映画「レオン」と殺し屋が愛した植木鉢

深夜、映画「レオン」を観た。

繰り返し観たいお気に入りの映画を50本探したいと思いながら映画をあれこれ観ているが、既に50選に入っている映画の一つ。

 

ここ最近に観た映画がどれもイマイチだった。繰り返し観たい映画を探しながらもお気に入りを何度も楽しむ暇もなく人生が終わってしまっては意味がないと思ったこともあり、レオンを再生した。

 

相変わらず素晴らしい映画だ。ゲーリー・オールドマンのキレキレな悪役、瑞々しく鮮烈なデビューを飾ったナタリー・ポートマン、そして寡黙で不器用で根は純朴な殺し屋を演じたジャン・レノ。名優を活かし切った作品だと思う。

 

展開を知っていて次はこうなる、もうすぐあのシーンが来るとわかっても楽しめる映画。静止画を印刷して飾りたくなるような美しく鑑賞に堪えるシーンが散らばる。かっこよいのだよ。それでいてストーリー展開もテンポが良くて映像美に監督が酔いしれた独りよがり映画にはなっていない。こういう作品を見るとCGの進歩は要らないとさえ思わされる。

 

今回、初めて気づいたことがある。殺し屋が大事にしている植木鉢があるのだが、植わっているのはアグラオネマ・カーティシーという熱帯植物なのだよな。それを露地に植えると雪の降るニューヨークでは確実に凍死してしまう。来年の春は迎えられないのだよ。

以前、この作品を観た頃はまだそこまで植物に関心がなかったのかもしれない。知識が増えたことで素晴らしいものをそのままに楽しめなくなるならば年を取ること、知識を得ることはつまらないものだ。

 

月100ドルの小遣いでマチルダを追い払うトニーの薄情さに、レオンは利用されて使い捨てられたことを気付かされる。マチルダはレオンの願いを代わりに叶えるべく地に根が張るよう願って植木鉢から地面に植え替えるが、形見の植物も冬を超えられずに枯れて消え、1年もしたら誰もがその植物のことも忘れてしまうことだろう。

無知と無関心により消えていく風の前の塵のような存在。何も残らず、忘れられていくその無常観も意図されているのかもしれない。植物の品種への知識不足からくるミスではなく、これもプロットのうちだとしたら益々深い映画。

レオン 完全版 (字幕版)

レオン 完全版 (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video