天青

熊澤酒造という茅ヶ崎にある酒蔵に併設された料理屋で子供の誕生日を祝った。


ここにはトラットリアというイタリア料理店と、天青というこの酒蔵の日本酒銘柄を冠した和食料理屋があるのだが、今回は天青へ。

重厚な黒光りした梁を露わにした内装。床板も磨き込まれて艶がある。もともと蔵として使っていた部分を改装したのか、ところどころに古びた酒造りの器具や酒蔵内に貼られていたであろう「器具は使い終わったら元の場所に戻す」だとか「整理整頓」と書かれたブリキのプレートが柱に嵌められていたりする。


雰囲気を借りただけではなく、料理も美味しい。吟醸ヌタを用いた酢の物や、黒麦酒に漬けた豚など、熊澤酒造ならではの個性的でかつ美味しい品々。残念ながら車で来ていたので日本酒と合わせることは出来なかったが柑橘の風味を付けたノンアルコールビールを頂いた。場所柄、車で来る人を見越してか、単にオールフリーなどの市販品を出すのではなく味や風味を工夫したノンアルコールビールが充実しているのも素晴らしい。出される無料の水も敷地内の深井戸から汲み出される丹沢山系の地下水であり、ここの日本酒の仕込み水でもあり甘い。



曇り硝子の入った建具は枠を拡張して現代の人の身長や様式に合わせて手が加えられていた。このような古建具を家に取り入れたいという自分の好みに確信が持てたのは収穫。


サービスも何処ぞの五つ星ホテルの従業員と遜色しない。自信と誇りと自主性と余裕が感じられる接客なのだよな。デザートプレートにメッセージを書いてくれ、花火とともに持ってきてくれた。手慣れた様子でチェキで撮影し、写真立てに入れてプレゼントしてくれた。


創業141年、湘南唯一の蔵元。内情や実態は知らないけれども、こういう勤め先に終生尽くすというのも一つの幸せかもな、などと思う。

立地は不便極まりないのに平日の昼から客単価1人あたり3000円以上する店が満席だった。立地が悪いなどというのは言い訳なのだと突き付けているような店だ。味良し、雰囲気良し、接客良しならば遠くから目的地にして客は来る。


ここも2次産業と3次産業が感心する水準で両立し、相乗されられている好例。内装から置かれている備品まで自分の好みど真ん中。