千年一酒造 千代の縁

淡路でふとみかけた造り酒屋に入ってしまった。淡路に二軒しか残らない酒蔵のひとつ、「千年一」。


蔵の中では数人が酒を飲みながら紙箱作りをしていた。のんびりとした雰囲気。おやじさんが蔵の案内をしてくださった。


製造現場は非常に素朴で、隙間風は吹くし、室内を陰圧に気圧管理しているわけでもないし、空調温度管理もしていないし、木のパレットや箱など有機物もそこら中にある。しかも中に土足のまま案内して頂いた。FDAなどの海外の食品衛生法は満たせない環境だが、それで千年一の酒に品質問題があるわけではないだろう。海外の人がここの美味い酒を飲みたくても輸入できない輸入障壁になってしまうのか。勿体無い。


米は兵庫から取り寄せたものを使うという。日本酒適合米は背丈が高く、潮風の吹きつける淡路には向かないからだそうだ。


杜氏さんも兵庫からくるそうで11月から4月までの半年の間に一年分の酒を作り、あとは寝て暮らすと言っていた。蔵の人は、貯蔵された日本酒を注文に応じて瓶詰めしながら販売して過ごす。


一升瓶は他社のものも含め洗浄滅菌してリサイクルしているそうだ。6本同時に充填できる半手動充填機。注文に応じて詰めているのでPull Productionだと言える。


一通り案内してくれたあと、二階で試飲させて頂いた。6本ほど並べてあったのだが、「私は大吟醸が苦手で。。。」なんて話をしていると、これも是非試してみてほしいと大吟醸を持ってきた。舐める。旨い。京都の竹茂楼などの料亭にも卸している酒だそうだ。


基本的には辛めの純米吟醸酒を愛飲している。大吟醸はあの芳香の強さが苦手で二日酔いの頭痛の予感がしてしまう。そのつもりだったのに、試飲してクラっとくる旨さに720mlで5000円もする「千代の縁」を買ってしまった。自分の好みと拘りなど全く当てにならんな。単に自分が無知だった。蘊蓄ではなく舌で味わう旨さこそ正義。


さあ、今月は苦しくなる。まあ、似たような伏見でも買えそうな値段の酒をわざわざ淡路で買っても仕方が無い。味で選ぶしかない。家に帰ってコソコソチビチビと杯で飲むつもりだ。


ちなみに後で気づいたのだが「千代の縁」は醸造アルコールが入っている本醸造大吟醸酒。今まで醸造アルコールは絶対悪だと思っていた。調べると、酒を薄める為に使われていた昭和の昔と違い、現在ではすっきりとさせ、香りや旨味を引き出す為にあえて醸造アルコールを使うことも多いのだそうだ。上等な酒に入れる醸造アルコールとは大抵は単に柱焼酎であるらしい。なるほど。偏見を持っていた。しかし材料に「醸造アルコール」と書かれているのは印象は悪い。どうせなら「焼酎0.3%」などと明記すれば用途も成分も誤解が無くなる。試飲して買う客など少ないし、表記内容で悪く解釈されてしまっては損だ。酒造メーカーは表記を改めてみては如何か。