高円寺の桜の銘木といえば多くの人が思い浮かべるのがこの「廃墟桜」ではないだろうか。誰が名付けたのか知らないが、「廃墟桜」と聞けばああ、あの大衆中華料理屋「七面鳥」の斜め向かいのあの桜ね、と高円寺在住歴が長い人ならわかる人も多いと思われる。
道路を挟んで眺めるとこんな感じ。みどり薬局の上の階のワンルームマンションが素晴らしいことになっている。窓を開けたら一面が桜色。
樹齢100年近いと思われる桜の大木。ただこのサイズの桜というだけならば公園や川沿いにちらほらとみかける。この桜を多くの人が特別に感じるのはその株元に建つ崩れかけの廃墟。
私が高円寺に引っ越してからの5年間でも確実に崩落の進む廃屋民家。
散り際の美しい桜と崩れていく家屋が何やら暗喩めいたものを見る人に感じさせる。人の一生の短さと桜木の寿命の長さのコントラスト。朽ちていくだけの物体と老いて益々盛んな樹木。
青空の下の廃墟桜も良いが、暗闇に照らされる廃墟桜も捨てがたい。
この桜を伐採してしまうと後ろの古民家は支えを失って崩れてしまうように思う。この見事な桜を切りたくないから再建築しないなどという篤志家がいたりするのだろうか。
いつまでこの廃墟と桜の見事な光景を楽しめるのか、あと何回春を迎えられるのか。そう遠くない将来に消えてしまう予感を感じながらみんなが愛でている「廃墟桜」。
記録の為にと思って写真を撮るのだが、その大きさと歩道の狭さゆえにこれぞという構図を未だみつけられない桜でもある。高円寺の写真家にプロの写真を撮って欲しい。写真家20人に撮ってもらうような企画を誰か作ってくれないものか。蜷川実花さんならばどう撮るだろうか。