陶蟲夏草鉢「蚕蛾」 X ハオルチア「十二の巻」

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蟲を苗床にして生える植物のイメージは玉葉のサボテンや多肉植物になりがちだけれどもこんな細い葉もありではないか。白の幅が太い、いわゆるワイドバンドと呼ばれる十二の巻。
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蚕蛾はせつない。毎日狂ったように食べ続け、基本的に繭から出ることなく煮沸されて殺される。繭から羽化することを許された蚕蛾は餌を取る機能もなく、狂ったように交尾をし、自ら中断する判断もできない。人間の手で引き離す「割愛」をしてあげないと体力を削って交尾し続けてしまう。もう後戻りできないまでに人間に歪んで改変されてしまった経済動物
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そんな少し感謝と憐憫の気持ちで見ていた蚕蛾だが、もしかしたら短い命を快楽で埋め尽くすように生き抜く幸せな奴らなのかもしれないとも思うようになった。本能を満たすことが幸せならそうかもしれない。人間に置き換えたらそんなものはまやかしの幸せで自由を希求するようにも思う。どちらなのだろう。

 

そんな人間が命を弄んで改良し続けた結果としての変わり果てた姿やら、物悲しさやら、本能を満たすのに貪欲な姿やら、そんな多面性や訳のわからなさが形に表せればと願う。狭義に冬虫夏草というと蝙蝠蛾の幼虫に寄生するキノコなので、蛾の陶蟲夏草は王道たるモチーフなのだろうが全く消化できていない。