シアトルに思う

空港からuberでホテルまで送ってくれたのはアリゾナワシントン州に合計47年住んでいるというベトナム人の男性。共産主義から両親共々逃げてきて英語が全くわからない中で苦労して生きてきたそうだ。カジノのマネージャーを長くやっていたが不景気でクビになり、ここ数年はドライバーをしているという。

道中、ホテルの近くには美味しいベトナム料理があることや、あれがスターバックス本社ビルだ、このトンネルは日本のトンネル掘削機を使って5年かけて開通したなどあれこれ教えてくれる。

テスラを乗っていたが追突貰い事故で廃車となってしまい、それを機にEVは懲りたと言っていた。修理に時間と金がかかりすぎると。今はホンダに乗っている。EVではなくハイブリッドが結局正しい選択なのではないか、トヨタ経営判断を絶賛していた。

ちなみにuberはマージンを40%も取られるそうだ。私は荷物が空港のカルーセルから出てくるのを待つ間にuber予約をしたが、荷物が出てくるのが遅く8分ほど彼を待たせていたらしい。uberの仕組みでは運転手の側からそのような客は4分を過ぎるとキャンセルできるが、キャンセル料は$4しか手に入らないから待っていてやったと2回繰り返された。ホテルに着く頃にはチップを払わないといけない空気が出来上がっていた。総じて気持ちの良い一生懸命なドライバーさんだった。

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ホテルロビーの受付の方に徒歩20分先のパイクプレイスまで歩いて行っても治安的に大丈夫かと聞く。日中ならば問題ないが夜はお勧めしないとのこと。傘を借りて時差ボケをなおしがてらの散歩に出る。
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シアトルの観光地の一つパイクプレイスは観光市場のようで鮮魚、果物や野菜の店、土産物屋が並ぶ。
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なかなか立派なビール醸造所があり昼から飲んでいる人がちらほら。
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おや、エビスビールのポスターが。
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日本にも一時期とても増えたようにレトロ懐古趣味な比較的新しい商業施設という印象。
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鮮魚店では凍ったキングクラブやロブスターなどが並ぶ。
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看板魚が挨拶してくれている。こういうのを眺めながら散歩するのは楽しい。
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シアトルに住んでいる人はパイクプレイスで買ったりするのだろうか。型が揃って美品ばかりなので観光市場の観光価格ではないかと疑ってしまう。

キングクラブが1lbで$349。1lb=0.454kgだから、ざっくり1kgで10万円越えか。算数できなくなっているかと自分を疑う計算結果だ。

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なかなかのお値段。
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気軽に買えない。そして日本の果物のイメージで食べると酸味が強そう。それは良くもあるけれども、手をかけない野手溢れる果物には値段の手頃さも期待してしまう。
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シアトル名物の各賞総なめにしているという名物クラムチャウダーを食べた。名物はパンに入った状態で出してくれる。ルーマニアにも同様のものがあり大層美味しかった記憶があったのでパン入りを頼んだ。飲み物なしで$19ほど。2800円ぐらいか。
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食べ終わる頃には胃腸がホームシックになっていた。これが絶賛する味なのかと苦笑い。濃厚で重たく、お腹に優しい感じではなくもたれた。パンが硬く酸っぱく味わいがないので完食するのがしんどかった。周囲を見るとパンはほとんど食べずに捨てている人が多い。日本のスープストックはレベルが高いと思った。
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ハンドクラフトを売っている出店が並ぶ一画もあったが印判手の大量生産品だったり、シンプルな筒状の形にカラフルな釉薬を相掛けしただけの陶器しか見かけず心躍る出会いは残念ながらなかった。
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パイクプレイスマーケットのすぐ向かいにシアトル初の世界的カフェチェーン「スターバックス」の1号店がある。8人ぐらいが店の前に列を作って入店待ちしていた。夏は1時間待ちもザラだが今はとても空いていて5分も待てば入れるよ、とのことだった。
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ここだけは緑の人魚のロゴで統一される前の茶色のロゴが未だ残されている。
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魔法瓶のボトル$24。
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旧ロゴ入りタンブラー$19。旧ロゴ入りの製品はこの店でしか買えないアイテムだそうだ。スタバ好きな人には良い土産になるのだろう。
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店内には飲食できるスペースはなく持ち帰り専門だった。

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ダウンタウンから観覧車や水族館などの並ぶ海沿いまで高低差がある。
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途中、名物となっているらしいみんなが噛み終わったガムをなすりつける壁を見た。そのスケールよ、感性よ。小学生低学年か。
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ゴッサムシティ感のある景色。
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レストランや遊興施設が複数入った観光施設はお台場のDECKSに似た立ち位置か。
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そんなに大きくない観覧車で回転スピードが結構、速い。
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中には回転木馬や射的のような今の若い子からしたら映画やドラマの中で見たことがあるような光景。テーマパークのように古びたように作られた新しい内装だ。
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もう、完全にレトロ遊戯館が貫かれたテーマ。スペースインベーダーパックマンなどが遊べる新しくて清潔なゲーム機が並ぶ。
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その世代ではないのに昔懐かしくて新鮮な雰囲気は世界どこでもニーズのあるコンセプトなのだろうか。しかし清潔で新しく、ハリボテ感がある。
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シアトル初日の印象はデストピア感だった。暖かい夏の週末で人が賑わうパイクプレイスを誰かと一緒に訪れていたら印象は大きく変わっていたのかもしれない。冬に1人で歩く観光客が温かみを感じられる場所はなかった。
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街を歩いているといたる街角にホームレスがいる。雨が多く夜には気温0度を下回る寒さのシアトル。
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そして人通りの少ない細い路地裏には何人かがたむろしておりこちらをじっと眺めてくる。マリファナの香りが漂ってくる場所も多い。フォーシーズンズホテルの前でも若い黒人数人がマリファナを吸っていた。

夜はやはり独りでは歩けない。

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GoogleMicrosoft、Meta、Amazon、Boeing、CostcoStarbucksなどなど世界的大企業の本社がひしめくシアトル。シリコンバレー同様に高所得従業員も多く、治安も良く暮らしやすい都市とされるシアトルのオフィス街から近い中心の観光地でも歩く時間や場所は選ばないといけない緊張感を感じた。

 

それぞれ異なる場所で何かを大声で怒っているように叫んでいる人を5人ほど見た。世の中を呪っているのか。物価も高く、お金がないと暖かいカフェやレストランで休憩することもできない。1人だとなおさら居心地がない。人生が上手くいってない人が容易にやり直せなさそうな空気感を街に感じる。自暴自棄になった人とすれ違う怖さのようなものがある。

 

独りでも気軽に入店することができ話し相手も作りやすい飲み屋が多くある日本の街でモノづくりを含めた文化的好奇心を満たす生活を家族と静かに送りたい。シアトルのような街にワクワクしないのは自分の価値観が求めるものを見つけられなかったからなのか、自分が老いたからなのか。そんなことを考えながらホテルに歩いて戻った。