金柑大福が美味。和の装いの山桜桃屋(ゆすらや)

地方都市には数はあるけれども、都心にはなかなかない。 

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高円寺北の中通り商店街にある小さな小さな和喫茶が前から気になっていた。たった6席なのでうるさくする子供を連れて行くわけにもいかず、今まで行きそびれていた。店先には「氷」の水色の暖簾がたなびく。

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3人ほどの作家の器が入り口横に展示販売されている。どれも自己主張しすぎない、滋味にあふれた器。

 

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少し旬を外しているのだけれども、金柑大福を抹茶とともに頂いた。

 

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金柑はシロップ漬けのようだ。しっかり浸かってくれているようなので、むしろ今が大福としては旬か。酸味が爽やかで、大福に合う。苺大福のほかに大福の中に入れて本音で合う果物に出会ったのは初めてかもしれない。

 

昨今の名物はかき氷だそうだ。滋賀の和菓子の老舗から取り寄せた金柑シロップのかき氷が美味しいらしい。宇治抹茶のかき氷も気になる。

 

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客に出される器はどれも使い込まれた器ばかり。こちらも売って欲しいものだ。

 

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中通り商店街から店内に数メートル入っただけで、静かでゆったりとした時間が流れる。思えば、自宅の書斎をこんな木と麻と陶器で構成される素朴で少し懐かしい内装にしたかったのだよな。


一見客がふらりと入って店内で見聞きできるよりも遥かに豊かなコンテキストを店はもっていたりするもんだ。商いという観点から考えたら6席の喫茶店なんてものはどう成り立つのか。算盤勘定を超えた拘りや思いがなければやれない。


桐の女下駄をカランコロンならしながら小さな厨房と客席を行き来する30代と思しき若店主。どんな思いや経緯があったのか聞いてみたい。最近、他人に興味が出てきたような気がする。


良い店を開拓した。

 

火曜、水曜定休日。

12:00〜20:00まで営業。

日曜日に作陶の帰りに立ち寄るのに丁度良い。

 

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駅前まで戻ると阿波おどりの準備で忙しそうだった。祭を観終わるともう夏も終盤。もう、エアコン無しでも全く快適に夜が寝られるほど暑さも和らいでしまった。夏の終わりがあっという間に近づいてきて、少し寂しい。

 

たまの贅沢にラピュタ阿佐ヶ谷「黒猫軒」

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平日のランチだというのになかなか予約をしないといけないほど人気の店だという。

 

ラピュタ阿佐ヶ谷という単館系、アート系やリバイバル映画を上映している施設の最上階に入っているレストラン「黒猫軒」。いままで住んでいた街にも何軒か同名の店があったが、どれも共通して人気の老舗だったように思う。

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焦茶の煉瓦に木目の卓。余計なものが何もない、寛げる空間。一品、一品が待ち遠しくなる。

 

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 夏らしいスターター。ガラスの器は食事の素材だけが見えてこれも素敵なものだな。

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 もう1ヶ月前にもなると、写真を見ても何を食べたのか覚えていないが、忘れないように記録しておこうと思うぐらい美味しかった印象はある。小蝦や白身魚フリットだったように思う。

 

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真紅の赤ワイン煮込み。もうみたまんま、柔らかい。本格的なやつは、ほんのり苦い。

 

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 そしてデザート。ショートケーキがボリュームも多く、さらにソルベもついていて一番満足度が高かったように思う。

 

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 パッションフルーツ好きにはこちらのパンナコッタ。

 

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ちょいとばかり贅沢な3900円のランチコースだった。子供抜きのランチとなると、貴重な機会だから財布の紐は緩みがち。

 

静かな店内、程よい空調。食べ終わると、何やら爽快な気持ちになった。少し贅沢にリフレッシュできるランチを楽しめる店。

 

11:30~15:00(L.O.14:00)/18:00~22:30(L.O.21:00)

月、第1第3火曜定休 

 

 

本格スパゲティとライブ「SMOKIN FISH」

高円寺の南側ガード下を中の方向へ歩いた先にあるイタリアンとアートと音楽の店。夜の徘徊で見つけた今年できた新しい店だ。

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薄暗く落ち着きのある店内。革の椅子、木のテーブル。高円寺らしくない洒落た雰囲気。

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一角からはライブが頻繁に行われていることが察せられる。マスターがギターを生演奏してくれたりもするそうな。

 

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ライブのない日にも高出力のスピーカーからジャズや懐かしのロックな音楽が流れる。

 

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店内にそこかしこかけられている油絵も必見。内装の雰囲気、世界観と合って良い感じ。

 

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壁には金箔が貼られていたり、和風な花札モチーフの絵画が飾られていたり、和洋の混ざった好みの装飾。

 

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で、肝心の料理なのだが、かなり美味い。

ボロネーゼ1680円と高円寺相場よりも高いが、納得させられる味。もっとシンプルなペペロンチーノは880円、アラカルトは480円から。予算は2500〜3000円ほどか。そこらへんの安いイタ飯屋よりも贅沢したい時に良いかもしれない。グラスワインも美味しかった。

 

パスタ以外の煮込み料理もとても期待できそうだ。ここにはまた来るだろう。

 

SMOKINという店名だけあって全面喫煙可だそうなので嫌煙家は留意。

 

Dinner 18:00〜22:00 Bar22:00〜26:00

無くなるのが惜しくてたまらない戦後昭和の歴史遺産、高円寺の民生食堂「天平」

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創業昭和26年。2012年の他の方のブログを見ると暖簾は左から右に食堂と大きく書かれた紺色染め抜きの暖簾がかかっている。こちらは右から左に書かれており、しかも白地に黒。敢えて古い暖簾を掛けているのだろうか。

 

ガラス戸を開けて中を見るまでの心理的抵抗感は高い。まだ営業しているのか、もう廃業しているのか判然としない外観だったし、店頭の食品サンプルは黒ずんでいて怖い。衛生的な食事が出されるのか不安にすら思った。どなたかのブログでまだ営業していること、案外と中はこざっぱりとしていることを知って興味を惹かれた。

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戦前は昭和16年から始まった「外食券食堂」というものがあり、米殻通帳というものを役所に提出して役所に発行してもらう「外食券」がなければ市井の人は「外食券食堂」で食べられなかったそうな。

戦後の混乱期を乗り超え、米の供給量が増えると昭和26年には外食券制度が廃止となり、都指定の「民生食堂」が生まれたのだという。

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開業して67年。新潟から上京したという甥の現店主が継いで、50年。残念ながら今年度中、あるいは2019年頭には閉めてしまうのだという。主人は「後継ぎもいないしさ」と寂しそうに零した。店内に飾られる七五三の晴姿の写真は娘さんのものだろうか。

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まだ小さい頃の娘さんがおさんどんの手伝いをして店内の客の間を行き来する往時を勝手に想像してその頃に来たかったな、と勝手に思い描く。

 

 

何をキッカケで継ごうと思ったのだろう。

どんな想いで50年間続けてきたのだろう。

主人にとって民生食堂とは何なのだろう。

どんな時が一番嬉しかったのだろう。

私の歳の頃はどんな感じだったのだろう。

メニューはどう選んで決めたのだろう。

店を閉じた後は何をしたいのだろう。

一生をかけて切り盛りしてきた店を閉じる覚悟を決めた主人に聞きたいことが山ほどある。

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甲子園の開会式がテレビに映される盛夏の昼下がり。汗をかいて水滴が水溜りになるラガービールの瓶。エアコンも最大出力で回っているからそれなりに涼しいはずなのだが、ビールがキンキンに冷やされすぎているのだと思う。

 

昼から酒を飲んでいるタンクトップ姿の親父が数人いそうなものだが客は他にいなかった。近所から通う常連も姿を消してしまったのだろうか。

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惹かれたのが金網の入った引き違いのガラス戸。鍵はネジ式。創業時からのものだろうか。木枠も飴色に変わっているが反りも狂いも少なそうなしっかりとした作り。

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壮観な眺めだ。色褪せた品書きが統一感を醸す。

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鯖味噌定食。白米御飯が食べ進む少し濃い目の味付けだった。骨も気にしないほどに柔らかく煮付けられている。美味しかった。

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オムライスに冷トマト。

 

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新聞にも取り上げられたという自慢のオムライスはかなりの量なのだが息子達が簡単に平らげた。

 

アジフライも人気らしい。肉じゃがやきんぴら、単品のトンカツなど気になるメニューはまだ他にもある。

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名はキティ。齢20の老御婦人。幼児2人のうるさい客にも動じず、静かにじっと見つめる。

 

蝋燭の長さはあと僅かしかない。もう消えるのがわかっている。ああ、消える、消える。フッと消えた後にくる静けさと寂しさ。それをこれから常連客は見届けていくことになるのだろう。

 

そして数年もすれば道路拡張工事が始まりこの建物も取り壊されることが既に決定している。建物が無くなればそこにあった店の記憶は思い出す触媒を失ってしまう。郷土資料館の写真のような現実感に乏しい資料になってしまうのだろうか。

 

勘定を済ませるとオムライス、美味しかったかい、と柔らかい声で息子達に尋ねる。息子二人と写真を撮ってもらった。無くなってしまうのが惜しくてたまらない。しかしそれも拡張工事で建物が潰されてしまうからにはどうにもならない。

 

作陶に通う日にはこれからは毎回、ここで食べようかと思う。そして閉店廃業する月には、最後の贅沢に鰻重を頼みたい。鰻重4000円也。誰かがここで鰻を食べたというブログが全く見つからんのだよな。冷凍しておくのだろうか。

 

 

懐かしさと寂寥感と温かみを感じる陶器を作りたいな。

 

 

斑猫のような蝦蛄貝のような美麗青緑の染め鶏頭

高円寺で夜だけ開かれる看板のない二階のバー。

 

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シンプルだけど見たことのない酒がずらり。しかもチャージ無し。とどめに高円寺価格。他の街ならば一杯1000円はするであろう店の雰囲気と落ち着き、酒の味。それが700円で飲めるイメージか。

 

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気泡の全く含まれない透明な氷の塊が入ると空間が歪んだように見える。それをさらに灯りにかざすと幻想的。アクアヴィタエ、生命の水と呼んだ先人の気持ちがわかるような気がする。

 

 

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バーボン美味い。旨い。まったりとろける柔らかさに樽の香り。眺めていても芸術的な琥珀色。

 

 

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カウンター席がたった5席ほどの静かな静かなバー。薄利多売センベロの街、高円寺に似つかわしくないオシャレで落ち着いて静かに飲めるバー。値段の安さという一番客が有難い要素だけ高円寺式だなんて、店として大丈夫か。

 

 

そんな看板の無いバーで開かれる月に一度の夜の花屋。

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たまたまめぐり逢えた夜にこの染められた鶏頭を一本買った。

 

 

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明るい陽射しの下で見ると、ビロードのようで昆虫で言うならば斑猫や玉蟲の甲皮のような構造色のように煌めく。青緑色は染めた色だけれども、この光沢質は人工的に付与できるものではない。鶏頭がもともと備えていた肌質。それを引き出したこの染色は素晴らしい発想だと思う。

 

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このヒダヒダは東南アジアの珊瑚礁の海で見たシャコ貝のようでもある。


窓際に逆さに吊るしている。うまくドライフラワーになってくれるだろうか。

 

映画演劇演奏好きが集うサロン、シアターカフェ「プロセニアム」

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パル商店街の中ほどに、存在を知っていないと気づかないような地下のカフェがある。「プロセニアム」とは劇場の舞台と客席を区切る枠を指す建築用語らしい。

 

内装も世界観が統一されて作り込まれている。スチームパンク風なのだろうか。

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常時、映画が上映されており、他に客がいなければ自分の好みの映画を写してもくれる。1950年代、60年代のクラシックな映画が中心でイングリッド・バーグマンなどかつてのスターを眺めることができる。音は出ない。

 

そのほかにも

  • ミニシアター、朗読会、アコースティックライブなどの貸切レンタル
  • 演劇公演やオーディション情報の受発信
  • 演劇、映画等の映像上映
  • チラシや衣装の撮影会
  • 防音カーテンを閉じて500円/hrの個室貸利用

 

映画、演劇、演奏など表現を志したり趣味とする人達が集う社交場を目指しているのだろうか。小さな劇場や映像制作に携わる人達が多い土地柄、一つのサロンとして育って欲しい。

 

 

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コーヒーはホットのみ。豆を選ぶことはできない。メレンゲのデザートが美味しかった。

 

 

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毎月28日には、三遊亭楽八さんと三遊亭豊満さんによる落語が催されている様子。

映画の上映会、人狼というゲームイベントなどあれこれ開催されている。

こまめに面白そうなイベントがないかチェックしたい。

 

薄暗くはあるが、WiFi完備、コンセントも備えた仕事もできるカフェでもある。R座読書館が使えない時に第二候補として覚えておきたい。

 

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火曜定休

11:00〜23:00

 

噛むほどに麺が美味い極太漬け麺の武蔵野うどん「とこ井」

 

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私が高円寺三大饂飩に勝手に数えている、武蔵野うどん「とこ井」。

 

店内はカウンター一列八席のみ。しかし子供客にも優しい。

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厨房内の大きな釜で茹で上げるのは歯応えの塊のようなコシの強い茶色い麺。機械を使わずに手打ちされているそうな。冷水で締めた麺を熱々の肉汁に漬けて食べる。

 

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ああ、これが食べたいと思った時に代替する饂飩屋がない。茄子のお浸しや、きんぴらなど副菜も出汁が効いていて嬉しい。

 

麺.....使用する小麦は【地粉】【あやひかり】【ふすま】をブレンド 
かえし.....弓削田醤油 牡煮干し 
だし.....宗田鰹、鰹、鯖、真昆布、煮干し
豚肉.....銘柄豚 甘みのある癖のない豚肉

 

修行先の店名も明らかにする誠実さ。

 

夜は21時までと案外、閉店時間が早くて悲しい思いをすることが度々、ある。