そりゃあ、もう、ジャイプールにも一泊3万〜5万円、果ては10万円もする高級宮殿ホテルはいくつかある。ムンバイで泊まっているトライデントホテルの系列ホテルだって3万円近い。
それらに対して、このアルシサール・ハヴェリが1泊8500円って驚異的ではなかろうか。東横イン価格、プレッソイン価格と考えてみるとどうだろう。費用対効果のレバレッジ率が最高なのではないかという話だ。
インドはやはり物価が安い。昔、1泊数百円の安宿を転々としていたような庶民がこんな立派な邸宅に泊まらせて頂いて申し訳ないです、マハラジャさん。
シャワーの出が少し悪いとか、網戸の建て付けが悪いとか、タオルが繰り返し洗われすぎてごわごわしているとか、日本基準で少し足らない部分は幾つかあるけれどもそれを補って余りある雰囲気がある。旅の愉しみは異国情緒であって日本と同じものを求めても仕方がない。
エアコンも天井のファンもあるし、無料の水も紅茶を飲む給湯器もある。これ以上、何を望もうか。
客室数は30はあるだろうか。そこら中にウェイターというか従業員がいて、水周りや家電も最新とは言わないがそれなりに不便の無い水準のものが揃っている。このホテルにこの値段で泊まれるのは客として有難いが、経営側としてはどうなのだろうかと心配になる。おそらく、従業員の給金が気の毒なほど安いのだろうな。
夜には中庭で異国の笛の生演奏に酔いしれながらあれやこれやの考え事に耽りながら食事ができる。ブッフェで950INR。お酒は追加料金だが、ガーリック、バター、プレーンの中から選んで焼いてもらうナンもカプチーノも追加料金は無しだった。
魔法がかかる夜景。
なんと、ここは犬OKなのか。躾の行き届いた良家のお犬様のご様子。
イシグロカズオ氏の「日の名残り」を読んでいる最中なのだが、こんな大邸宅を切り回す執事の姿の想像が補完される。往時には何人の召使いが働いていたのだろう。
宿泊客が食事を取れる大食堂には長い、長い食卓がある。かつて何十人ものゲストを主人がもてなすこともあったのだろう。
ああ、働きたくないよう。