夢見る貧乏な芸人、音楽家、画家、役者とともにある大衆中華の名店「七面鳥」


こんな店が近くに欲しかった。子供らが小さいうちは家族で通い、時には子守を任された父が息子を連れて行き、やがては腹を空かせた息子が学生のうちから一人で通いだす。そんな客の親子の成長を店側も代替わりしながら見守ってくれる。


何十回と目の前を通り掛かって素通りしていた店。何せ分厚い曇りガラスの向こう側がどうなっているのか想像し難い。失礼な話しだが店構えはお世辞にも綺麗とも立派とも言えない。乱暴に言えば入り難い。子連れで入るような店には見えない。


大きくコの字型の白木のカウンター。牛丼屋などに見られる席配置の先駆けかもしれない。カウンターの脇には4人掛けのテーブルが4卓。店の外からは想像できなかったほど、店内は広い。当分、乳幼児連れで使わせてもらうのはテーブルだろう。


11時半開店なのだが、5分ほど早く着いてしまい、まだ暖簾も掛かっていなかったが店に入れてくれた。70代になろうかというおばあちゃんか愛想よく対応してくれた。息子が、「お腹すいたのです」「早く食べたいなあ」などと可愛げのあることを言うもんだから、おばあちゃんも厨房のじい様に「お腹すいてて早く食べたいそうだから大至急ね」と声を投げる。焼飯とワンタン麺を頼んだ。

焼飯が美味い。580円。高級店で1180円で出されても納得できる味。適度にパラパラ、適度にしっとり。濃すぎることもなく、外食に期待する味の濃さもある。そして何より、満足のいく量。高円寺らしく、内装そっちのけで味と量で勝負している店だ。



15分もすると店は満席となった。作業現場から来たであろうツナギを着た年配やスーツ姿の若者など働く人に広く愛されている様子。まあ、女性は見なかったが。しかし私らのような子連れにも優しく、ヤクルトをストロー付きでサービスで振舞ってくれた。取り皿も子供用スプーンもサッと出してくれる。


厨房にいる若い男性は息子さんらしい。跡継ぎも盤石だ。この隠れた庶民の味方である名店が永く続いていくと判り、嬉しい。


大満足のうちに店を出ると、おばあちゃんが追っかけてきて頂きもののクリスマスクッキーを二つくれた。「うちにはもう子供がおらんから」なんて言いながら息子達を気遣い、可愛がってくれた。大きなお世話だが、跡継ぎにもやがては子供ができて欲しい。子供に何かをプレゼントするような関係の客と店との付き合いができたら良いものだ。


店と客とが同じ地域の住民として付き合う関係。そんな店があるのも高円寺の魅力の一つではないだろうか。


後日来店した際には酢豚とオムライスを頂いた。どれも美味いがやはり焼飯は鉄板の旨さ。

20151227
20151231