私を残して妻子が泊まりで旅行に出かけた日があった。一時の独身を楽しむべくずっと気になっていた高円寺のフレンチビストロ「BISTROT La Pomme de Pin(ラポムドパン)」へ1人で入った。店名は直訳すると松の林檎、意味としては松ぼっくり。
家族内では私しかお酒を飲まないので、ワインを楽しむような店はこれまでなかなか行きづらかった。今日のテーマは美味しい上等なグラスワインとがっつり肉料理を孤独に楽しむこと。
敷居の高すぎない、レストランではなくビストロ。
カウンターで1000円ほどのフランスの赤ワインを頂いた。メルロー主体のボルドーワインと言っていたっけ。写真を撮らないとすぐ忘れてしまう。
アミューズも美味。
前菜盛り合わせも美味。とりわけ茄子のバルサミコ酢和えが絶品だった。一つ一つしっかり丁寧に作られているように思う。
一人でボーッと室内照明を透過し集約された紅い光点をグラスを揺らしながら眺めるとなんだかとても癒される。
まるで暖炉にくべられた薪が燃える様を眺めている時と同じような気分になる。
R指定の4種のチーズが蕩け出す黒毛和牛ハンバーグ2400円。R指定されなくとも子供に食べさせられない大人の値段。フレンチビストロが看板商品にするハンバーグなんてどうしても試したくなる。
割るとチーズがとろりと這い出してくる。肉汁濃厚。赤ワインの入ったソースに更に釣られて赤ワインを飲むペースが速まる。グラスワインのフルボディの赤はこのハンバーグに合わせることを想定しているのだろうな。
エスプレッソと合わせたくなる。フランスではアメリカンではなくエスプレッソを飲む人が多いのは食事中にたっぷり食べて飲むから、濃縮された液体量が少ないエスプレッソでしっかりとカフェインも取りたいからだろう。
死ぬ前の最期の美酒を飲むとしたら日本酒だろうか、赤ワインだろうか。最期に飲みたい日本酒と赤ワインの銘柄を今後10年のうちに選んでおきたいようにも思う。
テラス席もあり、ペット同伴も可能なのも良い。また1人と1匹がお留守番する夜に再訪したい。