なんだか、このまま中国観光を全く楽しめずに帰るのも癪なので、北京の旧貨市場とやらに小一時間、寄って行った。二回乗換えても二元。王府井から潘家園まで30分弱と地下鉄は安いし速い。
そこは広大な骨董品街で戸のある店よりも一坪ほどの広さの出店や、床に商品を並べた蚤の市のような店が遥かに多い。
印鑑の石、翡翠や貴石、書画掛軸、陶磁器、石像、家具。
目新しいのは、殻付きの胡桃を売っている店。胡桃は対で売られており、客は片手の掌の上で器用に対の胡桃を反時計回りに廻しながら感触を確かめている。これは健康グッズなのではないか。何を基準に善し悪しを見定めているのか不思議だ。
案外、外国人は見かけず、中国人が多い。
古い雑器でも買えたらと陶磁器エリアを物色して回ったのだが、景徳鎮や三彩、龍なんぞが細かく描かれたごつい染付けが殆ど。掌に収まる高さ15cmの花瓶や腕の値段を聞くと平気で500元などと言ってくる。試しに半値をふっかけても話にならないので値打ちのわからん値切りをする輩は他所に行ってくれと言わんばかりの対応。100元札を何枚も数えている人を見るに、外国人観光客相手の王府井とは違うようだ。それなりに良いものを売っている様子。しかし、状態のあまりに美麗な器の底に乾隆製年だの大明製年だの書かれていると胡散臭さを感じてしまう。自分は目利きなど出来ない事が改めて分かったので気にいるものも無いので退散した。
結局、買ったのは少数民族の手による刺繍を施したタペストリーというか、布切れというか。生活に要るかと問われると答えに窮する、嫁さんと一緒だとまず買えないだろう品。
少数民族の衣裳に帽子を被った40歳ぐらいの女性が営む店で、女性の目は亜麻色。漢民族とは違う。電卓をお互いに突き付け合うこと5、6回。途中、何度も朋友と言っているのは聞き取れた。こちらの英語は恐らく伝わっていない。最終的には金額に折り合いがつき、満面の笑顔でバイバイと見送られた。それが仮にぼったくられたほくそ笑みの笑顔だったとしても、和やかなやり取りと笑顔で満足している。
足を伸ばして良かった。