アクアイグニス


湯之山温泉に近い菰野の片岡温泉。加水・加温・循環・添加物一切無しの源泉100%かけ流しの風呂が楽しめるのだが風呂場や周辺設備のデザインが惚れ惚れするほど洗練されている。それが宿泊5,500円。入浴のみは600円で利用でき、なんとも良心的。



風呂は大きな内風呂に広大な竹林庭園風呂。夜には竹林が照明で照らされる中、とろみのある湯に浸かってゆっくりとできる。大きな樽風呂の縁に顎を載せてぼんやりと眺めているとストレスも霧消する。まあ、そんなにストレスの溜まる生活などしていないのだけれども。



アクアイグニスの食を担当するのはク―プ・ド・モンドをはじめ世界大会に日本代表として出場して数々の優勝経験を持ち、自由が丘等に人気店を構えていた人気パティシエの辻口博啓とわざわざ他県から多くが食べに行く山形県鶴岡のイタリア料理店「アルケッチャーノ」を営む世界の料理人1000人にも選ばれる奥田政行。ケーキ屋は11時開店に対して9時半から人の列ができ始めるほどで、おそらく平日に有給を取って泊りに来ていなかったならば食べられなかった。幼子がいるのでイタリア料理店で食べることは叶わなかったがそちらも非常に評価が高いらしい。宿泊者は和食堂、カジュアルとプレステージなイタリアレストランの3店から選んで利用でき、ケーキやパンを部屋に持ち帰ってゆっくり楽しむこともできる。


成功している典型的な6次産業の例を観た。近隣の契約農家のほかに敷地内には苺のビニールハウスなどの一次産業があり、家族連れで楽しむことができる。さらにはその苺をコンフィチュールやケーキに加工する工房や石窯パン屋などの二次産業があり、それを客に供するケーキ屋やレストランなどの三次産業がある。1+2+3、あるいは1x2x3次産業で6次産業と呼ぶのだそうだ。


地域の巡回バスもくるロータリーがあり、自治体からも全面的にサポートされている様子が伺える。県外からも客を集客するだけでなく地元民からも自慢の憩いの施設として親しまれているのがわかる。これ以上人気が加熱してしまいやしないかと不安になるほど。



全体の建物や内装の意匠も素晴らしい。和風だけれども茶目っけのある崩しようで、白くミニマルな空間の中に冷たく殺風景にならないように有機的な要素が散りばめられている。


どこからどこまでドストライクな天然温泉宿泊飲食観光施設。アクアイグニスを総合プロドュースした人は天才としか言いようがない。遠方から行きたくなるようなこんな施設が地方の各地にできたら日本は素晴らしいことになる。京都の自宅から車で1時間強、そして一泊5500円の値段の手頃さ。これはまた行きたくなる。


http://aquaignis.jp/