新鮮で懐かしい「西武園ゆうえんち」にあれこれ思う。

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かねてから興味のあった西武園ゆうえんちに子供達が行きたいと言うので休みをとって行ってみた。まだ世の中の親は夏休みを取るには早いだろう、かつ猛暑日の合間を縫えば比較的空いてるのではないかと思った。
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レトロをテーマにして再生されている。飲食店やお店が集まった屋根のついた夕日が丘商店街は江戸東京建物園を模倣したような造り。
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商店街の突き当たりが銭湯というのも似ている。あちらは子宝湯。こちらは朝日湯。夕日が丘の朝日湯だ。
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正直なところを言えばハリボテ感はあってテーマパークのそれだ。地方の取り壊される古い建物を移築保存する受け皿になってくれたら最高だけれども商業的な算盤勘定的には難しいのだろうな。
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繁忙期や土日は1時間以上待つこともザラだという喫茶ビクトリアに開園一番で入店し早い昼食を済ませてしまうことに。
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レトロな喫茶店の制服を着たお姉さんが給仕してくれる。
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さすが、この時代にあって映えを意識した色とりどりのクリームソーダ。色のついたサイダーにアイスクリームとさくらんぼを乗せるだけなのだから客の満足度も高く利益も良さそうな良い商品だ。
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カツサンドは1200円。遊園地価格なので気にしない。
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西武園ゆうえんち内ではこの園という専用通貨を使う。1園=12円というのがよく考えられていて単位が少なくて昔の気分が味わえる一方、1園=10円としていないことで適度に金銭感覚が狂う。30園=360円のものが300円に錯覚してしまう。そして子供達の算数クイズに良い題材。40園のこれは何円?110園は?と12の段の掛算の練習にもなる。

感心したのが紙幣の通し番号が全て紙幣毎に異なっており、発行日かぎり有効とされていること。どれだけ印刷しておくのだろうか。運用の仕組みを知りたい。
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西武園ゆうえんちのリニューアル予算は100億円。乗り物はほとんどそのままで新たに加えられたのはゴジラザライド、ウルトラマンライドなどの夕陽館ぐらいのもの。メリーゴーランドや観覧車、バイキング、オクトパスなど古めかしいアトラクションが天然レトロな乗り物として活かされている。

メリーゴーランドに蛙の乗り物なんて初めて見た。全国の蛙マニア必見の品だ。
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地上80mまで円盤が上がるアトラクションは新規に作っては醸し出せない本物レトロ。中にエアコンも付いていて快適だった。
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実は全くもって広くない敷地を一望できる。堤西武セゾン財閥の夢の跡。

 

八百屋やらの店主の漫談が流されるなど世界観に沿った盛り上がる工夫が最大限になされている。
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土産物もなかなかの値段だが、それなりにデザインも工夫されていて貰えるならば嬉しいものも。西武園ゆうえんちの世界観をまだ行ったことのない人に伝える宣伝を兼ねている抜け目なさを感じる。
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西武園ゆうえんちには映えるパフェやレトロ喫茶がありますよ、と声高に主張している。
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USJをV字回復させ、西武園ゆうえんちの再生を手がけた森岡氏のモットーは需要を正確に読み、それ以上に投資をしないこと。需要以上に投資したりコスト構造を組むから赤字になる。シンプルだが重要なことだ。f:id:mangokyoto:20230802010327j:image

おそらく西武園ゆうえんちの需要はシビアに低く見積もられている。アトラクションもレトロに開き直っていて数は多くないし迫力に乏しい。しかし30年以上稼働している安定したアトラクションが多い。そこに〇〇ライドというデジタルに中身を更新しやすい最先端ライドを象徴的に据えて古いだけの陳腐さを感じないようにしている。Perception is everything.

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リニューアルオープン後の繁忙期はゴジラザライドが3時間待ちだったり、レストランも1時間半待ちだったりとキャパが全く足らないようにも思えるしそれを見るともっとキャパシティーを増やせば良いのにと待つのにくたびれた客は思うのだろう。しかし何年もして人気が落ち着いて来た後のメンテナンスや人件費なども現実的な水準を見込んでコンパクトに作っている。20年長期プランとしてプロジェクトフィナンシャルとかNPVとか作ってしっかり評価しているのだろうな。そもそも予算100億円という縛りがある。

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思索に耽りながら見て回るのも楽しい。
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陳腐化しやすい設備に巨額投資をせずに、商店街でのキャストによる「祭」などに力を入れている。それにしても八百屋の兄ちゃんたちの掛け合いは面白かった。10年後には役者として名を挙げていて欲しい。
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演劇やダンスなどで生計を立てる人たちの受皿になっている感。
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もう仕込まれたバイトなんかではなく、プロのエンターテイナーのそれ。
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懐かしい東京ブギウギを大音量で流し、客を踊りに巻き込んで熱量を生み出している。適度な狭さを逆手にとってディズニーランドのような大規模パレードとは対極のハイコストパフォーマンスな仕掛け。
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単に座って眺めるだけのパレードよりも、見ていて楽しかった。
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ハリウッド作品に限定せずにUSJのテーマから一見ブレるがマリオやら日本のコンテンツを次々と導入したように、西武園ゆうえんちは開き直った和レトロなテーマパーク。インバウンドも見越せば日本らしいコンテンツで売っていく指向性に好感が持てる。

日光江戸村も再生してくれないかね。リゾートホテルの星野氏、テーマパークの森岡氏。こういう地元や日本的な魅力を引き出すスタイルがもっともっと各分野で出て来て欲しい。

 

楽しかった。随所にいかにお金をかけずに体験価値を上げられるかの工夫があって、そんな視点で回ってみても面白かった。アトラクションにほぼ全て待たずに乗れたことも大きいと思う。買うモノ、食べるモノ、乗るモノにいちいち1時間以上かかるような期待に応えられる内容ではない。リニューアル直後の熱狂が覚めた後の平常運転を基準にすれば納得のいく内容だと思う。

 

東京から1時間。アクセスも思ったほど悪くないのだね。

 

浴衣着せて外国からの友人のもてなしに連れて来ても良いかもな。