上半期映画備忘録

最近のアカデミー賞で話題をさらった「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」や「アバター ウェイオブウォーター」「西部戦線異状なし」「イニシェリン島の精霊」、スピルバーグ監督の「フェイブルマンズ」、ケイトブランシェットのホラー「タ―」などが観られるのではないかと映画館で観ることを我慢していたのにどれもANAでは機内上映していなかった。残念。

 

湯道 ☆☆☆ 百選

「幸せを探し求めてはいけません。気付くのです。」


湯を点てる、か。茶道に見立てていて面白い。大袈裟に大真面目にやるバカバカしい楽しさがある。感動大作というわけではないけれども観れば風呂に入りたくなる、繰り返し観たくなる作品。

赤富士、青富士の銭湯絵の見事な銭湯に行きたくなる。北千住の大黒湯、タカラ湯に久しぶりにハシゴしたくなる。

山頂のくれない茶屋の絶景五右衛門風呂も人生に一度は入りたくなるような風呂。

小日向文夫の気持ちの良さそうな表情が良い。

 

オリジナル企画脚本の映画だそうだ。漫画や小説の映画化ばかりでなくこういう映画を頑張って作ってほしい。気張らずにほっこり観られる、心温まる作品。モデルになった長崎の丸金温泉に行きたいがこちらは2009年に廃業してしまったとのこと。

https://yu-do100.jp

単に映画を作って終わりではなく、茶道のように湯の道を真剣に考えていて湯にまつわる様々を情報発信するサイトも作られている。銭湯の未来と題された墨田区「黄金湯」に行こう。

 

「下鴨茶寮」の主人にして「おくりびと」の脚本を書き、「料理の鉄人」などの人気番組を作り上げた放送作家でもある。こういうクリエイターに資金を集めて好きにあれこれ作ってもらって欲しい。

 

Blue Giant ☆☆☆

ところどころの演奏シーンのアニメがぎこちなくポリゴンのロボットの動きのよう。スラムダンクのような人間の動きをアニメ化した滑らかさが感じられない。


とは言え、JAZZの迫力と熱さを感じられて胸が躍る。小手先のテクニックではなく内臓を曝け出すようなその時点での最高なパフォーマンスに全力を尽くすことの充足感と幸せ。陶芸作品を作る際にも意識したい心意気。

友人にもお勧めしたくなる作品。

 


オットーという男 ☆☆☆

最近は原作のハリウッドリメイクが多い気がする。スウェーデンの小説を元に既に2015年に「幸せなひとりぼっち」という映画が実写化されているのだが、そのハリウッドリメイクとなる。ストーリーが秀逸だとハリウッドのトムハンクスのような演技派名優を当てればそれなりの名作にはなるが、リメイクが必要だったのか。原作でも十分ではないかと思ってしまう。リメイクすること自体が前作では不十分だと見做しているようで少し複雑になる。

 

ザ・メニュー ☆☆

純粋に美味しい料理を誰かに喜んで食べてもらいたい料理人にとって、料理や料理人、店を大上段から好き勝手に評価することを生業にしているグルメ評論家や予約困難な1席1食に10万円以上を費やすことを厭わない金持ちはどう映るのだろうか。その答えの一つを示したような映画。

 

頭でっかちでどんな食材を使っているかや蘊蓄が口から止まらず、その一方で自分ではろくに料理も作れない男を死に追いやるくだりなど強烈に毒が効いていて面白かった。

京都のNOMAを食べた自慢みたいなものには醜悪さを感じる。

 

私の好きな陶器に置き換えて考えてみる。陶器を作りもせず、使用目的でなく高額転売目当てで購入するコレクターや評論家がいたとしたら面白くないかもしれない。好き勝手に評価を付けてそれを生業にしている人に反感を持つだろう。あなたの技法は〇〇ですね、〇〇を使ってますよね(ニヤリ)みたいな輩が仮に私の作品を買い占めて普通に使いたいお客さんに作品が届かなかったら嫌だろうな。まあ、幸いにして私の陶器は人気も知名度もないし購入したい人がいることのほうが稀だから杞憂だが映画作品のシェフの気持ちは少しわかるような気がするという話。

 

ベゾス The Beggining ☆

1994年にAmazonを起業したジェフ・ベゾスの自伝的映画。プリンストン大学を卒業して証券会社の史上最年少副社長だったというところに少しアメリカンドリーム感は醒める。証券会社の副社長が起業するのに30万ドルを親に借りる必要があったことには大きな疑問。

伝え聞くに彼はもっと傲慢で傍若無人で短気で怒鳴り散らすキャラらしいのでそれが正しいとするとこの映画はそうとう善人よりに美化して描いていることになる。

Facebookのようにもっと修羅場や影、闇も描いて欲しかった。

 

ケイコ目を澄ませて ☆

聴覚に不自由な女性プロボクサーの話。淡々と描かれていく。

確かにセコンドの指示もゴングの音もレフリーの声も聞こえないというのは危険極まりないがそこに生甲斐を見出した場合はもうどうにもならない。

小笠原恵子という生まれつき耳が聞こえずプロボクサーになって4戦戦った本人の自伝を実写化した作品。第96回キネマ旬報ベストテン1位作品だそうだ。

私の中では「コーチは女ばっか教えてるじゃないですか」「ここにいても強くなれない」と吐露して別のジムを去っていく練習生のシーンが印象に残る。なぜか心情として主人公になれない脇役の心境に関心がいってしまう。

 

65 ☆

パニック映画なのかスリラーなのかファンタジーなのかどっちつかずで終わった感はある。ジュラシックパークでリアルな恐竜に見飽きた私たちに魅せたかったものは何なのか。武器はプレデターを彷彿。

 

ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー☆

黒人やラテン系の住民が描かれたり、マリオカートのシーンが多かったり、やんちゃおてんばなピーチ姫の印象が強かったり、クッパがピアノを弾いて歌うシーンなどハリウッドが国際市場を見込んで作りこんだ作品である印象が強く残った。日本で制作していたらそういう「配慮」がことごとく抜けるのではないだろうか。

子供たちが喜んでいたので良しとする。


The Whale ☆

過食で270㎏まで肥満し末期の男が最期に娘と和解する話。ううむ。

聡明な彼ならばもっとやりようはあったのではないかと残念に思う。

ハムナプトラ」で大成功した後、鬱病や離婚で苦しんでいたブレンダン・フレーザーだからこその何か苦悩や情念の籠った演技。

ホン・チャウに注目。メニューにも冷徹な給仕役で出ていた注目アジア系名脇役

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トロントの男 ☆

ウディ・ハレルソンの不器用な拷問スペシャリストという裏稼業設定は似合っていた。女性に不慣れというのは面白みはあるが、これってシティハンターの海坊主だな、と見ていて思った。

 

 

 

ガンマン ☆

ショーンペンのアクション映画は久しぶりに観た。似たストーリーの映画作品はどれだけあるのだろう、という印象。

 

ブレットトレイン ☆

ハリウッドの日本を舞台にした映画はいまだにキルビルの世界から抜けていないし変わってもいない。途中で読むのを挫折した伊坂幸太郎の「マリアビートル」の映画化ということでテンポの良い映画なら楽しめるかもしれないと思って見てみた。真田広之は相変わらず、チャンバラしていて期待通りとも役に広がりのない使われ方にガッカリとも言える。あまり期待せずにキルビルウルヴァリン風味の悪趣味なバイオレンスアクションを懐かしむための作品。