この三連休、中央線で三鷹から2駅の武蔵小金井にある「東京たてもの園」で夜のライトアップイベントが催されている。昼は隣接小金井公園のアスレチックやトランポリンで子供達を遊ばせ、そのまま夕方からこちらへ移動した。
もう、「幻想的」の一言に尽きる。大正、昭和の名建築が建ち並び、それが灯りに照らされて浮かび上がる。素晴らしい。
レトロ居酒屋や古びた風情の懐古趣味的な飲食店が都心には増えてきたが、細部の質がそもそも段違い。かつては銅板葺きの屋根はとても高価で、現代でも銅価格は高い。それが経年劣化を経て緑青化しているのは緑のアンティーク塗装で再現できるシロモノではない。
ガランドウのままにせず、店舗は可能な限り往時を再現されている。
飲み屋であったり、醤油屋であったり。ヤマヤマ醤油なんてのがあったのか。
こちらは筆や墨を扱う店。
傘やのライトアップも美しい。
商店街の奥中央に鎮座するのは唐破風造りの立派な銭湯「子宝湯」。
折り上げ格子天井の格式高い脱衣場。
壁画には白砂青松に霊峰富士。唐破風の仏閣建築様式に大名華族の邸宅の内装に用いられる格式格子天井を、日々の汚れを落とす風呂に適用する洒脱が好きだ。どれだけ、日本人は風呂が好きなんだろう。
三井財閥の邸宅の一つも移築されている。
まだ今よりも生活様式が2世代ほど古い頃の贅を尽くした豪邸なのだろうね。
未だに私の欲しいものリストに載り続けているのが、こんな大正レトロな吊り下げ三灯照明。私のリビングはこの邸宅のダイニングほどの広さしかないが、こんな照明がどこかに欲しい。
これはやりすぎ。そもそも、元からこの空間にこのシャンデリアが付いていたのだろうか。
一住宅の厨房としては大規模。数名のお抱えシェフが腕をふるったのだろう。十名以上を招いての晩餐に対応するにはこのぐらい必要なのだろう。
細部に目を向けると、引き戸の取っ手には七宝がはまっていたりと見ていて飽きない。
邸宅内の板戸が悉く美術館の収蔵品級。
さらに時代を遡り、移築古民家を覗く。囲炉裏には火が入っていた。茅葺屋根を維持するには時折、火を入れて屋根を乾燥させ燻して防虫する。
紅葉にはあと少し。真っ赤になったらこの眺めも格別かと。
竃にも火が入る。
もし私が独身だったら、カメラをお供に半日ほど、ねちっこく細部を観察してじっくり、ゆっくり、お気に入りの意匠を撮って回りたかった。昼も素晴らしいのだが、時折催される夜のライトアップイベントは格別。
夕食にはかつて信濃町にあった1910年築のデ・ラランデ邸の中にあるカフェが雰囲気が良い。
イベント期間中はフルートの生演奏もあり、なかなか豪華な食事になった。