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太田富夫さんの備前焼

陶芸

招待客券で一般よりも早く入場できるチケットを頂き、東京ドームで開催されているテーブルウェアフェスティバルとやらに行ってみた。


テーブルウェアという名称に違和感があるが、沢山の陶磁器の展示即売会でもあるらしい。


入場してみたものの、来賓やスポンサーの祝辞やら表彰式でかなり座って待つことになった。高円宮妃殿下も来られていた。40分ほどして入場できたのだが、会場は途方もなく広い。初めは招待客だけだったこともあり快適に見て回れたが、一般客が11時から入場すると相当な賑わいになった。


結局、陶器の売られている一画を回るだけで2時間半が過ぎてしまった。しかし信楽で宿泊できる陶工房を運営されている小川顕三さんや、京都五条坂の陶芸市で海老や飛魚が描かれた平皿を幾度か購入した唐津の窯元「春窯」など知っている窯元もあり、嬉かった。


今回の一番の収穫は太田富夫さんの作品を知ることができたこと。備前焼を登窯で焼かれている。他に備前焼の窯元は幾つか出店していたが、どれもテカテカとしていて好みではなかった。備前焼はもっと土肌の滋味のある焼物だと思っていたので普段目にする備前が想像と異なりがっかりしていた。しかし、太田さんの備前は想像の中の備前の通りの印象でテカリの無い土味に溢れ多彩な焼き色の陶器。


土肌のテカリは二日ほど長く焼けば消せるものだという。技術的に難しいことは何も無いと。ただ、そうなると燃料費が嵩む。ただそれだけだが彼自身の矜持としてテカリのある備前は出したく無いと言っていた。

登窯できつく長く焼くと緋襷などが光沢を帯びてくる。そういう部分的なテカリは出したいのだそうだ。


一輪挿しや楊枝入れに使えそうな小さな小壺が売られていた。土肌は何色にも変化し見ていて飽きない。黒、灰、赤茶、海老茶、焦茶から青味のある灰まで。しかも同じ表情の器は二つと無い。そんな器達が一つ1,000円で売られているのだから今日は買う予定はなかったのだが気付いたら紙幣を取り出していた。


お茶を頂戴しながらあれこれ話を聞かせて頂いた。


これは更に大きい器の内側に入れて登窯で焼くことで踊る焔や灰の効果で出るそうだ。これだけの表情の変化を大きな作品で出せると途端に器の値段は跳ね上がるのだと仰っていた。


登窯を焼くのに一回60万円近くかかると言っていた。登窯が何段構成かなどでも変わってくるのだろうが、陶芸稼業の採算構造が全くもってわからない。本人も割れてばかりでたくさん焼いてもかなりのモノが駄目になると呻いていた。




しばらく目が釘付けになった大きな花瓶で土肌に多彩な表情の出た作品もある。端正な形だが轆轤ではなく手捻りだと言う。それを登窯で焼いて歪まないのが不可思議。しかも登窯で三度も焼いて表情を引き出したものだそうだ。欲しくて欲しくてずっと眺めていたのだが、最初からこういう作品を買うもんじゃないと嗜まれた。小さな作品から徐々に大きなより個性の強い作品へと段階を踏んでもらいたいのだそうだ。作家としても最初にこれを買われるとその先や上がなかなか無くて困ると。2万5千円。けして高いとは思わないが金は無い。

今回、この花瓶に縁はなさそうだがいつかは我が家に迎えたい。こんな花瓶に筒型の簡素な椿を一輪、投げ入れたらたまらん風情だろうな。