陶蟲夏草鉢「ノコギリクワガタ」と「ゴライアス」造作

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「制作の進捗は如何ですか」と聞かれると雲隠れして編集から逃げたい作家の気分になるし、ここは期待に応えるべく納得してもらえる作品を作るしかない。一部の蟲好き、粘菌好き、塊根植物やサボテン愛好家には好きな要素の三重奏のような作品にしよう。単価が高くなろうとも飾られることによって店頭装飾になるような存在感のやつを。ずばり、店主すら「売れなくても良いから店頭を飾り続けて欲しいと思う鉢」を目指す。
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蟲の存在強め。口唇と呼ばれる顎の付け根の口の部分も作り込んだ。触角もディテール多めに作ってある。

とはいえ作り込みすぎても面白くない。5倍、10倍時間をかけて本物に寄せても、だったら3Dスキャンして3Dプリントしたものを型取りした方が早いということになる。自分の手癖、デフォルメの塩梅がなければ私が作る意味がなくなる。表現したいのは如何に本物そっくりかではなく苗床になる蟲と育つ植物が一体となって醸し出す世界なのだから。
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さらに粘菌子実体を付与。太く立派に作ることで縮尺的には蟲が本来は小さいことをイメージしてもらえるようにする。
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頑丈につくる粘菌子実体は脚などの細く壊れやすい部位を接触から保護する役目も担う。

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クワガタの大きく裂けた胸部と腹部の間から植物を一本、
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真ん中に大きく開けた穴からも植物をもう一本植えられるようにする。真ん中にも大きな穴があることで水遣りや植え替えをしやすくしている。
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鉢底穴も直径3cmを確保。
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大きなガード的役割の粘菌子実体だけでなく小さな子実体もクワガタの体躯からも生やした。

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鉢底は設置面より1cm近く高くし、水抜きの切れ込みを三箇所入れている。植物の生育環境への配慮は可能な限りした仕様。


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続けてゴライアスオオハナムグリの鉢も作った。頭部の形状が複雑で難しい。胸部の大きさもカブトムシやクワガタムシとは大きく異なり難しい。

やはり見せ場は広い胸部。白黒模様をしっかりと再現してそれが正面に目立って見えるようにしたい。
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こちらは鉢底に三本の脚をつけて通気性を確保する。
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こちらはシンプルに真ん中に一つの大きな穴。分岐するような柱状サボテンを植えたい。


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ビニール袋の中でゆっくりと乾かしていく。1月末までには完成させたい。それにしても重たい。サボテンを植えた場合の安定性も考慮して少し肉厚に重心が下がるように作っている。焼成費が高そうだ。

 

まだ無事に完成するかすらわからないのにどうしたら破損せずに郵送できるか悩み始めている。作業時間は7時間。鉢部分の轆轤造形、飾りで2時間。造形最終チェック、素焼き、鑢掛け、釉薬掛け、本焼き、完成品のバリ取り、鑢掛け、梱包とまだまだ先は長い。