どうやら10頭預かった蚕のうち、1頭ほど4令、5令のサンプルとして展示飼育していた幼虫が混ざってしまっていたようだ。それがもう既に繭を作った。
まさに絹糸を吐いて繭を作っている途中。外側の輪郭から作り、中から幾重にも幾重にも糸を重ねている。
本来、養蚕業者では厚紙で作った「まぶし」という仕切りに繭を作らせるのだそうだ。幸い桐箱ということもあり、箱の隅が繭を糸のとっかかりも良かったようだ。
繭を作り始めて2日後。おそらく、これで完成形だろう。蚕種「小石丸」は品質は高いが改良種が1km近く出すのに対し500m程度しか採れないらしい。確かに小ぶりな繭だ。このまま12日ほど置いておくと羽化するらしい。
学校に持っていくと、冷蔵庫で保管してくれるらしい。夏休み後、一通り収穫できたら製糸工場に送られる。
根元の方の桑の葉をあげたら全く食べなかった。そこで上の方の新葉をあげてみたらカリカリ食べている。忙しなく頭を上から下に振り下ろしながら食べる姿は見ていて小気味良い。
時折り、頭を持ち上げて固まるのだが私が見えているのだろうか。人間無しに生きていけない完全に野生回帰能力を失った唯一の家畜とされる蚕。温暖な室温と調節された湿度の中で新鮮な桑の葉を途切れることなく与え続けられるその一生は蛹のうちに殺されてしまうとしても、食欲を満たし続けられるまんざらでもない生涯なのだろうか。