高円寺で宇宙物理学者とアシッドテクノな夜

京都に住んでいた頃知り合った京都大学で客員研究員をしていた友人が来日したので高円寺で会った。

 

流行りのピカピカと新しい場所よりもガード下の居酒屋、おしゃれなソファよりもビールケースをひっくり返した椅子を愛する男だ。私がそっち方面の好きな場所に連れて行けば良いので気楽だ。

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はやとちり、抱瓶、あちらぼ、きよ香と3軒梯子して、どっぷりと高円寺らしさを堪能してもらった。きど藤など満席で入れない店も多かった。北口の通路幅1m程度の狭い裏路地にある老舗沖縄料理屋「きよ香」は初めて入ったが高円寺で生まれ育ったという親父さんと娘さんが経営していて感じが良い店だった。

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カウンターに年恰好の違う三人組の男がいて、古い友人のような仲の良さで長いこと話していたが勘定を締める段になって互いの名前を名乗っていた。そのゆきずりの関係に友人は驚いていた。

京都では日本人との壁を感じて孤独に苦しんでいた外国人学生が沢山いたそうだ。表面的な親切さの壁。彼も打ち解けられた日本人は少なかったそうだ。少し親しくなったらやたらとあの女の子に声をかけろと無理に押してくるような男の友人が嫌だったと言っていた。別に白人男性はみんなが日本人女の子と遊びたいわけではないのに、と。夜の遊びを安易に共通の関心事のように見做してくるのが興醒めだったと。

 

居酒屋で隣り合っただけで古くからの友人のように打ち解けて話す人もいれば、表面は親切だが懐に一切踏み込ませることのなかった多くの京都時代の友人たち。日本人の距離感は未だにわからないという。

 

昨日は日帰りで青森まで行き弘前城の桜を見てきたそうだ。彼曰く、桜も悪くないが深みがあって素晴らしかったのはモミジの新緑だと。やはり彼とは気が合うのだな、と思った。彼も世間で良いとされているものに靡かず、好きなものを掘り下げるタイプだ。
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最後にぶらりと立ち寄ったのは昼間は古着屋で夜は3時まで音を出している店。今日はアシッドテクノ好きなDJが回している。
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ここ、最高にご機嫌な店だな、と友人は大喜び。見た目がおっかなそうなラッパー然とした人達がlove&peaceな気やすさでカタコトの英語で全く恥じることなく友人に話しかけてくれる。
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大音響なのでかなり互いに顔を近づけて叫びながら会話する。その距離感も良いのだろう。
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Takaaki Itohのヨーロッパ公演に何度か行ったという友人。DJとその話で盛り上がっていた。
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こういう小箱がちらほらあるのも高円寺の良いところ。
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自慢のガンプラコレクションを見せびらかす友人。ラッパーはザクレロの良さを熱弁していた。私には興味のない世界だが微笑ましい。
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ここ、最高だわ。お前は帰るんか?おれは終電後までいてタクシーで帰ろうかな。帰りたくないねー。そう言いながら緑茶ハイをおかわりしている。だいぶ酔ってきている。
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明日は京都で共同研究プレゼンとか言ってたので、危険を感じて強制帰還させた。

 

タイムマシンをはよ作れ、タイムマシンを作れないなら宇宙物理学に価値はないと彼に文句を言ったらお前は宇宙物理学を全く理解していない。でも価値がないことは当たってるけどな。そう言ってご機嫌だった。

 

5年ぶりに会ってもお互いを飾ることなく先月あったかのように話を続けられる友人というのは国籍を問わない。波長というか、相性というか、そういうものがある。