plain

濃厚でコクと酸味のある、バンコクで食べる味。高円寺にも「バーンイサーン」や「サバイディー」などタイ人シェフの美味しいタイ料理屋はいくつかあるが、家の近くにあるのはありがたい。

この味と満足感ならば、多少見つけづらくとも駅前すぐだし流行るのも納得。平日昼間でも視界に入る8割がたの席は埋まっていた。

 

美味しい店というのはほんの数ヶ月で評判になり、リピーターがつくのだよな。「青藍」や「山と樹」、「左利き」しかり。徐々に、徐々にというよりも安定してやっていけるかは3ヶ月ぐらいの客の反応で見えてきてしまう。

 

不定

11:00~15:00(L.O.14:30)
17:00~23:00(L.O.22:30)

山茶花、山茶花 咲いた道 そして箱根「天山湯治郷」


 f:id:mangokyoto:20181208092028j:plain

箱根の街を強羅から宮ノ下へ、箱根湯本から天山湯治郷まで歩いた。道路は車が登れる傾斜内にするために蛇行しているが、それらを最短で横切るように住民用の急な坂の生活道路があちこちにある。それらを、突っ切っていった。

f:id:mangokyoto:20181209185536j:plain

f:id:mangokyoto:20181207110614j:plain

誰も通行人のいない、山茶花が長い壁をなす裏道に出た。燃えとるな。地面を鮮やかな紅に染め上げるのは花の塊がぼとりと落ちる椿よりも花弁をはらはらと落とす山茶花に軍配が上がる。

f:id:mangokyoto:20181207110642j:plain

それにしても見事。


f:id:mangokyoto:20181208091735j:plain

f:id:mangokyoto:20181208092916j:plain

ふと立ち止まると深い秋。

f:id:mangokyoto:20181208093335j:plain

f:id:mangokyoto:20181208094246j:plain

f:id:mangokyoto:20181208104703j:plain

函嶺、平賀敬美術館という子連れでは行き難い個性的温泉施設は二つとも休館中だった。冬に行くと人は少なく空いてはいるが休館の可能性も高い。

f:id:mangokyoto:20181208114938j:plain

そんなわけで天山湯治郷まで歩いていった。

f:id:mangokyoto:20181208115146j:plain


肝心の風呂はというと、箱根ならではの山に囲まれた眺望はなかった。東京近郊の人気スーパー銭湯でもあるレベルかもしれない。無論、それらよりも泉質は良いのだろうが。

f:id:mangokyoto:20181209184206j:plain

何せネット上の写真が奇跡の一枚すぎるのだよな。まず、こんなに綺麗ではない。もっと古びている。しかも、露天であればこれはサウナの前の柵と建物の間から撮ったであろう視点だし、下の半露天風呂は奥の洗い場のカランの上から写真を撮らないとこうは写らない。風呂に入って実際に見る視点ではなく、よく見せんがために利用者が通常は立たない視点で撮られている。

f:id:mangokyoto:20181209184227j:plain

入場料は1300円。不満なほど何かを欠いているとは思わない。しかし、箱根に来たからには何かもっと非日常な温泉風情が得たかった。

f:id:mangokyoto:20181208115601j:plain

休憩所は川に面し、ごろりと横になれる。膝掛けもある。自販機もすぐそばにあり、ビールやジュースも飲める。

f:id:mangokyoto:20181208115625j:plain

姥子温泉が比較対象になってしまったのが悪い。そもそも、姥子温泉がひっそりとした湯治場文化遺産温泉として維持保存されているのは同じ経営母体である天山湯治郷の売上収益のおかげなのだから。

f:id:mangokyoto:20181208141204j:plain

ところどころに共通する「粋」な美意識を感じる。「ひがな湯治 天山」は入場料1300円で中には食事処や休憩所が充実。「かよい湯治 一休」は露天風呂だけの施設。さらには1泊目9000円、2泊目8000円、3泊目7000円と連泊するごとに値段が安くなっていく「逗留湯治 羽衣」の三施設があり、羽衣に滞在すると天山と一休の両施設が利用できる。



 

ゲストハウスもここまで来たかという「箱根テント」

f:id:mangokyoto:20181207162856j:plain

強羅駅の近くのゲストハウスに泊まってみた。素泊まり相部屋3500円。

 

f:id:mangokyoto:20181207162833j:plain

 

f:id:mangokyoto:20181207162806j:plain

春から秋には平日も週末も予約で一杯の人気ゲストハウスなのだという。なるほど、私がバックパッカーであちこちの国を放浪していた頃のゲストハウスのような貧乏くささが皆無な、オシャレでデザイン性に溢れた空間。18年前、ゲストハウスは東南アジアならば1泊1000円、日本ならば2500円が相場だったかと記憶している。それが倍以上もオシャレで快適で掛け流し温泉風呂もついたゲストハウスが3500円か。世の中に良いデザインそのものが身近に安くなってきているのだろうか。

 

f:id:mangokyoto:20181207162611j:plain

夜に皆が集う空間もなんとも清潔で明るくて暖かみがある。1人でハンモックに揺られるもよし、2人で並んでカウチに腰掛けるもよし、6人で座卓を囲むもよし、知らぬ人同士が炬燵を囲んで雑談するもよし。

f:id:mangokyoto:20181207161928j:plain

夜にはタップビール、クラフトビール、カクテル、ピザからチキンレッグ、ラザニア、生姜焼きなど食事も注文でき、しっかりとしたものが出されていてここで食べる人も多いようだ。

 

f:id:mangokyoto:20181207213729j:plain

1人で来て、ゲストハウスのスタッフやほかの旅行客と気安く話をするのもゲストハウスの醍醐味。

 

f:id:mangokyoto:20181207161006j:plain

男性相部屋は4人1室。満室で1泊1万4千円を取れ、さらに別途バーで飲食代2000円程度を使ってもらえるなら、風呂設備の至らなさに目くじらを立てられながら安旅館を続けるよりもゲストハウスの相部屋にしたほうが収益は良さそうだ。

 

f:id:mangokyoto:20181207161147j:plain

風呂は二つで、檜風呂の湯船は他人2人が一緒に入るのは正直、しんどい広さ。

f:id:mangokyoto:20181207161404j:plain

もう一つの岩風呂でも3人は少し窮屈か。お湯はかなり熱めで長湯はできない。

 

よって貸切制になっている。案外、外国人は利用しないか、長風呂しないから用は足りるのかもしれない。温泉に挑戦したい外国人も貸切なので入れて敷居が下がるし、夫婦やカップルで入れるので旅情が盛り上がるかもしれない。

 

f:id:mangokyoto:20181207161206j:plain

 

f:id:mangokyoto:20181207161248j:plain

さっと済ませたい人のためにシャワーブースが二つ設けられている。ところどころは工事途中と思わせるぐらいの無骨な仕上がりだが、ゲストハウスだと許されてしまう。

f:id:mangokyoto:20181207161300j:plain

ここなら日本に遊びに来る海外からの友人知人にお勧めできる。

 f:id:mangokyoto:20181207212200j:plain

 f:id:mangokyoto:20181207161734j:plain

 

姥子温泉秀明館で読書に耽る湯治4時間:3100円。

箱根テント宿泊:3500円。

強羅の銀カツ亭の豆腐カツとじ御膳:2100円。

宿でクラフトビール500円。

バス代360円。

合計1万円弱。箱根ハイアットリージェンシーは会議目的だったのであれはあれで快適で安全で会議設備も充実していて素晴らしかった。しかし箱根ハイアットリージェンシーは個人旅行利用の場合は値段が高い割に文化的なコンテンツに乏しい。根が貧乏性なのか、あちらに値段ほどの面白味は感じられなかったのだよな。

 

 

佇まいの素晴らしい読書篭りの湯「姥子温泉秀明館」

  • 神域から湧出する掛け流し湯

  • ここより厳かな風呂を知らない
  • 眼に効くという明礬温泉
  • 石仏、神箱、御堂、胴鐘
  • 無駄のない清廉な廊下、座敷
  • 4時間ひたすら湯、読書、湯
  • 静けさの3000円の贅沢
  • 館内、どこも写真の被写体だらけ
  • 個人的最良温泉十選認定

f:id:mangokyoto:20181207120823j:plain

湯治場棟は大きな「く」の字を描くように建ち、広々とした中庭がある。

f:id:mangokyoto:20181207123824j:plain

f:id:mangokyoto:20181207120747j:plain

旧本館と湯治棟は長い長い廊下で繋がっており、その先に湯屋がある。調度品のセンスが抜群に良くて、廊下の床も左右端が洗われた玉石敷きだったりと楽しませてくれる。あえて風呂上がりに裸足で歩くと気持ちよく、それを意図した玉石だと思った。

f:id:mangokyoto:20181207120755j:plain

主張しない照明もレトロな乳白ガラス球を並べるだけ。余計なものがなくてなんとも清々しい。

f:id:mangokyoto:20181207115943j:plain

f:id:mangokyoto:20181207124101j:plain

殺風景ではない。煩くならない、それでいて寒々しくならない適切さで家具、陶器、実モノが飾られている。

f:id:mangokyoto:20181207121056j:plain

f:id:mangokyoto:20181207121343j:plain

ここに聖母像をもってくるか。本来、ここにはあまりにも異質なものなはずなのにここ以外にないだろうという当然の風情で収まっている。

 

12月、1月、3月は10:00~16:00の営業、4~11月は10:00~17:00の営業、そして雪深くなる2月は休みだそうだ。あくまでも日帰り湯治という趣旨を貫いており4時間利用できる個室が付いてくるのだが、2500円の畳部屋、広縁のついた3100円の部屋、そして2面に広縁のついた4000円の部屋が合計15部屋ある。冬季は6時間の営業時間の間、各組が4時間利用した後は入れ替えできないので1日に15組程度の客しか実質受け入れていないことになる。 

f:id:mangokyoto:20181207115820j:plain

通していただいたのは広縁に二人がけのテーブルの置かれた和室。電気カーペットもガスストーブも置かれて湯冷めして風邪をひく心配はない。湯沸かしも急須もある。

 f:id:mangokyoto:20181207124421j:plain

おお、いい感じだ。読むには暗くないけれども明るすぎることもなく陰翳が綺麗。

f:id:mangokyoto:20181207124955j:plain

窓を開けると、本館母屋が見えた。

f:id:mangokyoto:20181207130941j:plain

畳に寝転び、ビーズクッションに身を埋め、窓際広縁の藤椅子に腰をかけ。転々と場所や体制を変えながら持ち込んだ本を読む。

 

休憩室という15:00以降の立ち寄り客を含めて誰でも利用できる大きな部屋がある。三和土には4人掛けのテーブルと椅子、マッサージ機が二台。大きく解放された窓を前に、畳にはビーズクッションに体を埋めて寛ぐことができる。

 f:id:mangokyoto:20181207120016j:plain

f:id:mangokyoto:20181207120426j:plain

f:id:mangokyoto:20181207120358j:plain

冬に全面窓を全開放。なんとも清々しい。

 

f:id:mangokyoto:20181207120617j:plain

ここでも読み進める。新緑の季節も爽やかなのだろうな。

 

f:id:mangokyoto:20181207120538j:plain

 

f:id:mangokyoto:20181207120037j:plain

ここがまさに湯治場でかつては共同炊事していた頃の名残りの竃が保存されている。今は火が入ることもなく静まり返っている。

f:id:mangokyoto:20181207120052j:plain

黒の表情が豊か。普段はiPhoneで手軽に撮っているのだが、予感がして今回は少しばかり上等なコンパクトデジタルカメラを持参して秀明館では撮影している。おそらくiPhoneでは黒はこんな風には撮れない。

 

f:id:mangokyoto:20181207120114j:plain

洗い場に流れ続ける湧き水。

 

f:id:mangokyoto:20181207122057j:plain

降ろされた青銅鐘の存在感。

 

f:id:mangokyoto:20181207121752j:plain

ここにも美しく艶やかで深い黒がいた。名は「すず」。人懐こい娘だった。

f:id:mangokyoto:20181207123757j:plain

唯一の2階の客室を拝見。宿泊部屋というより、応接間だ。古い作りをそのまま残し、家具や調度品もそのまま使い続けている年季モノなのだが、清潔感が損なわれていないのが感心する。

f:id:mangokyoto:20181207123809j:plain

なかなか中央にだけ板天井は貼らないものだよな。

 

f:id:mangokyoto:20181207123857j:plain

 

f:id:mangokyoto:20181207120849j:plain

もう一つの洋室休憩室。腰板が張り巡らされ、深いビロード張りのソファが置かれてこれはこれで居心地が良い。

f:id:mangokyoto:20181207120857j:plain

f:id:mangokyoto:20181207120634j:plain

 

まだ結婚する前の彼女と、二人でいても沈黙が心地よいぐらい関係が深くなり、そろそろ結婚もどうしようかなんて頃に、二人して来たかった。

 

で、秀明館を後にする瞬間、ああ、結婚しよう、と心の中で決めたりするわけだ。

 

そう、妄想。

秀明館の風呂、しつらえ、風情、全てに対しての最大限の賛辞。10年後、20年後、30年後にも再訪したい。何か大きな決断で悩みたい時には、ここで熟考するのが良いだろう。

f:id:mangokyoto:20181207123424j:plain

f:id:mangokyoto:20181207120216j:plain

 

探し求めていた神湯「姥子温泉秀明館」

  • 神域から湧出する掛け流し湯

  • ここより厳かな風呂を知らない
  • 眼に効くという明礬温泉
  • 石仏、神箱、御堂、銅鐘古美術満載
  • 無駄のない清廉な廊下、座敷
  • 4時間ひたすら湯、読書、湯
  • 静けさの3000円の贅沢
  • 館内、どこも写真の被写体だらけ
  • 温泉マニアな外国人にささること間違い無し
  • 個人的最良温泉十選認定

 f:id:mangokyoto:20181207190805j:plain

ハイアットリージェンシーから坂道を登って上強羅のバス停留所へ。道中、バスの運転手さんが、我が子自慢のように「ほら、右手の富士山、みてごらん」と誇らしげに教えてくれた。澄んだ冬空に聳える富士山を拝みながら大涌谷経由で姥子停留所まで行く。姥子停留所から目当ての姥子温泉秀明館は歩いてすぐだった。

f:id:mangokyoto:20181207112706j:plain

林間にひっそりと佇む秘湯宿かのよう。いや、ひと昔前はそうだったのだろう。

f:id:mangokyoto:20181207121300j:plain

 山間の廃校になった元尋常小学校が頭の中に浮かんだ。

f:id:mangokyoto:20181207121951j:plain

かつては修験者の為のお湯だったそうだが、その後、湯治場となり、旅館となり、現在は日帰り湯治場となっている。

f:id:mangokyoto:20181207122008j:plain

 10年ほど前に日帰り温泉を経営する「天山」にオーナーが変わりかなりしっかりと修繕されたようだ。一日数千人が訪問するような商業施設ではなく、あくまで湯治場として利用保存していこうという強い意向が感じられる。

f:id:mangokyoto:20181207121651j:plain

敷地内を歩いて回ると、参拝できる神箱と御堂が二つが見つかった。苔むした階段を登ると右手に石仏が並ぶ。

f:id:mangokyoto:20181207122610j:plain

 古びて角の丸まった石に繁茂した苔にところどころ陽が差し、そこが鮮やかな緑に輝いていて目を奪われる。

f:id:mangokyoto:20181207122439j:plain

 石仏好きにはたまらん。2019年は陶仏に挑もうか。はよ、陶仏作りに没頭したくなった。

f:id:mangokyoto:20181207122343j:plain

何かを語りかけてくるような気がしてくる。

f:id:mangokyoto:20181207122406j:plain

味のある古びかたをしている。一色ではなく、色が混ざれば混ざるほど存在感が増す。雨が流れた色、蘚苔類が繁茂した色、その蘚苔類が枯れた色。

 f:id:mangokyoto:20181207122741j:plain

古い石造りの神箱の中にはガラスなのか水晶なのかわからないが大きな珠が入っていた。丁度正午ごろに陽が神箱の中に差して珠が光り輝く。

f:id:mangokyoto:20181207122838j:plain

こんなかんじで経年変化して苔類が緑を加えた風合いの陶器を作りたいのだよな。

f:id:mangokyoto:20181207122912j:plain

溢れ落ちんばかりに盛り上がった苔。

f:id:mangokyoto:20181207122704j:plain

 

f:id:mangokyoto:20181207122656j:plain

 

f:id:mangokyoto:20181207123116j:plain

私の好きな日本文化の美に溢れている。夏と違って柔らかく弱い陽射しを低い角度から浴びて表情が素晴らしい。

 

竹籠にタオルを入れ、湯に向かう。初めて湯屋を目の当たりにした時は「これだ」、と叫びたくなった。たぶん、側から見たら私は無表情のままだろうが、心の中では卓球の張本選手状態。ひんやりとした冬の寒気の中で、静謐に満たされて明るく注連縄と磐座が輝く。湯は透明で湯底まで見える。

f:id:mangokyoto:20181207115400j:plain

ここ姥子温泉は箱根屈指の泉質と名高い。金太郎の目の傷を姥が治したという伝説のある明礬泉で目の病に効くのだそうだ。不思議なことに大涌谷の目と鼻の先にも関わらず、硫黄泉ではない。春から秋にかけては磐座の下の壷湯の底から直接57℃の源泉が湧出し、加水無しで掛け流されているのだそうだ。冬は湯量が少なく、汲み上げているとのこと。無加水、無加温の掛け流しであることは変わらず。

  f:id:mangokyoto:20181207120215j:plain

ああ、これぞ温泉。大自然の中の露天風呂に引けを取らない屋内風呂だ。これを求めてきたのだ。ようやく箱根まで来た執着が満たされて霧散した。別に体も関節も痛いところはないのだけれども、開放感と湯の気持ち良さに心が徹底的に癒される。

f:id:mangokyoto:20181207115415j:plain

平日の午前中、一人、静かに無言で浸かれたのも大きいと思う。6人も入れば窮屈であろうこの湯舟に窮屈に入っていたらここまでの感動があったかはわからない 。

f:id:mangokyoto:20181207203902j:plain

オールタイムトップ10の極上湯。来てよかった。知れて良かった。写真だけを見ても、「おお素晴らしい」と思ってもらえるのかもしれないが、その場に一人背筋を伸ばして湯に浸かり五感で空間を味わった素晴らしさを前にしては、写真で伝わることは僅かだ。

 

大勢でワイワイガヤガヤと楽しみに行く場所ではない。

電話しても繋がらず、来るまで入館できるかは不明。1日15組程度の少人数制で週末だと朝一番にこないと難しいかもしれない。

石鹸シャンプー不可で体を洗う場所はない。

静かに日帰り湯治に励む場所だ。

条件的に来る人を選ぶかもしれないが、私にとっては全てが完璧だった。

f:id:mangokyoto:20181207152159j:plain