蝉の幼虫の陶蟲夏草鉢が焼き上がった。
ひしゃげた鉢は失敗作の誤魔化しや再生ではなく一手間加わった個性になってくれた。予想の延長にない出来栄えが嬉しい。
青緑色の突起を粘菌のルリホコリに倣って架空のヒスイホコリと名付けた。
火焔茸のような自然造形がこの鉢に合う。
一つ、進歩できただろうか。進歩できたように思う。まだ進歩し続けられるその入り口にいる実感もある。
粘菌のアメーバらしいブツブツが根本には出た。子実体の上部をブツブツとさせたかったが銅系釉薬は発泡しないのかもしれない。
「蝉の一生は短い」「八日目の蝉」だとか言って「あはれ」の象徴のように思われ、勝手に憐憫の対象にする。しかし蝉の一生の中心は7〜10年の幼虫時代であってけして短命ではないし、私たちが目にするのは生涯を終える最期の数週間だけ。例え羽化できなくとも交尾できなくともその蝉は蝉としての生涯の大部分を地中で全うしているのではないか。
蝉は地中と地上の生活はどちらが楽しいのだろうか。ただ衝動に忠実に生きて死ぬんだろうな。
いろいろと思うことを込めすぎたかもしれない。