兜蟲の陶蟲夏草鉢を2鉢焼いた。
海外にはヘラクレスやネプチューン、ゴホンヅノなど胸部に巨大な角を持つ見た目が豪壮なカブトムシが何種類もいるが、やはり頭部に長い上向きの角を持つヤマトカブトムシがかっこいいように思う。カブトムシの餌場争いでの戦闘力は角を相手の体の下に差し込み掬い上げて放り飛ばす点にある。胸部から下に向いた大きな角は鈍重で戦いにおける実用さは劣る。
このフォークのような角は単に見慣れたカブトムシの姿だから愛着があるだけでなく、用の美だからだとも思う。
ヒョロヒョロと子実体を伸ばす冬虫夏草に見立てて乾燥させた葡萄の蔓を挿した。吟味に吟味を重ねたお気に入りの蔓の一つだ。単純にくるくると巻きつく蔓ではなく、葉など動く対象に巻き付かないとこうはならない。
それが何かを探し求めて伸び続ける菌糸類の子実体らしくて良い。
もう一つの兜蟲鉢。
こちらは頭部と胸部だけが転がった状態を表現してみた。
正直に言って釉薬をかけるとこのような角の形状は溶けて垂れ下がりやすい。釉薬を厚くかけると重くなって垂れ下がる確率が上がり、釉薬が薄いと強度は下がるし色が乗らない。その運と勘頼みの危ういバランスのなかで焼いている。
適度な気温と湿度で一気に萌芽した粘菌の子実体を表現。
土を入れてヒョロヒョロと立ち上がるセダム「虹の玉」や「オーロラ」のような多肉植物を植えても合うのではなかろうか。